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作業に対する考え方の例

サンクスサイクルラボでは日々スポーツバイクについてのいろいろな相談を頂きます。
購入相談も多いですが、バイクの各種調整や不具合、メンテナンス方法についての内容もかなり多いです。

その中の一つに「調整方法を教えて欲しい!」という内容も。

このご相談についてお答えする事が、実は非常に難しいのです。
全ての部品が新品状態であれば多少の可能性はあるのですが・・・
ご使用中のバイクはどれをとっても同じ状態の物は無く、それぞれの状態に合わせた微調整を踏まえて作業しなくてはなりません。

例えばメーカーによる違いはもちろん、パーツの組み合わせが違えば作業の内容は変わります。
部品の摩耗状態・メンテナンス状況も作業内容に差を発生させる原因となります。

お電話で作業に対する金額をお伝えできないのもこのためです。

とはいえ、お答えできないと言ってもナカナカご理解いただけない事が多いので、その理由を書き出してみることにしました。
少なくともこのブログを御覧頂いた方ならば、理由をご理解いただけるのではないかなと。

下記に書き出したのは私の作業をする時のおおよその考え方です。
あくまでも私の考え方なので、全く参考にならないかもしれません。
全てを書き出せているわけでもないので、そこはご了承くださいませ。

今回もだいぶ長くなってますので、お時間のある時にでも御覧ください。

部品ごとの取り付けや調整については付属の説明書などをご覧ください。
例えばシマノさんならウェブに詳細な説明書がありますので、そちらをご覧ください。
https://si.shimano.com/#/

※注意※
リンク先のページにも書いてありますが、基本的にディーラー向け(ショップ向け)の情報となります。
このページで得た情報でご自身が作業されてもメーカーは一切責任を負いませんのでご注意ください。

更に※注意※
メーカー付属の説明書を読んでも分からないという方はプロショップへ作業依頼しましょう。
自分でやっちゃダメだ。

よろしいでしょうか?
ではでは。

問題の例
・リア変速の調子が悪い

1段階目(原因を想像する)

1.長期使用や環境による部品の摩耗・劣化
2.外部的要因による部品の異常
3.基本的な調整の不良
4.パーツの互換性の整合性がとれているか
5.組付けが適切か
6.使い方の間違い
7.個人レベルの感覚の違い

お客様からご相談頂いた時点で頭に浮かぶのがこのリストですね。
では次の段階へ。

2段階目(想像した原因の確認)

1.長期使用や環境による部品の摩耗・劣化等
1-1.チェーンの状態
1-2.スプロケットの状態
1-3.シフトケーブルの状態
1-4.リアディレイラーの状態
1-5.ハブ(フリーボディ)の状態
1-6.ディレイラーハンガーの状態
1-7.フレームの状態

2.外部的要因による部品の変形(転倒、輸送・保管方法等)
2-1.ディレイラーハンガーが適正な状態か
2-2.チェーンの変形が無いか
2-3.スプロケットの歯の形状が正常か
2-4.フレームに異常が無いか
2-5.ケーブルアジャストスクリューが折れたり曲がったりしていないか

3.基本的な調整の不良
3-1.トップ側調整ボルトの確認
3-2.ロー側変速ボルトの確認
3-3.Bテンションボルト(エンドアジャストボルト)の確認
3-4.ワイヤーテンションの確認

4.組み合わせてあるパーツの互換性の整合性がとれているか
4-1.同ブランド内の互換性確認
4-2.外部ブランドの互換性確認
4-3.対応ギアサイズ等の整合性の確認

5.組付け方法が適切か
5-1.ディレイラーハンガーがしっかり固定されているか
5-2.ディレイラー取り付けの緩みや不適切な固定がされていないか
5-3.プーリーの組付けが正しいか(回転方向、上下の位置関係)
5-4.チェーンが適切に接続されているか
5-5.ワイヤールーティングが正しいか
5-6.ハブ(フリーボディ)の組み付けが正しいか
5-7.ホイールが正しく装備されているか

6.使い方の間違い
6-1.変速操作の正しい認識の確認
※よくある例としてはロードのフロント変速操作にある「トリム操作」をご存知ない方多いですね。

7.個人レベルの感覚の違い
7-1.感覚のすり合わせ

5、6、7についてはこの段階で問題の原因をほぼ特定できます。
5についてはそのままそれぞれの確認が作業となるので問題解決に繋がることになります。

それ以外の項目についてはさらに深く掘り下げて・・・

3段階目(より詳細な原因の確認と特定)

1.長期使用や環境による部品の摩耗・劣化等
1-1.チェーンの状態
1-1-1.摩耗状態の確認
1-1-2.注油状態の確認
1-1-3.汚れ具合の確認

1-2.スプロケットの状態
1-2-1.摩耗状態の確認
1-2-2.汚れ具合の確認

1-3.シフトケーブルの状態
1-3-1.インナーケーブルが切れかかっていないか
1-3-2.サビによる動作不良がないか
1-3-3.インナーケーブルに折れが無いか
1-3-4.アウターケーブルの長さが適切か確認
1-3-5.アウターエンドキャップが割れていないか
1-3-6.ケーブルの注油状態の確認

1-4.リアディレイラーの状態
1-4-1.プーリーの歯の摩耗
1-4-2.プーリーのベアリングの劣化
1-4-3.パンタグラフのガタの状態
1-4-4.各部スプリングの劣化(ヘタリ)が発生していないか
1-4-5.プーリーケージの動作がスムーズか
1-4-6.プーリーケージの摩耗や変形が無いか

1-5.ハブ(フリーボディ)の状態
1-5-1.ハブシャフトにガタがないか
1-5-2.フリーボディにガタがないか
1-5-3.ベアリングに異常(グリス抜け、抵抗が大きい)がないか
1-5-4.ラチェット構造部分の状態確認

1-6.ディレイラーハンガーの状態
1-6-1.ディレイラー取付けネジ穴に痛みがないか
1-6-2.ディレイラーハンガーに金属疲労による劣化がないか

1-7.フレームの状態
1-7-1.ディレイラーハンガー取付部の形状に変形が無いか
1-7-2.クラックや割れ等の破損が無いか
1-7-3.ホイールとの接触面に段付きや凹み等が無いか

2.外部的要因による部品の変形(転倒、輸送・保管方法等)
2-1.ディレイラーハンガーが適正な状態か
2-1-1.曲がり等が無いか

2-2.チェーンの変形が無いか
2-2-1.コマの捻れ
2-2-2.可動部分がスムーズに稼働するか
2-2-3.プレートのクラックをチェック

2-3.スプロケットの歯の形状が正常か
2-3-1.刃先の変形

2-4.フレームに異常が無いか
2-4-1.歪みや凹みのチェック
2-4-2.クラック等による破断
2-4-3.ディレイラーハンガー取付部の変形

2-5.ケーブルアジャストスクリューが折れたり曲がったりしていないか
2-5-1.ディレイラー側のネジ山の状態を確認
2-5-2.アジャストスクリューのネジ山確認

3.基本的な調整の不良
3-1.トップ側調整ボルトの確認
3-1-1.締めすぎ、緩めすぎの確認

3-2.ロー側変速ボルトの確認
3-2-1.締めすぎ、緩めすぎの確認

3-3.Bテンションボルト(エンドアジャストボルト)の確認
3-3-1.締めすぎ、緩めすぎの確認

3-4.ワイヤーテンションの確認
3-4-1.コンポーネントごとの適切なテンションであるかの確認

4.組み合わせてあるパーツの互換性の整合性がとれているか
4-1.同ブランド内の互換性確認
4-1-1.年式や変速段数の確認

4-2.外部ブランドの互換性確認
4-2-1.外部ブランドのウェブサイト等での互換性確認
4-2-1.年式や変速段数の確認

4-3.対応ギアサイズ等の整合性の確認
4-3-1.フロント変速と合わせて、キャパシティ内に収まっているか
4-3-2.ロー側スプロケットのサイズ確認

長々と書き連ねましたが、だいたいこんなものでしょうか。
私の場合は1段階目はお客様からご相談を伺った時点でリストが頭に浮かびます。
そして車体の確認する時に2段階目、3段階目の確認となります。

今回は例としてリア変速について書き出しましたが、フロント変速でもブレーキでもホイールでもほぼ同じような流れで原因の特定と修正の作業をすることとなります。

しかし、この流れで判断し作業するためには膨大な情報が必要となります。
正しい状態と正しくない状態を判断するには情報を知っていないと対応できませんから当然です。

一般の方と我々ショップの人間との大きな違いは持っている情報量の違いによるものが大きいです。
日常的に自転車と関わっているのですから当然ですね。
この膨大な量の情報を使ってお客様に作業を提供し、作業工賃として対価を頂いております。

とはいえショップスタッフとはいえ誰でもが業界の全てを熟知しているわけではありません。
ヤマモトも業界歴は短くは無いと思いますが、出来ることは限られています。

だからこそショップスタッフは常に勉強を続けることになります。
展示会があれば参加して情報収集。
業界の知り合いと会って情報収集。
取り扱いのないブランドの持ち込みがあれば隅々までチェック&作業で情報収集。
新しいバイクが発売されれば試乗して、メーカーの営業さんから情報収集。
他店で組まれた製品が持ち込まれれば、仕上げを確認して情報収集。
作業が失敗したとしても、原因を辿って情報とする。

etc・・・

いろいろな手段で集めた情報を駆使し、多くのご相談に対応出来るように成長する努力をします。

そして経験とは面白いもので、始めての状況に遭遇しても過去の事例をつなぎ合わせて対応方法を想像出来るようになってくるのです。
さらにその想像を試すことに躊躇いがなくなります。
なにか自分の中で確信が生まれてくるのですね。

だからこそ経験したことのない相談を頂いた時には不安もありますが、その反面ワクワクもしちゃいます!
ヤバいですねw

いかがだったでしょうか。
最初にも書きましたが、これは私の場合です。
いろいろな考え方や方法があるので、これも一つの情報として参考になれば良いのですが。

業界歴20年ちょい ヤマモト