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貴女は「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」で今すぐベニチオ・デル・トロ様に殺されなさい


* 画像は公式サイトより引用


(前回)


ようこそいらっしゃいました。わたくしは日々大量のテキストを執筆していますが誰にも読ませるつもりはありません。ですが、わたくしはつい先程、「あれって『L.A.コンフィデンシャル』で使用済みのネタじゃんwww」などと得意げに吹聴していたファッション腐女子に苛烈な制裁を加えてきたばかりですので、その勢いで今回は特別に貴女に紹介して差し上げることにしました。

最初に断言しておきましょう。この作品を鑑賞しない限り、貴女は金輪際メキシコについて語ることは許されないと思いなさい。その作品とは、言うまでもなく「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」(以下「ソルジャーズ・デイ」です。



日本の配給会社が、決まって中学生でも分かる英単語を使用して意味もなく作品のタイトルを変更し、あるいは意味もなく中学生でも分かる英単語を使用した副題をつけたがる現象は病理の域に達しており、映画配給会社自身に病識がない以上は治療の方法もありませんので、こういった病理(わたくしは「北京原人メソッド」と命名しました)についてわたくしがとやかく語ることは敢えて差し控えることとします。本作のメキシコ国境はただ通り過ぎるだけの背景で、ほとんど舞台にすらなっていません。


FPSをプレイせずに映画を紹介出来るわけがないのです


わたくしに教えられるまで知らなかったかもしれませんが、真の女が好む真の映画とFPS(最初の者銃撃ゲーム)との間には密接な関係があります。そのどちらもが、映像と音による感覚刺激で観客をガンガン殴って体験させ、それによって説明抜きでストーリーテリングを行うことに主眼を置いたメディアだからです。そのため、真の映画とFPSとの間には

・ 銃が出る

・ 戦車や戦闘機といったヴィークルが出る

・ 爆発がある

・ 爆発がCGではない

・ メキシコが舞台になることが多い

・ 未来要素や宇宙要素の扱いに注意が必要

・ 映像だけでなく音にもこだわる

・ 日本のデベロッパーはあまり手を出さない

・ 真の女が阿呆共やファッション腐女子をぶちのめす

・ 恋愛要素が邪魔

・ 大抵英語で喋る

・ アニメやマンガといったコンテンツとの相性が悪い

・ DLC商法が大抵外れる

・ 無理に日本語吹き替えにするとダサい

・ おっぱいは重要ではない

・ ゆーちゅーぷにもコンテンツがたくさんある

・ 大手ほどローカライズに手を抜く

……と、数え上げたらきりがないほどの多くの共通点があるのです。このようなわたくしの分析の結果、真の映画の構成要素は、その約八割がFPSであるとの結論が導き出されました。

ですから、真の女が好む真の映画の鑑賞に挑もうとするのであれば、貴女がまず第一に確認しなければならない重要事項は、その作品の路線がリアル路線なのかそれともカジュアル路線なのかということです。


ヘッドショット判定がガバガバです


こう聞いて、軽率にすぐさま作品がカジュアル路線であるなどと貴女が判断したのであれば、貴女はどうしようもない最悪のファッション腐女子の振る舞いに陥っています。わたくしの語る深いFPSの造詣に触れ、貴女自身の振る舞いを今すぐ見つめ直しなさい。

ヘッドショット判定が緩いゲームほどキルタイムが短いお祭りゲームであるなどというのは、CoDシリーズが未来に行きすぎて軟弱化したりガーディアンが死んでもすぐに生き返るようになったりしてからの、ごくごく近年になってからのトレンドにすぎません。

現代でこそ、FPSはしばしば阿呆共とファッション腐女子がネット上でイキり合いを行う電子動物園の如き扱いを受けることもありますが、ネットが今ほど腐敗していなかったいにしえの時代、たとえばレインボーシックスの最初期のシリーズ(当時のデベロッパーはUBIではなく、UBIによる買収前の、トム・クランシーが自ら設立したレッドストームエンターテイメントというデベロッパーでした)では、ガバガバなヘッドショット判定が、敵に対する当たり判定だけでなく、的テロリストがプレイヤー操作キャラに向かって放った銃弾にも平等に適用されるという恐るべきゲームシステムが採用されていました。

このようなガバガバなヘッドショット判定がどのような効果をもたらすでしょうか……当時としては異例のシミュレーター寄りの銃器の再現とも相まって、プレイヤーであろうと敵テロリストであろうと、誰かの銃が火を吹けば誰かが必ず、前触れもなく一瞬でヘッドショットされ死ぬという極限の緊張感がゲームプレイ体験を満たしていたのです。特殊部隊の隊員がテロリストを倒して生き残り、人質を救出するためには、とにかく一瞬たりともテロリストに遅れをとってはならない……先にテロリストが発砲すれば、即ち、死……ランダム配置される敵テロリストが立てこもる建造物の見取り図をにらみながら突入計画を練り、そして画癖キュート……アルファ・ゴー……現代では望むべくもない緊張感が当時のFPSにはあったのです。

そして貴女はこのことについて今一度、よく考えてみなさい……ガバガバのヘッドショット判定がもし映画にも適用されるとすれば……そのスクリーンの上では何が起こるのかを……

本作「ソルジャーズ・デイ」では、登場人物全員に等しくこの法則が適用されるのです。たった一発の銃弾で、人は意味もなく死ぬ……それは、わたくしたちが生きているこの世界のむき出しの現実です。そのむき出しの現実の不条理が、ストーリーの都合などという生易しいもので誤魔化されることなく、登場人物達に立ちはだかるのです。


前作のことなど気にせずASAPで突入なさい


前にもお話したかもしれませんが、前作は主人公エミリー・ブラントが右往左往するばかりで完全なファッション腐女子の振る舞いに終始し、自らのアクションで決着をつけるということが全然ないため、今作「ソルジャーズ・デイ」ではめでたくエミリー・ブラントはリストラされた結果、前作とはストーリーのつながりはありません。前作のチェックなど後回しにして、貴女は今すぐ劇場にブリーチングチャージなさい。

因みに、エミリー・ブラントが今作に出ない代わりに出演した映画というのがクワイエットなんとかという映画で、実生活でも夫であるやつと夫婦役で共演するという最高にダサい振る舞いに及んでおり、案の定、映画の出来もホラーで完璧に観客を怖がらせる実力がない者が笑いを逃げ道にしたような代物でした。もっとも、ヒロインの妊娠出産が観客の失笑を買う映画というのも、ある意味前代未聞の達成なのかもしれませんが……要するに、エミリー・ブラントに対する憐れみは一切不要だということです。

その結果、本作には、ヘッドショットされる可能性がちらつくだけで観客が恐怖に凍り付く登場人物のみが残りました。


ベニチオ・デル・トロ様

ベニチオ・デル・トロ様です。トロ様のヘッドショットで貴女は確実に殺されることでしょう。覚悟なさい。


サノス

アゴのでかさに頼って無理を押し通せばなんとかなると思い込んでいる傲慢なCIA野郎です。ですが、分不相応にもトロ様と友誼を持つことから、この者も調子に乗ってばかりではいられなくなり、決断を迫られる……


イサベル

登場して数秒後にファッション腐女子をぶちのめし、返す刀で阿呆を血祭りに上げるなどして真の女の素養を見せつけはするものの、結局のところ、まだ銃の扱いもままならぬティーンエイジャーでしかありません。ですからトロ様はメキシコの本能に突き動かされて、この者を庇護します。その出会いと別れはこの者に何をもたらすのか……それとも……


そのほか、この作品には背伸びしてシカリオのまねごとをするイキったガキなどが登場します。ですが最も重要なのは、そういったガキであろうと誰であろうと、ヘッドショット判定は平等にガバガバであるということです。銃のもたらすむき出しの不条理には誰も抗うことは出来ない……このコンセプトを突き詰めた映画として、本作「ソルジャーズ・デイ」が全編に湛える緊張感と恐怖はメキシコの過酷な現実の一面を見事に体現した名作であると、わたくしは評価します。

ですから貴女も、ベニチオ・デル・トロ様に殺されることを覚悟の上で、挑みなさい……ゆめ忘れぬことです……この作品を鑑賞しない限り、貴女は金輪際メキシコについて語ることは許されない……