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音楽が好きじゃないと音楽を続ける事は難しい

誰しもどこかで「趣味を仕事にする」なんて言葉を聞いたことがあると思う。
多くの場合はクリエイティブな職業に対して用いられる事が多く、とりわけ音楽、バンド、芸能人なんて職業が最たる例だろう。

僕は“ミュージシャン”なんて職業は実際は無く、一種の“営業職”だと思っていて、人付き合いが上手な人、人が好きな人が向いていると考えている。(音楽の専門的知識があるうえでの話)
一方で“アーティスト”と言うと人付き合いは苦手で偏屈、俗世とはかけ離れた思想、発想を持つ天才、才能に溢れていて、唯一無二の個性があるなんてイメージを頂いている人が多いのでは無いだろうか?

事務所に入るようなバンドは全く言わないのだが、アマチュアのバンドマンは特にこのようなイメージを頑なに持っているようで、僕が接してきた多くの人達も例に漏れず“俺の曲”、“俺の歌”、“曲が降りてくる”、“曲作りは生みの苦しみ”みたいな事をポーズや建前ではなく本気で言っていた。
夢のある話である。
しかし、実際はアマチュアであっても友達100人出来るかなの世界で、動員数=営業力と言うある種の法則は本人の自覚の有無に関わらずそこに存在していて、大学生であったり、生まれが都内、都内近郊出身者に圧倒的なアドバンテージがあった。(勿論その当人の社交性にもよるが)
夢の無い話だ。

当時からそんな環境に馬鹿馬鹿しさは感じていたが、誰もその本質に目を向けず目先のより界隈で有名なバンドが出演するブッキングであったり、身近なバンドの横の繋がりで褒められる事に目をくらまされて、時代の波に飲みこまれ消えていく様を見ているうちに、自然と一つの答えが浮かんで来た。

「ああ、この人達は別に“音楽”が好きなわけでは無いのだな。」

それ故に、恐らく彼らはバンドを辞めて就職しても、会社で似たような状況が起きているのだと思う。
その証拠に20代後半で上手く行かず「音楽や~めた!」と就職したアマチュアバンドマンが30後半になり仕事も落ち着いて、経済的にも余裕が出来たので颯爽と音楽の世界に戻って来るパターンが往々にしてある。仕事やプライベートで新しい生き方を見つけたのであれば、青春に戻って来る必要は無いはずだ。

なんとなく世間に流されてゆるりと生きて行く事を僕は一切否定はしないが、昨今のSNSを見ていると、本心ではその状況に不満を抱いている人が多いのだなと感じる。

それは「音楽を楽しめる」と言う事自体、本当に音楽が好きな人達の特権であり、技能でもあるからで、至極当然の事なのだ。

消費者の視点で見れば、実は音楽なんてものは特別なものでも何でもなくて、世の中に溢れていて、今や誰でも安価で簡単に手に取る事が出来るコンテンツの1つなのである。

今現在30代後半、40代の人は音楽に溢れていた90年代~00年代までを体験しているので、当時音楽を熱心に聴いていた人は特に要注意だ。
会社の同世代で話が合う人が居ないからと言って、自分は他人とは違い“音楽が好きな人”だと勘違いしてはいけない。
それは貴方の環境に同じ体験を共有出来る人が“たまたま”居ないだけである。

趣味の範囲で楽しむ分には全く問題無い。
しかし、それなら他者を批判したり、仕事でやっているバンドや人の足を引っ張るような事はせず内輪で楽しくやるべきだ。
趣味をTwitterやFacebookで世界に発表、告知する必要は無いし、よく見かけるのだが「これってどこがロック?」「どこが良いの?」「聴いたけど全然良くなかった。〇〇の方が絶対に良い」みたいなビジネスアカウントへの嫉妬ツイート。これって普通に営業妨害では無いだろうか?

気持ちは解るが、そう思うのであれば本物にどんどん投資しよう。
投資すらしないなら黙るべきだ。

僕が今まで見てきたこれ系の人は身内を褒めるだけで、その状況がどうして引き起こされているのかも考えず、世の中が変わる為の投資も努力もしていない事が多い。

つまり、実際はそこまで音楽が好きなわけでは無いのだ。

こんな暗い日本の音楽業界ではあるが、近い将来この状況は変わると僕は思う。
希望的観測では無く、無知や承認欲求やコンプレックスを上手に突いたマーケティングに踊らされる人達の供給はいつか途絶えるし、その集団とは別の次元で人が集う土台が出来つつあるからだ。

今は再結成バンド、リバイバル、それに影響を受けて結成された今のバンドを同時に知り、聴く事が出来る。
そんな中で育っている若い世代は音楽が好きな人か否かの区別は当然のように付いている。
わざわざ嫌いなものを見ないし、わざわざ話が合わない人に説教はしない。
今現在コンプレックス商法の渦の中、ネガティブな発言と拗ねた行動を繰り返している幼稚な人々はインターネットの檻の中に隔離されつつある。

つまり、音楽が好きじゃないと音楽を続ける事は難しい。



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