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ドイツのスポーツ事情

ドイツ・ブンデスリーガのバイエルンが今後「U-10以下のチームを持たない」との発表を行ったようだ。

この発表の裏側には、社会的な重要な問題が潜んでいます。NPO法人 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会が出している「運動器検診からみた 子どものロコモ」のレポートからもドイツの現状が見て取れます。

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ドイツの子どものスポーツ実践にはいろいろな欠陥があるといわれています。実践は2つの方法で行われています。一つは、小学校の体育の授業、もう一つは、地域スポーツクラブでのスポーツ活動です。スポーツクラブではたいていはスポーツ種目ごとに分かれて実践されています。

小学校で体育の指導をする先生は教科専門の教育を受けておらず、体育授業の質は決して良好とはいえません。子どもの発達や運動特性に応じて授業が展開されないことが多く、記録や点数中心になっているそうです。授業時間数も、週2回と決められている必要最低限すら守られていないのが、平均的な学校の姿です。

スポーツクラブの方ですが、そこに「補足的な体育の役割」を期待するのは無理があります。ここでも指導者は十分な専門教育を受けておらず、その上、早くから試合に出場することに関心のある、比較的上層階級出身の、力のある男児を前提とした指導に傾きがちです。下層階級の女児がクラブに入ってくるのは、10%ちょっとだそうです。

このようなドイツの現状がもたらす、将来は十分予想ができると思います。いわゆる、できる子とできない子の二極化です。何が欠落しているかというと、長期的なスポーツへの結びつきを保証するような、すべての子どもに価値をもたらすスポーツ指導なのです。

「ドイツ子どもスポーツ白書第1巻」にはこう書かれています。
「スポーツをすべての子どもの生活要素にしていくためには、幅広い、スポーツ種目を超えた、プレイ重視の、そして子どもたちの関心に合った、インターカルチュラルな開かれた運動を提供することが、子どもの教育の中で一段と高く位置付けられなければならない」というものです。

ハイデルベルク大学スポーツ科学研究所はこれを受け、子どもはスペシャリストではなく、オールラウンダーであり、小さな大人のように扱ってはならないとし、「多面性と子どもへの適合性」という2つの原則をもとに発達に即した運動プログラムを開発しました。それが「バルシューレ」です。

この原則に従いバイエルンはすでに活動を始めていました。今回の発表は突然のことではないのです。下記のURLから動画をご覧ください。ドイツ・ブンデスリーガの多くのチームが同様の活動を行なっています。

https://fcbayern.com/fcbayerntv/de/video/kidsclub/2019/09/kids-club-event-ballschule


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