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旅のしおり

「二ツ目になって時間ができたら徒歩でお伊勢参りがしたいです」

前座の頃から言っていた。
白酒の会の開口一番で言った。
八楽との勉強会での質問コーナーで言った。
シブラクやかわら版のインタビューで言った。
ただ、それを聞いたお客さんの反応は「これは笑わせようとしてるのか? 何だ?」みたいな感じだったと思う。
いや、あれはふざけていたわけじゃなくて、純粋に二ツ目になったらやりたい事を言っていたのだ。

10/18から徒歩でお伊勢参りする。

「なんで?」

と言われたら、その理由は後付け後付けで今は色々あるのだけれど、
最初は、落語以外のことでも楽しんでもらえる『活動が面白い人』になりたかったからだ。

二ツ目昇進が決まると何かと『目標』や『どんな噺家になりたいか』を聞かれる。
で、だいたい皆「新しい噺をたくさん覚えて──」とか「寄席にたくさん出られるように──」とか「自分らしさを──」とか言う。
いや、んなもん落語やっていくなら当たり前だろ、と私は思っていて、
その上で何をするのかが大事なんじゃないだろうか?

私は当たり前のことをやりつつ『活動が面白い人』になるべくお伊勢参りをすることにした。

噺家が『江戸っ子の生涯の夢であるお伊勢参り』を実際に体験してリポートすれば面白そうだなと。

しかし二ツ目になってもうすぐ一年。
その理由も少し変遷する。
今は活動を楽しんでもらう為、というよりかは自分の為にお伊勢参りをしたい。
というのは、最近の私のトレンドが『芸は人なり』。
これまで生きてきた人生が落語に乗っかると思っている。
セリフと人生が重なって、自分の言葉になるのが面白い。
経験に勝るものなし、とはよく言ったものだ。
だから落語には色んな人生経験が必要で、
今はとにかく貴重な体験をしたいと思うようになった。
死ぬ間際まで覚えているような事をたくさんしたい。
志ん生師匠が過酷な経験をして芸が良くなったように、
旅を終えて、少しは芸が良くなればいいなと思っている。


【今回の旅について】

  • 江戸の中心、日本橋の日本国道路元標から伊勢神宮まで約450キロを歩く

  • 一日約30キロ歩き、15〜20日で踏破予定

  • 費用は15万以内を目指す

  • 乗り物に乗らない

  • 野宿はしない

  • 体重が80キロ台を目指す

  • 道中、落語を二、三席覚える

  • 毎日写真を5枚以上撮る

  • noteを可能な限り更新する

  • 『無理せず楽しく』を心掛ける

お伊勢参りするにあたって、旅日記(note)をつけることにした。
今は血気にはやっているので毎日更新をするつもりでいるが、どうなるかわからない。
あとで読み返した時に、この旅日記が誰かのお伊勢参りの旅のしおりになれば。

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