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家から飛び出す日

フィルムカメラとほぼ日手帳、ボールペン、茨木のり木さんの詩集を持って家から飛び出た。とりあえ湘南の方へ。

出かけた先でもスマホを見ながら、何かおもしろいことはないか探している。そういうときは大抵見つからない。

どこで降りるかは決めずに江ノ電に乗った。10回も駅を見送り、ようやく重い腰をあげて次の長谷駅で降りた。

本当は藤沢駅から大船駅で乗り換えて、鎌倉駅を通って行ったほうが早い。だが江ノ電に揺られながら海沿いの景色を眺めていると、虚無だった気持ちがまた新鮮になった。これでよかったのだ。

長谷をぶらぶら歩く。

チリンチリンと鳴る鈴の音。

なんのお店だろう。飲み物を売っているらしいが看板がなく、何屋さんかわからない。

飲み物が入れてある冷ケースからみて、右奥には店主と思われるおばあちゃんが退屈そうに、椅子に座って机の上で新聞を読んでいた。うまく言えないが趣を感じた。ここは昔、駄菓子屋さんだったんじゃないかと勝手に想像した。

コーヒー屋さんでアフォガートフラペチーノを頼んだ。甘ったるいのが苦手なのに「生クリーム抜きで」と言うのを忘れた。飲んでみると思いのほかコーヒーの味が濃かった。なんだかんだ生クリームがコーヒーの濃さを中和している。おいしい。

持ってきた茨木のり子さんの詩集を読もうと思ったが、BGMが大きくて曲に意識がいってしまう。

16時すぎるとお客さんがわたしだけになった。その時間が心地よかった。17時になるとBGMが止まった。レジのお金を数える音が聞こえる。そろそろ出るかと店をあとにした。

せっかくだから海まで歩いた。

しばらくして、また江ノ電に乗って行きに辿った道を折り返した。

部活帰りの高校生。汗臭い電車。青紫色の海を眺める。きょうもおつかれ。

18時に藤沢駅に着くと、男性がまだ笛を吹き続けていた。おつかれさまですと気持ちを込めて少ないけど500円を投げ銭したら、

「ありがとうございます。飴をあげます。」と、
飴を2つもらった。

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