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令和五年六月十六日 第五回『稽古風景』於・落語協会二階

第五回もたくさんのご来場ありがとうございます。
今回も初めて私の会に来てくださった方がいらっしゃって嬉しい限り。
なのに開演が遅れてしまい申し訳御座いません。
時間が押して喋れなかった分をここで話したいと思います。

◎親子酒
開場から即開演。
前半、なんだか空気が作れませんでした。
やはり開場時間や前座は、お客さんに聴く態勢を整えていただくために必要なんですね。

今回足したのはじゃんけんをする所だけです。
江戸時代末期にもじゃんけんはあったとのことで(諸説ありますが)おとっつぁんの子供っぽさを出すのに入れました。
まぁ、時代考証なんてどうでも良いんですが、浅はかだと思われないように。

羊羹と羊羹の間に塩辛を挟んでおく仕込みを忘れまして、後半急に塩辛を出してしまいました。
急に開演したから私も心の準備ができてなかったんですかね。
開場時間は演者にとっても必要みたいです。

親子酒の深い味わいなんてのは若いうちからは出せないので、自分の決めたルール内で暴れています。

◎駒長
高座にかけるのは二回目。
終わってから一生懸命話したんですが、ちょっと伝わりづらかったと思うので、
私が感じている駒長の疑問をもう一度。
(先にどこかで駒長の音源を聴いていただけるとわかりやすいです)

本来、美人局をして金を巻き上げるだけなら、

①お駒が丈八と不貞行為をする

②それを長兵衛が目撃して脅す

これだけでいいはずなんですが、
駒長の筋は、

①お駒が丈八に恋文を書く

②その恋文を長兵衛が見つけて、長兵衛がお駒を殴る

③そこに丈八がやってきて仲裁に入る

④長兵衛が「てめえ達間男してやがったな!親分に話をつけてくる!」と、お駒と丈八を家に残して出て行く

⑤お駒が丈八と不貞行為をする

⑥それを長兵衛が目撃して脅す

となっています。
⑤より前、要らなくないですか?
でもって④みたいなことがあった後に⑤になる神経も理解できません。
これがよくわからなくて、詳しいお客さんから①〜④が必要な理由をメールで募集したりしました。

また、いくらフィクションとはいえ、女性を殴って笑いを取るのは如何なものか。
噺を良くするためとはいえ心苦しいので、ネタ下ろしの時は『長兵衛が一回殴ると、お駒が二回殴り返す』という風にやりましたが、やはり気が滅入ります。
「コンプラがなんぼのもんじゃい」という気持ちはあるんですけどね。

お駒が「これは美人局でお芝居なんです」と丈八に打ち明けずに一緒になるのも引っ掛かります。
丈八にしてみれば、お駒は『以前からずっと自分のことを慕ってくれている女性』のままです。
それを説明しすぎず理解させるのが味わいかもしれませんが、志ん朝師匠は打ち明けておりました。

他にも、『長兵衛がいつ戻ってくるかわからないのにお駒を着替えさせるか?』とか
『長兵衛はお駒丈八を見張らず友達の家に酒を飲みに行くか?』とか
色々疑問がありましたが、今回は自分なりに全部解決してみました。
変えすぎて稽古不足感は否めませんでしたが、やりたいことはできたように思います。
もう少し詰めれば自分だけの噺になるかもしれません。

◎長屋の算術
これも駒長同様、疑問を全部解決しました。
算術のくだりで『お金を持って洋食屋に行く』=『お釣りはいくらか?』を求める問題のはずなのに、
『カツとご飯の値段を足すといくらになるか?』に変わっている所とか、
洋食屋からそば屋(あるいは飲み屋)への展開の仕方、
長屋の連中が、飲み屋の店員をやる理由、女将になる理由など色々。

ただこういった疑問は、私が演者で噺を文字に起こすから気付くのであって、
加えてウチの師匠は圧倒的に説得力があるので、お客さんはそういう疑問を持ってないように思います。
現に「どういう工夫をしたのかわからない」とたまに言われます。
整合性なんて割とどうでもいいのかもしれません。
「話なんてのは10の内3つでも分かれば後は大体察しがつく」ってやつですね。
駒長もただ聴いている時はなんの疑問もなかったですし。

ひとまず十二、三分に収まったので、寄席で度々かけていこうと思います。

◎粗忽長屋
今年度々かけてますが、主人公の粗忽者が熊さんを呼びに行くまでのくだりは毎回変えています。
できる限り師匠の匂いが消えるように。
でサゲ前で「ああ、白酒の粗忽長屋か」てなれば良いですね。
『似て非なるもの』を目指してます。

熊さんがまともな人の理由はいずれどこかで。



終わってみて、この会は、噺のクオリティよりも工夫を見てもらう会になってきたように思います。
出来が二の次になってきました。
こういう場があるのは貴重です。

が、来月はお休み。
7/29に超ネタ下ろし独演会(仮)をやる予定ですのでそちらに集中したいと思います。
土曜の夜、巣鴨、2000円、お待ちしております。ぶつくさ。

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