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オッペンハイマーみた。物事の道理がわからん学者という生き物。

オッペンハイマー見ました。
ダークナイト以来クリストファー・ノーラン好きなので。

ほぼフィルマークスで書いたレビューの転記になりますが、感想つらつら。

ネタバレとかあんまり気にしなくていいと思います。
むしろ知ってたほうが見易いはず。

何せ難しすぎて上映中2回寝ました。

会話のシーンばかりだから、前の方の座席に座って首が痛かったことも相まって、字幕追うのにとても疲れてしまった。

まぁでも、この映画は名作なんでしょう。
アカデミー賞取るのもわかる気がします。
アメリカ人にはそりゃ衝撃だろうと思うからです。
この後ずっとこきおろしますが、良い映画だと思います。

私は寝たけど…

そしてめっちゃイライラしてしまったけど…

そういう私自身を鏡映しに照らして突きつけてくるということは、良い映画なんだと思ってます。


まず特筆すべきは、IMAXで見たから音デカシーンがもうこわくてこわくて。

我々日本人からしてみれば、トリニティ実験に成功して狂喜乱舞するアメリカ人が狂って見えるのも当然。

よくも悪くも、アメリカ人との認識のギャップを見た気がする。

トリニティ実験成功への狂喜乱舞というのが、一般的なアメリカ人にはおそらく普通のリアクションだってことです。
あんなに恐ろしいシーンに見えるというのが、原爆を正義だと思っている彼らにとっていかに衝撃的なことか。

そう、私含め日本人は全然ピンと来ないけども、アメリカ人の一般見解だと原爆は正義らしいのです。

『菊と刀』の序章でルース・ベネディクトが言っていた。
日本人は負けたのになぜ降伏しないのか、むしろ捨て身で攻撃してくるのか、アメリカ人には不気味で仕方なかった、だからアメリカ人は、日本を降伏させるために、本気出して日本人を分析しなければならなくなった、と。
(雑な抜粋ご了承ください)

だから、彼らから見ると、原爆投下しなければ日本人もアメリカ人ももっと死んでいた。
それを救ったのだから原爆は正義だ、というのです。
けっこう日本人の見解とはギャップがあると思う。
(てかこの映画の内容わかった上でバーベンハイマー言ってたのかぐえぇってかんじですが)

まぁそんな小難しくてセンシティブなことは置いておいてですね、
私がムカついたのはオッペンハイマーの学者としての態度です。

端くれながら自分も学問に人生を注ぎ込んでいるので、学者としてのあり方が身につまされました。
「この映画は学者への説教なんだな!天晴!でも途中寝た!」
が、この映画への私の感想のすべてです。

オッペンハイマーが、妻に「しっかりしなさい」と詰められるシーンがとてもよかった。

というのも、私はオッペンハイマーに対して、「研究者の悪いところ出てるわ〜」とずっと思っていました。

学者、研究者、〇〇博士という生き物が全部ああいう感じだと思われるのは嫌なのだけど、事実学者にはああいう不甲斐ない面があると思っています。

青酸カリを注射したリンゴが誰かの口に入る可能性にだって、
不倫相手が壊れる可能性にだって、
作った原爆が22万人を殺戮する可能性にだって、
事前に気がつけるはずなんですよ。
てか気が付かなきゃいけないんですよ。

だって「賢い」ことで飯食ってるのだから。

自分がリンゴに青酸カリを注入したのに、いざ人の口に入るかもと思ったら恐くなる無責任。自分が不倫したのに、いざ不倫相手が死ぬと妻に泣きつく無責任。
自分が原爆作ったのに、いざ投下されるとなると病んで水爆には反対する無責任。

理論量子力学はわかるのに、毒が人の口に入る道理や、不倫で不倫相手が死ぬ道理や、爆弾を作れば投下されるという道理はわからんのですよ。
いや、わかってるけど好奇心に負けるのかな。
だとしたらより最悪なんだけども。

私はあの同情を誘う感じが何よりムカついてしまう。
むしろ「罪全部背負ったるわ地獄で会おうぜ」みたいな態度のトルーマンのほうが好感持てたまである。

ここまでこきおろしたものの、ノーランは本当にフラットでえらいとも思った。
これは、オッペンハイマーという人物一人にフォーカスを当てるという手法を取ったからこそだろう。
センシティブなテーマでありながら、ちゃんと観た者の姿を映す作品になってた。
単なる反戦映画じゃないと思う。流石である。

作ってる物やオッペンハイマー自身のムカつく点を隅に置いておくとするなら、
トップダウン方式でどんどん段取り立てて、実際足使って働く仕事ぶりは楽しそうでいいなと思った。
こういう仕事したいなと思った。
応用力に欠けて、営業や企画ができなくて、散々「何の役に立つの?」と言われ続ける学者なんて山ほどいるのでしょうから、これは見習いたいところ。

あと主演の俳優さんがめちゃくちゃ格好良くてですね。
だから弱くて道理がわからない彼の姿に、より失望したのかもしれません。

ああもう学者という生き物への失望が深まるばっかりですよ。
我々は、何の役に立つかわからん研究してるオタクか、無責任な政治屋の二極にしかなれないのだろうか。
学者、研究者、博士と名のつく人はみんなこれ見て、存分に苦しんでほしいですね。
ノーランが、「学者は庶民にロマンも与えない、物事の道理もわからない無責任だ」という像を見せてしまったのに、どうすんだこれから。
精力的に活動して、かつ決して政治屋にはならない素晴らしい学者もたくさんいるのに…

モヤモヤしたので、これはゴジラ-1.0をもう一回見て晴らそうかな、と思いました。
いや改めてゴジラすごいと思った。

冷静に考えたら唯一の被爆国が原子力の怪物ゴジラを生み出してるのやばくないですか。
原爆落とされた側の消化の仕方じゃないでしょ。

以上。
知識人や有識者自認する人々にこそ見てもらいたいですね。