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愛から生まれるおまじない

成人してから「元気だといいな」と願うことが増えた。
それは家族、友達、恩師、そして好きなアイドル____所謂『推し』に向けた願い事。

私は四六時中なにかを考え、口は開かずとも独り言を呟き続けている。音楽を聴いていても歌詞から妄想が始まってしまうし、寝る直前には老後どうやって楽しく生きるか計画を立ててしまう。脳みその中を空っぽにした日が一瞬でもない人生。

好きなアイドルに「元気だといいな」と願うのは職場のエレベーターに乗るときが多い。

ある人はほっぺがもちもちしていてかわいい人。元気だといいな、とここ数年毎日願う人だ。彼はSNS更新の頻度が高くなく、プライベートな話をすることも少ない。でも表舞台に立つときにはいつも笑顔でポジティブな言葉ばかり話してくれる。元気でいてくれるだろうと安心感を抱かせてくれる逞しさをもった彼に、わざわざ毎日願いたくなる。

あるグループのメンバーたちにも願う。彼らは元事務所のパワハラ・セクハラ問題で今もなお芸能活動を思うように行えていない。私は自分の目の前で起きている問題は絶対に解決できるように行動を起こしたいと思う。彼らの問題をSNS上でしか確認できず、自分の力でどうにもできない状況はとても耐えがたく、願うことしかできない。

彼らに願う「元気だといいな」は色んな気持ちをひとまとめにしたもの。

元気だといいな。
美味しいごはんを食べてるといいな。
ちゃんと眠れてるといいな。
やりたいことができているといいな。
笑顔になるのは心から楽しいと思う時だといいな。
悲しい気持ちになる時間が少ないといいな。
泣きたい時は我慢してないといいな。
苦しい時は誰かに相談できてるといいな。
頼れる場所がたくさんあるといいな。
自分に自信を持ってくれているといいな。
自分自身を大切にしてくれているといいな。
幸せだといいな。

なんか重い言葉が脳内で泳ぐので、その中で一番シンプルでさっぱりとした感じのする「元気だといいな」を採用している。

別に神聖な感じで祈っているわけではない。神様に「どうか…」とお願いしているわけではない。ただエレベーターの階ボタンを押したときにふと彼らを思い出す。扉を閉ざしてから開くまでの十数秒で願う。出勤したり退勤したり、コップを持ったり資料を持ったり、口端が上がったりため息ついたり、色んな状況でエレベーターに乗り込むけれど階ボタンを押した瞬間は好きな人たちの顔が思い浮かぶ。無機質な箱の中で移動する時間は自分の人生から少し切り離されたところにあって、特に大きな夢も無く死ぬまでただ生きるために働く人生の、息抜きの時間でもあるのかもしれない。

「元気だといいな」
それは愛から生まれるおまじない。
でもそんなに重く受け止めないでほしいし、本人たちに届かなくていいんだけど願わせてほしい。(自分の人生なので当たり前だけれども)自分のことで隙間なく埋められていく人生を歩むのは、少し息苦しい。だからアイドルを好きなんだと思う。アイドルが見せてくれる生き様、自分が歩むものとは違う人生を覗きたい。彼らが頑張っているからと言って「私も一生懸命にならなきゃ!」なんていう考えにはならないけれど、色んな考え方や人生の歩み方の一部を覗かせてもらって生きやすくなっているところはある。そして彼らに願う時間は私にとってホットアイマスクをつけて寝転んでいる時間と同じ感覚かもな、と書いてる中で整理がついた。

いつまであなたたちが表舞台で輝き続けてくれるかわからないし、私の気持ちに変化があるかもしれないし、未来のことは誰にも分からないんだけど「今」の私は心から願っています。
今日も明日もずっと、元気でいてね。

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