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実在感の伝播・継続・蓄積

VR・AR・MRで表示した物体に対して「本当に存在するように感じる」のを実在感といいます。実在感は伝播する、継続する、蓄積する、というおはなし。

実在感の伝播

実在を感じられる物体があることは、その周囲の物体にまで実在感を感じさせる効果があります。例えば、VR体験中に特定の仮想物体に触れさせるとVR体験として高い臨場感を感じられるようになることが知られています。

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さらにこの実在感は、物理挙動などによって他のものに伝播して行きます。2018年頃、「実際にコントローラーをぶん投げる」という前代未聞のVRアトラクションを作りました。トーヤラケット、という斧投げVRです。

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別の展開事例としては、「実際にボールをシュートできるサッカーVR」としてVRキャプテン翼の制作も行い、SXSW2018に出展させて頂きました。こちらも、炎をまとうスーパーシュートを自分が蹴った実感があり、それを受け止めたキーパーにまで実在感が伝わって行くのを感じられるものでした。

これが、実在感は伝播する、というトピック。

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実在感の継続

実在感は時間的な継続性を持つ、という気づきは、GOLDRUSH VRによって得られたもの。GOLDRUSH VRは、フリーロームで歩き回る体験と、トロッコに乗って別の場所に移動する体験を組み合わせたものです。

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トロッコにあらかじめ乗った状態でVRをかぶり、そのままトロッコが(仮想的に)走り出した場合はさほどの臨場感を感じない。でも、VRの中で歩き回り散策して、モノを投げて遊んで、その世界への没入をした状態から乗り込んだ場合、トロッコの仮想走行は別次元に迫力を感じる体験になりました。

最近制作した商談VR・キネトスケイプでも、歩き回り相互交流した体験から360実写映像の空間に入ると、その実写世界の臨場感が高くなるという発見をしています。

これが、実在感は継続する、というトピック。

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実在感の蓄積

これはかなり興味深い知見。10種類ほどのパーティーゲーム・パッケージである『仮想パーティ』の中の、『おさらわり』というゲームで発見したものです。

現実でも、お皿を割ってストレス解消するサービス破壊セラピーというらしいですw)がありますが、これをVR化したもの。消耗品の代金もかからないし、何より安全。みんなでバーチャル世界でバンバンお皿を割ろう!というコンセプト。

このコンテンツを店舗展開した所、なぜかお客様の転倒事案が数件発生!ヒアリングをしたところ、どうやら存在しないはずのテーブルに手をつこうとして転んだということ。
えええええええええww そ、そんなことあるんですかww

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この勘違いは一体なぜ起こったのだろう?

仮説。「お皿をぶつけてお皿が割れるという動き、ハンマーなどがテーブルの面でぴたっと止まる演出が合わさり、何度も実在感を感じる動きが繰り返された結果、実在を確信するに至ってしまった」のではないか。

さて困ったぞ。お皿を何度もテーブルにぶつけるコンセプトを根底から変えるのも難しいし、納品した後で改修に掛けられる工数も限られている。どうするハシラス!どうする実装担当の飯田さん!

…その時、神のアイデアが降ってきた…。

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劇的ビフォーアフター!この実在感あふれるトゲトゲのおかげで転倒する方はぱったりとなくなり、安全にお楽しみ頂けるようになりましたとさ。

これが、実在感は蓄積する、というトピック。

ロケーションベースVRの視点

感染症の流行により、国内外の多くのロケーションベースVR施設は撤退を余儀なくされてしまいました。ただ、ロケーションベースVRをやっていたプレイヤーたちは皆、上記のような多くの高臨場感にまつわる知見を持っています。

ハシラスも、大型のエンタメ案件をやりつつ、特別な乗り物などを使わないビジネス用途のVRにもチャレンジしています。やってみるまで気づきませんでしたが、ビジネス領域においても高い臨場感は活用できるもので、ロケーションベースVR屋らしいユニークなモノ作りができています。

最高に臨場感のある体験の作り方を知った上で、コスト要件が見合う形にアジャストして制作しています。

そんなロケーションベースVRの叡智の結集が、一般社団法人ロケーションベースVR協会です。毎月の定例では、この新しく生まれた文化をどう育て、どう発展させて行くか熱い激論を交わしています。

理事会で「Club Houseでみんなにも聞いて頂ける形でブレストやってみようか」となりましたので、まずは毎週木曜日の20:30-21:30に定例談義をやってみようと思います。

それではまた!

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