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「耳を鍛える」感性の限界を超える旅

自粛期間中にジムも空いてなくて、やっと運動が出来る環境になりました。
皆様いかがお過ごしでしょうか?

耳を鍛えるは2種類ある

突然ですが「耳を鍛える」と言う言葉を聞いた事はありますか?
もちろん英会話の教材や宣伝文句ではありません。
僕は中学生の頃ギターを始めたんですが、先生に教わったわけでも先輩の影響で始めたわけでも無く、突然思い立って始めたので、わけも解らぬまま教則本を買いました。
当時の教則本は編集者のエゴが全開で、HR/HMしか課題曲が載っておらず、本当はLUNA SEAや黒夢が弾きたいんだけど、仕方なくDeep Purpleの「Burn」やVan Halen「You Really Got Me」を練習していました。「初心者でも弾けるギター」と言う本だったと思うけどライトハンド奏法を含むあのギターソロが本当に初心者向けなのだろうか…。既に洋楽を聴いていたので知っている曲ではあったんですが、親指で6弦を抑えたり、エディの早弾きのソロは初心者にはハードルが高過ぎて当然の如く挫折しました。

負けず嫌いなので結局練習を重ねて「You Really Got Me」が弾けるようになった僕は、何故かその後もVan Halenからの流れでSteve Vaiなど難しい方向に練習課題が傾き、ここまで来るとTAB譜を見ても「え?こんなところ弾いてる?」みたいな事が発生。本人が聞き取れていないために起きる現象ですね。
しかし、何度も何度も同じ場所を繰り返し再生して聴いているうちに、不思議と運指が見えてくるんです。これが第一の「耳を鍛える」。

我々は"耳"では無く"脳"で音楽を聴いている。

我々は人込みで会話する時に、雑音ではなく相手の話だけを聞き分ける事が無意識で可能です。同じように複数の楽器の演奏から、歌に集中したり、特定の楽器に集中する事で意図して聴きわけが出来る。
これはまさに脳の働きによるもので、厳密にいえば同じ曲でも実は人によって違って聴こえているのかも知れない。
この能力を使って耳コピをするわけですが、「今耳じゃなくて脳で聴いてる!」なんて事を意識している人はまず居ないでしょう。
でも、これがとても重要!

もう一つの「耳を鍛える」は感性を拡張する事

誰しも音楽の好き嫌いはあると思います。
しかし「何が良いかわからない」まで"嫌い"に含めていませんか?
それは多分"嫌い"ではありません。

Sonic Youthを初めて聴いた時に、僕は全く理解が出来ませんでした。
因みに、HR/HMばかりに趣味が偏る事はなく、練習しながらも相変わらず僕のCDの棚は雑多な状態、田舎には情報も洋楽を積極的に視聴させるCD屋さんも無いので片っ端から名前買い、ジャケ買いを繰り返していました。
そんな中、意気揚々と「Dirty」買ってきて僕は漠然と僕の中にあったロックを期待して再生。結果1曲目から挫折…。
当時の僕の感性では理解不可能な音楽でした。
ところが「Sugar Kane」ですらスルーしたのに何故か「Chapel Hill」を異常に気に入って毎日エンドレスで1曲再生。気が付いたら「何これ、良く聴いたら全部最高じゃね?」になり、お気に入りの1枚になったわけです。
当日は自分がしっかり聴いていなかったせいだと思っていたわけですが、これが第二の「耳を鍛える」である事が後に解ります。
良いと思えない時はカルチャーに対する理解が低く戸惑っている状態なのです。慣れたり、理解の取っ掛かりが出来れば受け入れて、その素晴らしさを共有出来るようになります。

順番や点数をすぐに付けたがる現代では感性を拡張させるのは難しい

繰り返し再生した理由は中学生、高校生にとってCD1枚の価格が大きい事です。今ならばサブスクやYoutubeで1回で感性に響かない場合、購入に至る事は99.9%無いでしょう。無理して好きじゃないかも知れない音楽を好きになる必要はなく、選択肢は無限に近いレベルで存在します。
そのため、音楽を理解しようとする時は「知識」に頼りがちです。つまりWikipediaやネットメディア、有名なライターの〇〇さんが紹介しているなど、自分の感性とは全く関係の無い事で無理に判断を下そうとする人が多数派になってしまっています。
感性を広げる必要も無いし、個人が好きでそうしている事なので咎める必要も無いんですが、感性の格差は確実に広がっているし、情報も感性が広い人の方がキャッチし易いのは言うまでもありません。

でが今はどうすれば「耳を鍛える」事が出来るのか?

これだけ情報が溢れ、選択肢も無数に存在する現代で「耳を鍛える」=感性を鍛えるには自分で制限を設ける以外に方法は無いかも知れません。
つまり、買う。
それしかない。
買ってる人と買わない人の差は実は一目瞭然なんです。

買わないと決めている人は全くそれで構わないのですが、なんとなくCDの時代は終わったんでしょ?と言う人は知って欲しい事があります。
CDは普通に今でも売れています。海外でもCDの需要は普通にあります。
以前と比べると大幅に数は落ちていますが、音楽にそこまでの興味を感じなくなった人が増えた結果だとしたら?
また、レコードが流行ってますが、PCを持ってる人とレコードプレイヤーが自宅にある人の数を比較したらPCの方が多いはずですよね。
なのに皆がCDを買わないのは何故でしょう?
それはレコードブームだからでも、サブスクが流行ったからでもなく、それは何を買ったら良いか解らない時は買わなくて良いと言うルールを自分で作っているからです。
新しい世界、新しい自分、新しい未来に興味がある人は給付金をきっかけに自己投資として、とりあえず何か1つ買ってみてはどうでしょうか?
感性を超える旅はとても楽しい。

おすすめ

Choir Boy「Gathering Swans」

Dais RecordsのChoir Boy。他記事でも紹介しているが、2020年激推しの1枚です。Drab Majestyが来日しても完全に無視してたネットメディアもPV稼げると解ると突然手のひらを反して推し始める程の名盤。

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Alexis Blair Penney「Lonely Sea」

2011年の作品。周りからは誰も理解して貰えなかったが、私的2011年ベストシングル。Remixも最高です。

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Skating Polly「The Make It All Show」

米オクラホマのバンド。隠し切れない90sオルタナティブ・ロックの影響に現代的解釈でポスト・パンクが入ったような素晴らしいバンド。

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Control Top「Covert Contracts」

ストレートなガレージロール。3ピースで完成度が高く、ボーカルもかっこ良い。日本では全く紹介されていない。何故なら日本盤が出ないから。知らない人も多いと思うけど超絶おすすめの1枚。

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Maria Minerva「Cabaret Cixous」

エストニア出身でロンドン在住、でもリリースはアメリカの100%SILKから。Vaporwaveなジャケも当時は今ほど浸透していないので伝わり難さが半端無かった。とろけるローファイ・シンセポップ。インディ・ダンスなんて呼ばれ方もしてました。

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Linda Guilala 「Espacio De Tiempo (2009-2019)」

スペインのシューゲイズ・バンドLinda Guilala(リンダ・ギラーラ)のベストアルバム。このMVで出てくるレコードからも幅広い音楽から影響を受けている事が伺える。カラフルなシンセとノイズが真骨頂ではあるけれど、ジャンルに捕らわれず幅広い人に好かれるであろう完成度の高いポップな曲が揃ってます。


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