“音で芝居をつくる”(*1)-東京グランギニョルの作劇法-
飴屋法水の演劇作品、とくに東京グランギニョル時代の舞台を、「音響」に焦点をあてて検証してみる必要があるのではないか。いつの頃からか、そう考えるようになった。
私がそのような考えを抱くに至った理由は二つある。一つはグランギニョルやその後の飴屋の演劇活動にまつわる資料を収集する過程で、飴屋自身の発言や、当時の舞台を観劇した人々の証言の中に、「音」にまつわる言及が頻出するのに気付いたこと。そして、もう一つは飴屋が80年代に手がけた舞台の模様を録音した音源を聴く機会に恵まれたこと