ChatGPTと文芸翻訳
ChatGPTの翻訳の精度に驚いて、さっそく試したくなった。
この子はこの文章を一体どうするのだろう。
”I was born with the gift of rain, an ancient soothsayer in an even more ancient temple once told me.”
これは、私が翻訳を試みている”The Gift of Rain(2007) ”の冒頭の一文。
この文章、きれいに翻訳するのは不可能という問題が含まれていて、どうやっても上手く訳せない。これでもしまともな解決策が出てきたらどうしよう、と覚悟を固めた。
以下は、私とChatGPTの会話
I was born with the gift of rain, an ancient soothsayer in an even more ancient temple once told me を日本語にして
「私は雨の贈り物を持ったまま生まれてきた」と、ある古代の占い師が、それ以上に古い寺院で私に語ってくれました。
(そう、ancientの訳語を揃えるのは難しいし、even moreを日本語では上手く処理できない)
古代の占い師ではなく、年老いた占い師です
申し訳ありません。「古代の占い師」の部分を「年老いた占い師」に修正しますと、「私には雨の贈り物を持ったまま生まれてきた」と、ある年老いた占い師が私に語ってくれました。
even more ancient はどうなりましたか?
申し訳ありません。「even more ancient」を訳し忘れてしまいました。「even more ancient」は「それ以上に古い」という意味で、以下のように追加訳できます。
「私には雨の贈り物を持ったまま生まれてきた」と、さらに古い寺院にいた年老いた占い師が私に語ってくれました。
(↑めちゃくちゃ訥々としてた笑。そう、場所を先に出そうとすると、「さらに」の比較対象が後に行ってしまう)
さらに古いは、何より古いのですか?
「さらに古い」が「何より古い」ということを意味するわけではありません。ここでの「より」は比較の意味で、「それ以上に古い」という意味です。つまり、古代の占い師がいた寺院よりも更に古い寺院にいた占い師がその言葉を伝えた、ということになります。
占い師は二人いるのですね?
はい、原文の「an ancient soothsayer」には、「1人の古代の占い師」という意味が含まれています。そして、その占い師が言った言葉が「even more ancient temple」という別の、それ以上に古い寺院にいる占い師によって伝えられたということになります。つまり、二人の占い師が登場することになります。
何だか、こちらが間違ってるのかと思えてくる笑
でも、やっぱりすごい。
返ってくる言葉が、内容はめちゃくちゃでも、本当に整然としている。
きっと私の質問力も足りていないし、文脈とか色々なことを吹き込んだら、そのうちまともな翻訳を始めるかもしれない。
それでも、と思う。
物語を翻訳するときの頭の中って、とても非連続的で曖昧だ。頼るソースが説明不能なほど多岐にわたっている。こんなことが取って代わられるなんてことは……未来にはやっぱりあるんだろうか?
でも使い道はある。一つの表現を言い換えたいとき。これは日→英の方だけど、ちょっと感動してしまった。
旅を二十種類の英語で表して
Travel
Journey
Voyage
Excursion
Trip
Expedition
Tour
Safari
Pilgrimage
Trek
Hike
Cruise
Backpacking
Camping
Road trip
Sightseeing
Exploration
Adventure
Odyssey
Migration
Odysseyなんてオシャレな表現、聞いたこともなかった。
でも確かにあるのだ、「長期の冒険旅行, 波瀾万丈の放浪の旅; 知的彷徨, 精神的漂泊」という意味が。
(ちなみに、十種類までは即答だったけれど、二十種類にするとかなり考え込んでいた)
ChatGPTには文芸翻訳が可能ですか?
はい、文芸翻訳も可能です。GPT-3.5の訓練データには、様々なジャンルやテーマの文章が含まれています。そのため、小説、詩、エッセイなどの文芸作品も翻訳することができます。ただし、翻訳には文芸的な表現や文化的背景を理解する必要があるため、自然な翻訳を行うためには、より高度な言語処理技術と文化的な知識が必要です。
ChatGPTが人間と変わらない文芸翻訳をするには、あと何年かかりますか?
ChatGPTのような自然言語処理技術は、年々進歩していますが、現時点では人間と完全に同等の文芸翻訳をすることはまだ困難です。特に、文化的背景やニュアンスを理解して自然な翻訳をするためには、人間のような知識と経験が必要です。
今後数年で、より高度な自然言語処理技術の開発が進んで、人間と変わらないレベルの文芸翻訳が可能になるかもしれません。ただし、自然な翻訳をするためには、自然言語処理技術だけでなく、多様な文化的背景や経験を持った人間の手による翻訳や編集が必要な場合もあります。
あなたは誰なの?という気持ちになる。
なんだか友達みたい。
多分、翻訳の目的によるのだろう。物語の内容がある程度わかって楽しめればそれでいい、というのなら、きっとAIの翻訳で十分な日がすぐ来るのだと思う。
でも文芸の本当の目的は……それを求める読者が、今後もい続けるかどうかということだけれど。
おまえの命は雨にことほがれている。昔、一人の年老いた易者が、己よりもさらに年経た古寺の一角で、私に告げたことがあった。
これは、私が三年かかって捻りだした訳文。
なぜそんなに時間がかかったのかは、ちょっと説明が難しい。
それでも全然納得できていないけれど、やっぱり、物語を全部読みきらないことには訳せない。
一緒に読んでみようか、
もっと良いアイデアを教えてよ、と言いたくなる。
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