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美談にするなかれ

 高校の頃ちょうどホラーブームで、田舎で娯楽が少ない寮生活とかしてたので怪談話は旬な話題の一つだと思ってたんですが、私自身は特に霊感があるわけでも霊能者になりたいわけでもなかったんですよ。
 というか、実録系のマンガとか読んでると「霊能者さんって大変だなぁ」って気持ちは湧いても憧れの職業にはならなかったというアレ。
 ただ、クラスに1人~2人いる霊感少女から話を聞くのは大好きで、当時からわりと仲良くしてもらってたと思う。
「かむいんは嘘だとか言わないね」
「見えないから嘘だと決めつけるより、そういう風に見える人もいるんだなぁと思ったほうが楽しいじゃん?」
「変わってるって言われない?」
「言われるーw」みたいな感じで。

 学校がわりといわくつきの場所に建ってて幽霊の目撃談には事欠かなかったけど、マンガみたいに悪霊に取り憑かれて暴れる子とか居なかったし。
 むしろ隠れてシンナーやって笑いながら泣きわめいて大暴れして大怪我、救急車で運ばれてく先輩とかのほうがよっぽど怖かったのを覚えている。
 話がそれた。

 霊感ある人からみると「かむいんは絶対あると思うんだけどなぁ…?」という感じらしいのですが、本当に見える人が無理強いしてくることはまずなかったです。変な宗教にハマってる人には「私、クリスチャンですので」の一言が効いたし。
 それでも無理強いしてくるのがたま~~~に居るわけですよ…
 チャットで知り合った子だったんだけど
「かむいんは絶対霊感修行したほうがいいですよ!」
 と言い張るやつが居た。
「修行って何するの? 滝にでも打たれるの?」
「心霊スポットに行って除霊して実践経験を積むんですよ!」
「なんでわざわざそんなところに行くの…」
「修行ですから!」
 …いやそれ、TVの見すぎじゃね?
 私も霊能者が心霊スポットに行って霊視したり除霊したりする番組みるのは好きでしたけどね、ああいうのって素人がやるもんじゃないでしょ? といっても全然伝わらない。

 そんな時、高校の頃からの友人が少し難しい病気で数ヶ月入院することに。暇だと言うので毎週マンガやゲーム持ってお見舞いに通ってたら、そいつがとんでもないこと言い出した
「ほら、ちゃんと修行しないから友だちが病気になるんですよ!」
「このまま修行しないでいると友だちが死んじゃうかもしれませんよ!?」

 流石に堪忍袋の緒が切れた。
「人として言って良い事と悪い事の区別もつかないのか? 心霊スポットで騒いで病気が治るって言うなら、今すぐてめぇが私の友だちの病気治してみせろ!」
「…出来ません…」
「自分ができねぇ事を他人に言うな! あと、人の罪悪感に付け込んで修行しないと友達が死ぬとか、ほんと最低。それで私が自責の念にかられて自殺でもしたらどうする気だ?」
「そこまで考えてませんでした…」
「修行の前に人として言ったらアカンことぐらい考えろ!」

 結局やつとは疎遠になったけど、ああいうことを平気で言えちゃうのってかなり人としてアカンと思うのですよ。私はブチギレましたけどね、これ心が弱ってる人だったら自分を追い詰めちゃうかもしれないでしょ?
 それで取り返しがつかない事になったら絶対責任とか取れないでしょ?

 この話をすると、「その人にとっては必要な学び(気付き)だったのかもしれませんね」と慰めてくれる人がたまにいるんですが、それは私からはわからないことです。
 もちろん間違ったことを言ったとは思ってませんが、疎遠になった以上「あの子の学びのためだった!」とか私が勝手に正当化しちゃいかんと思うのですよ。
 私に怒られた事で人の痛みを知る良い霊能者になったかもしれないし、ならなかったかもしれない。それはあくまであの子の人生なわけです。
 当時の私は「ざっけんなゴ(# ゚Д゚)ルァ!!」としか思ってなかったからね。
 都合の良い美談にするなかれ。

 ちなみに、入院してた友人は手術も無事終わり、退院して結婚していまでも元気に暮らしております。
 本人曰く「高額医療費制度マジ神…!」とのことでした。

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