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絶景 × Kuniyuki Takahashi | 宮城蔵王

1月26日 宮城蔵王の樹氷の中、KUNIYUKIさんの撮影を行ってきました。厳冬期の蔵王、晴天率は2〜3割という状況の中、近年では稀なほど立派という樹氷林で、しかも一瞬の晴れ間をついて撮影する事ができました。

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この撮影の準備は、1月はじめの山形蔵王のロケハンから始まります。

山形には、2017年まで12回開催され、東北最大級の無料フェスと言われる「龍岩祭」のステージ周りを担ってきたコネクテックという仲間の会社があります。
昨年末に「樹氷で撮りたい」というアイデアが出て、「それいいじゃん」と言ってもらったものの、大変だよ?、寒いよ?、晴れないよ?…と言われ続け、そんなに過酷なら現地をみておかないとと言うことで事前のロケハンをおこないました。

1月5日さっそく新幹線で蔵王を目指します。山形駅からコネクテックのヤスくんが運転する車に乗せてもらい、山形蔵王温泉スキー場に向かいます。まずはコネクテックが経営する「音茶屋」に寄りました。音茶屋はとてもおしゃれなカフェで、普段は定期的にライブイベントなども開かれています。

音茶屋

蔵王温泉 音茶屋

そこで、寒い中で機材が動くのかどうか、機材と演奏者のためにどの様に暖を取るかなど話し合いました。コネクテックを紹介してくれたWaonのシンヤくんが「明日現場でPCが動くか試してみよう」と言い出し、そのPCはシンヤくんのを使うか、僕のを使うかで揉めたりしつつ、周辺に風除けを作ってはどうか?ブースに風防を付け足す方法はないか?どの様な暖房器具なら使えそうか?などなど、、深夜近くまで打ち合わせました。

ところが、翌日はなんと雲ひとつない晴天です。

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蔵王ロープウェイで山頂駅に向かうと徐々に景色は代わり、足元から山頂までずっと、見たことも無い美しい樹氷の森が広がっています。もこもこと育った樹氷が、青空に煌めき、この世のものとは思えないような景観です。山頂駅から振り向くと、山形盆地の遠く向こうに朝日連峰の山々の連なりが輝いています。
正直なところ、樹氷は知っていたものの、自分の目で見るのは初めてでした。多分この撮影がなかったら、見る機会はもっとずっと先になっていたかも知れません。しかし初めてみる樹氷林の美しさは圧倒的で、、ぜひ樹氷の中で撮影したい…と改めて思いは強くなりました。

しかし、翌日まで残ったシンヤくんは、その日の午後、目の前も見えないような吹雪を体験したそうです。果たして無事に撮影できるのか?

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樹氷はどうやってできる?簡単にまとめてみました。

そもそも樹氷には「Rime」という日本全国はもちろん海外でもみられる気象用語としてのものと、「Snow Monster、Ice Monster」として蔵王や八甲田などでみられる愛称として使用される2種類があるそうです。
つまりSnow Monsterなどと言われる蔵王の樹氷は「アオモリトドマツが着氷と降雪による雪に覆われて巨大化した塊」の愛称として一般化したもので、蔵王ではアオモリトドマツに着氷し巨大化したものだけを樹氷と言い、それ以外の木々にできても正式には樹氷とは呼ばず、その希少性をもって観光資源としています。

ところで皆さんは、ペットボトルの水が注いだ瞬間にシャーベット状になる様な映像をみたことは無いでしょうか?
これは水が「過冷却」されているために起こる現象です。過冷却とは水が0度を下回っても凍らずに存在している状態のことで、急激な刺激を受けるとその瞬間に氷に変化する、その様子を捉えた映像です。

冬の寒い時期に発生した霧の水滴(霧粒)は、そのような過冷却の状態で空中を漂っている場合があります。また、その霧の粒は小さければ小さいほど、より低い気温の中でも過冷却状態を保つそうです。それが高地の特殊な条件の中でアオモリトドマツなどの木々に一方向からぶつかり、その瞬間に結晶化していく…そうして風上に向かって結晶が大きく育ったものが樹氷となります。

特に蔵王は地形的にも樹氷の造形に適しており、シベリアから渡ってくる冬の風が日本海海上で湿り気をおび、朝日連峰で上昇し雪を降らせた後、適度な水分量を過冷却で含んだ雲が、山形盆地を経て蔵王連峰で再び上昇しこれを超えていくときに、蔵王連峰の熊野岳や地蔵山の山頂付近に自制するアオモリトドマツに一方向からぶつかり、世界でも珍しい立派な樹氷を形成していくのです。

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ロケ地を宮城蔵王に変更

その後、諸々の事情を考慮し、山形蔵王での撮影の予定を宮城蔵王に変更することになりました。宮城蔵王でもコネクテックのアレンジで、すみかわスノーパークさんにご協力頂き、雪上車に乗って山頂付近の樹氷エリアまで行けることになりました。しかし撮影中の寒さ対策が必要なことに変わりはありません。天候を睨みながら撮影日を1月26日に定め、24日の夜から宮城蔵王入りすることが決まりました。毎日変化する気象情報を確認しながらハラハラドキドキして当日を迎え、25日は朝から現地のロケハン…、これがまたなんとドピーカンの晴天です。

45分ほど雪上車に乗り山頂付近を目指し撮影する場所を決定、さらに刈田嶺(かったみね)の山頂まで上り、樹氷と同様に過冷却水の着氷により巨大な雪の塊になった刈田嶺神社やその鳥居、そして峰の向こうの「御釜」と呼ばれる噴火口まで見学することができました。ただし頂上付近は吹きさらしで風が強く、とても長居はできません。翌日の撮影の成功だけ刈田嶺神社に祈願してロケハンに戻りました。そこに、午後の雪上車でKUNIYUKIさんも到着、現地を見て頂き、撮影に向けてインスピレーションを高めてもらうことができました。

このまま天気がもってくれれば…、しかし翌日は下り坂の予報です。とりあえず温泉に入り、本番に向けて英気を養います。
ロケハンに同行してくれたコネクテックのメンバーは、いったん山形へ戻ります。なんと往復2時間以上かけて、翌朝の撮影にまた機材を持ってスタッフとして参加してくれます。

いよいよ撮影当日

早朝に集合しすみかわスノーパークへ…普段より早く8時にゲレンデを出発する雪上車を用意してもらい、スノーモービルの先導を受けながら(ゲレンデ内はスキーやスノーボードを楽しむ人がいるため、またすれ違い困難な狭い箇所もあるため、スノーモービルが先導し注意しながら進みます)樹氷エリアまで機材を満杯に積んで向かいます。
道中はまだ良い天気で、太陽を受けて雪原の表面の結晶がキラキラと光り輝いています。

撮影現場も昨日ほどの晴天では無いものの、逆に幻想的な景色が広がり山形盆地側の山麓は雲海の様な雲に包まれています。あの雲がやってくる前に撮影を完了したい〜。

撮影終了、その時雲が…

なんとか天候にも恵まれ撮影終了。よし片付けるぞと機材をばらし雪上車へ運びます。片付けを初めておよそ5分、振り返ると先ほどまでKUNIYUKIさんが演奏していたブースやその向こうの景色はあっという間に雲に覆われ、あたりは真っ白になってしまいました。

これまでも数々の出会いや奇跡的な偶然によって素敵な作品を収録してきたTHAT IS GOOD、昨年中に収録ずみの沖縄県久高島も(近日公開予定)神がかりな一瞬の晴れ間での撮影でしたが、今回も奇跡の様に天候に恵まれ、無事に収録ができました。

近年では珍しく立派と言われる樹氷と、その樹氷林に覆われた美しい景色、そしてKUNIYUKIさんの素晴らしい演奏をお楽しみ下さい!!

※写真と動画付きの記事はこちらから

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<ACCESS>

山形蔵王への行き方

東京から北へ向かい山形新幹線で約2時間半、山形駅からバスで約40分
または東北新幹線で約1時間40分、仙台駅から高速バスで約90分

空路は山形空港から「おいしい山形観光ライナー(乗合タクシー)」で約60分
仙台空港から「蔵王号(スキーバス)」で約110分※スキーバスのため冬季限定

音茶屋への行き方

住所:山形県山形市蔵王温泉 935-24
市内から蔵王街道を走って蔵王温泉へ向かうと、温泉街の入り口あたりでT字路にぶつかるそのちょうど正面あたり
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Instagram @otochaya

山形蔵王温泉について

山形蔵王温泉は、湯量の豊富な強酸性の硫黄泉。スキー場の足元に広がるためリゾートホテルから温泉旅館まで宿泊施設も様々。
さらに「上湯」「下湯」「川原湯」という共同浴場が楽しめます。上湯は2011年に建て替えられましたが、昔ながらの風情があり、3つの湯の中では一番歴史が古く、江戸時代より共同浴場として利用されてきました。温泉街の街並みもそこかしこから湯煙が上がり非常に情緒があります。

また温泉街のすぐ上にスキー場のロープウェイ山麓駅があり、そこから樹氷高原駅で乗り換え、樹氷源が広がる頂上付近まで一気に上がることができます。非常に広いスキー場で、山頂付近では樹氷のすぐ近くを滑ることができるため大変人気があります。頂上にはレストランやテラスも設られ、スキー客以外の観光客もたくさん訪れており、冬季以外もトレッキングの足として活躍しています。

宮城蔵王への行き方

東京から東北新幹線で約110分、仙台駅から高速バスで約75分
または、同じく東京から150分、白石蔵王駅からタクシー
空路は仙台空港から「宮城蔵王温泉号(バス)」で約1時間
(遠刈田温泉までとなります。すみかわスノーパークはそこから車で30〜40分)

車でしばらく走ると、みやぎ蔵王えぼしリゾートと、宮城蔵王スキー場すみかわスノーパークと2つのゲレンデがあります。今回ご協力頂いたすみかわスノーパークへは車で30〜40分、遠刈田温泉からゲレンデまでの定期バスも出ています。
暖房付きの雪上車「ワイルドモンスター号」で行く樹氷ツアーは圧巻で、片道45分程度雪上車に乗って樹氷原の真っ只中へ運んでもらえます。この雪上車で刈田嶺の山頂直下まで行けば、頂上までは徒歩で30〜40分程度で、ガイドの方をお願いすればそこからスキーやスノーボードで滑ってゲレンデへ戻るツアーも楽しめます。

宮城蔵王温泉について

宮崎蔵王遠刈田温泉は、ナトリウム・カルシウムを多く含む硫酸塩・塩化物泉、中性で肌への刺激の少ない温泉です。こちらにも神の湯、壽の湯という共同浴場があり、神の湯は2006年に新しく建て替えられ、山形蔵王温泉の共同浴場に比べると少し大きな建物になっています。

文:THAT IS GOOD 編集部 中村

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