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「君たちはどう生きるか」考察・思ったこと/ネタバレあり
ついに公開されました「君たちはどう生きるか」観てきたので勝手に書いていこうと思います。
冒頭
空襲警報から始まる冒頭。主人公眞人少年が目覚めてから病院へと走る一連のシーンは宮崎アニメの真骨頂だった。開始1分で観客を引き込ませるような映像であったのが素晴らしかった。
新しいお母さん
疎開先で新しいお母さんと邂逅。亡くなってしまったお母さんを引きずっている中でお母さんにそっくり(妹だから当然とも言えるが)のお母さんとの生活。挙げ句の果てに「赤ちゃんよ」なんて言われたお腹を触らされる眞人少年の心境はお察しである。
別に嫌な感じじゃなくて、ちゃんとお母さんとして向き合おうとはしてくれてるんだけどね…深夜に見てしまった父と母の男と女としてのやり取りとかも積み重なって鬱々としちゃってんのかなぁ….
父
声帯がキムタク。これが中々良い演技してる。めっちゃかっこよかったね。目はガンギマってるが軍需工場を経営しているようで、中々の金持ち。豪快な人ではあるが家族思いの良い人。
石で頭をガンッ
痛そ〜….
喧嘩(リンチ)の後自らの手で傷を作ったシーン。
冒頭からかなり丁寧に疎開後のスローライフを描いていたため、この時点までかなり物静かな雰囲気ではあったが、画的にもストーリー的にも大きな転換点・リフレッシュポイントとなっていたように感じた。
アオサギ
ポスターの謎の鳥の正体が判明。「アオサギ」だそうで…..
女中のおばあちゃん達
五、六人だったかな?女中のおばあちゃん達が。宮崎作品のおばあちゃん表現の例に漏れず鼻と頭が大きい。みんな眞人君に尽くしてくれる優しい人たち。「夏木マリさん出てるのか〜」なんて思ってたら出てませんでした。
キリコ(異世界のすがた)
お婆ちゃん衆のうちの一人。眞人君とともに洋館に入るも後に異世界の若々しいすがたが発見される。すごくカッコいいよね〜
姉御的な、千と千尋でいうリンさん、魔女宅のウルスラ的な存在。
異世界での生き方、生き抜き方を教えてくれる。ジブリ作品のお姉さんキャラは迷える主人公に生き方・助言をしてくれることが多い。
白いアイツ
白くてペリカンに食われてたアイツですよ….名前なんだっけ…….
子供に好かれそうなキャラクター。コミカルな動きが可愛らしく、たくさん居るがため。おつまみ感覚でペリカンに食べられてしまうのも愛おしい。
一方で、生と死の間の世界で特に能力も無く、ただ食べられるだけ、食物連鎖で言えばほぼ最下層の存在である一方、正体は人間の「もと」であることを考えると怖い。
ヒミ
眞人くんの亡くなってしまったお母さんの異世界でのすがた。
なかなか快活な少女であり、ジブリヒロインに新しい挑戦者が現れた模様。
火を操ることができる魔法少女である一方、眞人君が息子であることに気づいており、ヒサコさん探しを手伝ってくれる。
お互いに知らない同士として、惹かれ合うのかと思いきや案外完全に親子愛的な関係に終始したのは少し驚きだった。
眞人君がヒミが焼いたトーストを「美味しい!」と食べる所は屈指の名シーン。例えパンを焼くという単純な料理であっても母の愛は塞ぎ込んだ少年の心を溶かすには十分だったのだろう。
インコ
強者。異世界においては前述の白いあいつとはほぼ対照に強者。異世界では凶暴な存在なようで人を食えるほどの力を持つ。
中々いいキャラしてるよね。人を食う割には表情が読めなくて無機質な感じも少し怖い。ドアの廊下で隊列を組んでいることが影でわかるシーンは結構好き。
インコ将軍
インコを統べる将軍。世襲制の異世界の仕組みを変えてインコの世界にしようと試みる者。
悪役のように見えて中々のコミカル担当。カリスマ性はあるようで中々熱狂的な国民?を集めている模様。
大叔父様
異世界の神様とも言える存在。13個ある積み木を積むことによって世界のバランスを保っている模様。
世継ぎを自分の血筋で選びたいと思う一方、眞人君にはいい返事をもらえなかった。
後継を拒否し、たとえ醜い世界であっても現実世界へ帰ることを選択する場面は本作屈指の名シーン。久石譲の音楽も相まって個人的に一番良いシーンだったのではないかと感じた。
なんか…こう….爽やかだったんだよな…….
勝手な考察
「君たちはどう生きるか」とは一体何だったのか。
主人公眞人少年は作品冒頭から様々な後ろめたい行為、ないし「罪」を負った少年でもあった。
母親を救うことができなかったトラウマ、新しい母を疎ましく思ってしまう自分、自作自演で怪我を演出し、父親が学校へ訴え出ても何とも思わない。
一方で登場人物は皆、それぞれが後ろめたさ・人間的な汚さを持ちながら生きていることも表現されている。
姉の旦那と愛し合い、子を授かる者、自らの妻が戦争によって亡くなっているにもかかわらず戦争の進行を工場が儲かるからと喜ぶ者、タバコを引き換えに弓矢をくすねてこようとする者。
それは異世界でも変わらない。
異世界の住民のために「殺し」という行為を請け負う者、生まれる前のものであってもそれを食べる事でしか生きながらえない者、世界のためにならと、例え汚れていたとしても世界を積み続ける者。
瀕死のペリカンはこうも言っていた
「ここは地獄だ。外へ出ようと羽ばたいても元に戻ってきてしまう」
登場人物達はどちらの「地獄」でもそれぞれの生き方をしている。
ゆえに眞人少年は母の残した本「君たちはどう生きるか」を読んで涙を流す。
「君たちはどう生きるか」には「石段の思い出」という節がある。
「君たちはどう生きるか」に登場する主人公コペル君の母親は若い頃、石段を登る老婆を見かける。声をかけて助けようか考えるもタイミングを失ってしまい、老婆は石段を上り切ってしまう。
ただモヤモヤするエピソードという訳ではない。この経験からコペル君の母は、この話が心に引っかかる度に自分の背中を押してくれるもの、後悔が自分を励ますものになるのだと説くのである。
恐らく眞人君が涙したのはこの辺りでは無いだろうか。
この小説をきっかけに母を助ける事ができなかったトラウマ・後悔を糧にヒサコさんを助ける・連れて帰るという行動を決意させたのだろう。
我々は例え地獄であったとしても、罪を抱え、それを糧に生きてゆくしか無いのである。
裏を返すと、我々は汚れの無い世界で生きることは出来ない。ということでもある。
大叔父に「綺麗な積み木」を積むように迫られた眞人君はそれを拒絶する。それは「綺麗な世界」を生きることは出来ず、生きるということは汚いことも全部飲み込んで、抱えて生きなくてはならないということを他ならぬ眞人君が知ったからなのだろう。
ラストシーン、あっけなく思えるような終わり方をしてしまったようにも感じる。戦争が終了したことが示唆され、弟も誕生した。眞人君は荷造りをし「東京へ戻ることになった」とモノローグが入りエンドロールへ突入する。
後日談には物足りなく、中々スパッと終わってしまった印象にある。
しかし、本当はエンドロールの直前、見えないけれど映画のタイトルが入ると解釈しても良いのでは無いかと思う。
つまり、「眞人君はこうして自分の生きる生き方に気づくことができました。では、君たちはどう生きますか?」という監督からのメッセージなのである。
眞人君は疎開先での生活が終わり、また新たに東京での生活が始まる。では、君たちはどう生きる?という疑問形の映画なのである。
公開前は「説教臭い」という前評判があったが、蓋を開けてみると案外宮崎駿監督にしてはかな〜り優しく、今を生きる我々に「メッセージ」を送る映画であったと思う。
ジブリ考察あるある 作品=監督自体の表現という解釈(小ネタ)
ジブリでありがちな、いわゆる宮崎駿を中心として考える考察
思いつきなので本当に小ネタです
駿=大叔父説
「俺が日本のアニメ(世界)を作り上げて来た….」
「誰か俺の後を継いでくれ…できれば俺の血(流派)がある者で….」
庵野秀明を中心とする子供達「う〜ん….ちょっと…..ね……」
「ま、それはそれでまた新しい世界(アニメ)を作ってもらうのでも良いか…」
「若い人たち、俺たちの時代は終わる」
「君たちはどう生きる?」
的な、ね…..
個人的には安直過ぎてあまり考察としては好きでは無いですが…..
監督の思惑とかを考えるのは面白いですよね。
やはり宮崎駿監督、素晴らしい監督です。
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