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24/2/15 冬が過ぎ去ってゆく

家人は強くて、わたしに出来ないことが出来る。
ずっとそう思っているけど本当は、彼もわたしと変わらないのかもしれない。わたしは、家人が一人の時に呟く言葉を知らないのだ。
もろく、傷つきやすく、怯えているのかもしれない。同じような弱い二人がこの関係を終わらせないように、何年も一人で耐え続けていて、互いにそのことを分かっていないのかもしれない。

五年前の日記をずっと読み返している。
弱みや情け無さをあえて晒すようなことを、これまでしてこなかった。それを当たり前だと思っていたのに、どうも世間では違うらしい。
日記を公開することで大事な人が傷つくかも、と思う。でも、日記を非公開のままに書き綴ることは、わたしを少しずつ窮地に追いやってゆく行為なのかもしれない。
自分を見せる行為に、そこはかとない恐怖を感じる。ステージの上でもそうだ。何百回とライブをしてきたけど、人の目にうつることを、いつもどこか怯えている。

春のように暖かい日。セーター一枚で仕事へ行く。
行き交う人の服装も軽やかだ。冬が過ぎ去ってゆく。電車に乗る前、コンビニの広告で美味しそうなサンドイッチの写真を見てしまい、家人と「サンドイッチが食べたいね」と言いながら駅中の店をうろうろする。サンドイッチを売ってるお店はどこにもなくて、結局、ちょっと良いスーパーで食パンとチェダーチーズとコロッケを買って、外のベンチに二人で座り、それぞれ好きな食べ方でパンを頬張る。
もぐもぐしてる家人と、陽の下で同じものを食べている。永遠に続くものなんてない、と感じながら、人生がすでに満たされているような気がした。

昨夜、仕事から戻ると「チョコは?」と言わたことを思い出し(付き合ってから一度もそんなこと言われた覚えがない)、四ツ谷駅のフランス菓子屋で、バレンタイン限定っぽいショコラカヌレを買う。