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令和五年二月十八日 第一回黒酒八楽二人会『クロハチ』 於・ばばん場

「上手いと言われて喜んじゃいけない。上手いは褒め言葉じゃない。落語は10年もやれば誰でも上手くなる」

見習いの頃に師匠に言われた。
勿論上手いにこしたことはないのだろうけど、そんなことを思い出す。
なので最近は、一旦技術は置いといて「芸は人なり」というか、落語にどれだけ自分の人生、人柄を反映させられるか、「この人がやるとこうなるよね」みたいなところを大事にしている。
このやり方は正しくないかもしれないが、最近はそう。
言語化が難しい。

◎兵庫船
かつての名人上手に自分が勝てるものは何だろう?
なんてことを考えた時に真っ先に浮かぶのが『関西弁を自然に話せること』。
中には途方もない努力で関西弁が上手い人もいるのだけれど「上手い」と思う時点で自然ではない気がしている。

なわけで大阪に20年、東京に15年住んでいるという人生を活かすためには、上方の人と江戸の人が両方出てくる噺を覚えるのが良いだろう、とまずは【兵庫船】ネタ下ろし。
前座噺を片っ端から覚えていた私が【やかん】を覚えなかったのは兵庫船をやりたかったからだったりする。

講釈部分がつっかえたり出てこなかったりもしたけれど、兵庫船の先生は良い講釈師でもないのでご愛嬌ということにした。
あとは大きなミスもなかったけれど、もう少しのんびりやってもいいかなと思う。

今回出した鮫は普通の鮫、ノコギリザメ(二匹目)、シュモクザメ(三匹目)。
「毎回出す鮫を変えてみてよ」と言われているので、鮫の勉強をしないといけない。
ぶつくさ。

◎千早ふる
人前でやるのは二回目。
前座一年目に覚えた噺で、この『クロハチ』の前身である『あら八勉強会』の第一回でネタ下ろし予定だったが、流行病で三回にわたって中止になってしまい、ネタ下ろし出来ず、そのままやらなくなってしまった。
雪辱を果たす意味で『クロハチ』の第一回でやってみた。

「何か稽古をお願いします」

とザ・柳家の師匠にお願いをして、「じゃあ俺が一番好きな噺を」と教わった【千早ふる】。
一字一句キッチリ覚えて行ったのだけれど、

「良いけど真面目すぎる。落語はもっと遊んでいい」

と遊び方を教えてもらった。
だけど今回は遊びすぎたかな。
少しダラダラした。
でもこの『ふざけ合ってるだけ』みたいな空気感が好き。
私が六十代だったら成立して、その上面白いと思う。たぶん。
でも次はもう少しテンポ良く。


マクラについては「相手に伝わらなくてもいいんだと思って純粋さをつらぬけば、逆にその純粋さは伝わるんだよ」と岡本太郎イズムでやってみたが、それでも少しくらい整理した方が良かったかな。ぶつくさ。

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