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寒い

寒い。

半地下、コンクリート、日差しゼロ。

足先は痛いぐらいで、手先は適時エスプレッソマシンで暖を取っているのです。

便利だな、エスプレッソマシンは。

お客さんは、お店に入ってくると「暖かい」と、言い。

お店にいる僕は「寒い」と、言い。

と、なるのです。

いや、?

ではなく、単純に暖房代をケチっているだけで。

テイクアウトのみなので、お客さんがいる時間はたかだか数分。

数分しかいないのなら、きっとうちは暖かいのでしょう。

アウターを脱ぎだす人もいるぐらいだし。

だから、暖房を入れるまでもないのです。

僕一人の為に暖房を使うのはもったいないのです。

ただ、この店の何が恐ろしいって、底冷えで。

コンクリート打ちっぱなしの威力たるや、容赦なし。

長期滞在には不向き。

断熱材は必須なのでした。

なので、最近は一日中コーヒーを飲んでいて。

エスプレッソドリンクを作る時は、常に2ショット抽出します。

なので、シングルショットのオーダーだった場合、1ショットは捨てる事になるのです。

それを捨てずにマグに入れ、お湯を注ぎ、アメリカーノを作って暖を取る。

無駄がない。

エシカルでサステナブルな取り組み、これが私のSDGs。

・・・

なんて良い仕事なんだろうか。

コーヒー屋はこれだからやめられない。

ただ、うちの常連さんはダブルで頼む人が多く。

なかなかアメリカーノに辿り着けない事もしばしばで。

いや、自分の為にエスプレッソおとせばいいじゃないか。と思うでしょ?

そうはいかないのが、僕で。

暖房すら入れないんだから。

だから、「もうそろそろアメリカーノを飲みたいぞ」という時に、お客さんが来ると胸が高鳴るのです。

どっちかな、ダブルかな、シングルかな。と。

どんな楽しみ方しとんねん。

と、自分でも思うけど、寒いからさ。

お客さんが少ない時期だし。

お店を長く続けるには、いかに楽しみを見つけるかが大切なのです。

その為の我慢なのです。

店主というものは、8年もやってると変な事をしだす生き物なのです。

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