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片桐仁の日本全国ご当地粘土道 第三回

長野県『縄文のビーナス仮面』

『縄文のビーナス仮面』
法量:縦×横幅×奥行=320 ×190 ×100
材料:エポキシパテ、スカルピー、ハーティ粘土、ネオジウム磁石、プラモデルパーツ

縄文のビーナス仮面A

※3D、合体GIFはこちらから

今回は長野県の尖石縄文考古館にある、『縄文のビーナス』と『仮面の女神』をモチーフにしました。
 同じ博物館に国宝土偶が2体あるのはここだけですので、合体したら面白いんじゃないかと思いました。でも同じ地域というだけで、縄文中期に作られた『縄文のビーナス』と、後期に作られた『仮面の女神』には1000年近くの開きがあるため、デザインが全く異なります。とりあえず中をくり抜くつもりで、外観の土偶を作りました。『縄文のビーナス』の胸から腰にかけての美しいラインや、ヘルメットみたいな頭部の量感や文様、『仮面の女神』の前後左右非対称な文様の再現や、三角形の仮面とのバランスを取るのが、難しくも楽しかったです。あと『仮面の女神』文様部分に縄文の跡があったので、縄を擦り付けました。

 土偶完成後、案の定困りました。「合体って、どこを?どうやって?」と…。あまりに細かく切り刻んで、元が分からなくなるのもあまりよろしくない…。仮面の土偶の胴体は、びっしり文様が入っているので、カットするのは難しい…。
 そんな時、ふと気付きました。土偶って、手が無かったり極端に小さいものが多いのですが、「この形何かに似てるな〜?」と。そうです!「*水中用MS(モビルスーツ)の水中巡航形態に似てるんだ!」と! ていうか『仮面の女神』って、手を収納してる*MSゴッグそのものじゃありませんか!?「そもそも水中用MSは、土偶をモチーフに作られたのではないかしら?」とすら想像してしまいました…。  
 そこで、『縄文のビーナス』(片桐仁作品)の胴体を斜めにカット。下半身を腕にコンバートするために、*ズゴックのプラモの腕パーツを内蔵、『仮面の女神』(片桐仁作品)の足もくり抜いてズゴックの足と、ズゴックの太ももと股関節を内臓。謎の後頭部と、仮面を取り外し、細くなった頭部に、ビーナスの上半身を合体! 外した仮面をお腹に合体!謎の後頭部パーツを頭頂部に合体! 気がつけば、『太陽の塔ロボ』みたいな、超古代文明の作りしオーパーツみたいな感じになりました。接合には、プラモの関節と、ネオジウム磁石を使ってます。
*モビルスーツ:アニメ「機動戦士ガンダム」に登場する、架空の兵器の分類のひとつ。
*MSゴッグ:水陸両用モビルスーツ。
*ズゴック:アニメ「機動戦士ガンダム」に登場するロボット。

 これが大変で、本体の土偶の制作は一週間ぐらいで出来たのに、この内部のくりぬきと関節内臓作業に、二週間もかかってしまいました。妙にしっくりきたので、ズゴックの爪はそのまま流用…。どう利用したらいいのか迷っていた、謎の後頭部を鎧兜の鍬形みたいに設定できたのが気に入ってます。もう一段階進化しても面白かったかな〜?

 色はシンプルに土っぽい色に貝殻の粉を混ぜたものを指で塗りました。実物の縄文のビーナスには、雲母がすり込まれてキラキラしているので、パールカラーをすり込みました。あと文様が光ったらオーパーツっぽくて面白いと思ったので、蓄光塗料で塗ったら、ベースの黒い塗料が溶けてきて大変でした。

 それにしても土偶の造形は奥深いですね〜。縄文土器もそうですが、西洋とも東洋とも違う独自の細かいルールがあって、適当になぞろうとすると、途端に違和感が出ちゃう。なんとしても「再現したい!」と思わせる魔力があると思います。

※写真付きの記事はこちら

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縄文のビーナス仮面 片桐仁A

片桐 仁
1973年11月27日生まれ / 埼玉県出身 / 多摩美術大学卒業
ドラマを中心に舞台、映画、ラジオなどで活躍中。近年の主な出演作は「99.9%-刑事専門弁護士-」(TBS)、「あなたの番です」(NTV)、「NHK 連続テレビ小説 エール」(NHK)などがある。
俳優業の傍ら粘土創作活動も行い、2016年から2018年までは「片桐仁不条理アート粘土作品展 ギリ展」にて全国ツアーを開催。2019年は初の海外個展を台湾で開催している。

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長野県茅野市について

本州の真ん中に位置する長野県。茅野市はその中央部付近に位置しています。
日本百名山の一つ八ヶ岳の西側の裾野に広がり、高い山々に囲まれた諏訪盆地の一角にあって縄文時代から人々が暮らし栄えてきたとされ縄文遺跡が数多く存在しています。また、蓼科、白樺湖、車山といった高原リゾートも数多くあり、豊かな自然と古くからの歴史を楽しめる人気の場所です。その茅野市にある尖石縄文考古館に国宝である「縄文のビーナス」と「仮面の土偶」の2体の土偶が保管されています。

国宝・縄文のビーナス

※写真はこちらから

出土場所:棚畑遺跡(縄文時代中期の集落遺跡)
出土日:昭和61年(1986年)9月8日
国宝指定日:平成7年(1995年)6月15日

縄文のビーナスは、茅野市で最大規模の集落遺跡「棚畑遺跡」から発掘されました。この遺跡は縄文時代前期から江戸時代までの生活跡が見つかっているそうです。特に今から約4000年から5000年前頃の縄文時代中期ごろの膨大な量の土器、土偶などが出土しています。その一つがこの「縄文のビーナス」です。日本で見つかった土偶のほとんどは壊れた(意味があり壊したのではないかとも言われています。)状態で出土されていますが、「縄文のビーナス」は、寝かせるように安置され完全体で出土されました。

「縄文のビーナス」と名付けられた理由はこの姿を見ると納得です。切れ長のつり上がった目、尖った鼻に針でさしたような小さな穴、小さなおちょぼ口などは、この地域の縄文時代中期の土偶に特有の顔だそうです。

国宝・仮面の女神

※写真はこちらから

出土場所:中ッ原遺跡
出土日:平成12年(2000年)8月23日
国宝指定日:平成26年(2014年)8月21日

「仮面の女神」と呼ばれるこの土偶は、中ッ原遺跡から出土した全身がほぼ完存する大形土偶です。高さがなんと34cm、重さは2.7kgもあります。今から約4000年前の縄文時代後期前半に作られたとされています。こちらも遺跡のほぼ中央にある、お墓と考えられる場所で横たわるように埋められた状態で出土したそうです。右足が壊れて胴体から外れていたが、これは調査の結果、人為的に取り外したと言われています。

逆三角形の仮面をつけたような姿から「仮面の土偶」と呼ばれているこの土偶は、土器と同じように粘土紐を積み上げて作っているため、中が空洞になっています。大形の土偶によく見られる形態で、こうした土偶を中空土偶と呼んでいます。

参考資料:茅野市尖石縄文考古館ホームページ

※写真付き記事はこちらから

あとがき

こんなに個性的な土偶がはるか昔に作られたなんてとてもロマンがあると思いませんか?現在、五体の土偶が国宝となっています。片桐仁さんは、縄文土偶や土器好きで有名知られており、他三体の国宝をモチーフにした作品をすでに発表しています。いづれこちらの連載で紹介していきますので楽しみにお待ちください。

著:THAT IS GOOD 編集部 藤田

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