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たのしい地方創生

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地域活性化の業界で働く筆者の、日常のささい気づきを、まじめ風味でお届け。
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#地域活性化

#86 『実家』

2024年11月某日 とある経済団体が主催する意見交換会に出席する機会があった。地域経済の発展に向けた情報交換をすることを目的とした場である。主に地域経済のリサーチャー中心に集まって、経済モデルをベースにしながら、理論に近いサイドからの話題提供が実施された。筆者を含め、地方における人口の議論をかれこれ10年以上行っている気がする。さて、そんな場において、後半面白い話題が登場した。「実家」という概念についてである。 … 地域活性化の議論は人口の社会減の議論と不可分である中

#85 ぼんやりした『価値提供』

2024年11月某日 最近、地域政策の中でも「起業・創業」に関する施策がずいぶん多くなってきたように感じる。皆様がお住まいの地域でも、自治体による「創業セミナー」や「連続講座」のような企画がたくさん実施されているのではないか。筆者は、「地域活性化」に必要な要素は基本的に「しごとづくり」であると考えており、ローカルの起業家を育成する施策は、これらに類するものとして、総論賛成の立場をとっている。 … さて、そのうえで、筆者の居住地近辺の自治体で実施されている施策の内容につい

#84 聞くための『メモ』

2024年11月某日 ミニマリスト、というかシンプリスト的に暮らしていると、だんだんと自分をとりまく「グッズ(モノたち)」が愛着に満ちたものとなっていく。実際、「モノの数」としては減って行く傾向にあるのだが、モノの数に占める「お気に入りのモノの数」の割合が高くなっていく感じだ。カバンに入れて持ち運ぶ10個ほどの「モノ」は、延べ3時間では語り尽くせない「自分なり物語」が束ねられている。この辺は、別の機会に整理してみたい。 … さて、一般的に、ミニマリスト的な価値観を志向し

#83 コスパから考える『宿泊税』

2024年11月某日 先日、中国地方のとある地方都市のホテルで一泊した。チェックアウトの朝、ロビーでぼーっとしていたら、お年を召した男性が、なにやらホテルスタッフに詰め寄っていた。どうやら、ホテル側が男性に案内した「宿泊税」と「入湯税」の支払いについて「ワシャ、きいとらん。」ということらしい。若いホテルスタッフは、ただただ「税」の説明をする方法しかなく、少々不憫な様子であった。なお、宿泊税を徴収しているのは行政であり、ホテルは徴収実務を「代行」しているだけである。念のため。

#82 田舎の『都会感覚』

2024年11月某日 秋らしい気候になってきたなと思っていたら、とたんに冬を思い出す外気が訪れてきた。タンスの奥の、クリーニング屋さんのビニールがついたままのアウターをサッとはおり、今日も颯爽と家を飛び出す。みなさん、いかがお過ごしだろうか。あったかくしてくださいね。 … さて、筆者は西日本の地方都市を主な生活拠点としており、通勤には主に私鉄を利用している。最寄りの駅は、いわゆる「特急が停まらない駅」であり、こじんまりとした佇まいで、駅員さんもいない。そのような小さい駅

#81 ブランドが『染み出す方向』

2024年11月某日 陶磁器に造詣が深い人と話す機会があった。地域の「土」を原料とし、山あいに構えた窯で、ろくろで仕上げた器を焼成しているのだとか。完成した器を拝見したところ、堅苦しさがなく、遊び心に満ちていた。すばらしい。そのあたりの文化に疎い筆者としても、素直に手にとってみたいと思ったが、我が家の食洗機では洗えないらしい。もう少し、我慢することにした。 … さて、全国各地にはさまざまな「窯元」が存在していて、各々のスタイルで陶磁器を生産している。陶磁器の面白いところ

#80 『豊かな自然』は安いのか

2024年11月某日 地域活性化に関心のあるみなさんは、必ずと言っていいほど「その地域の強み、魅力、資源」みたいなものを考えたことがあるだろう。そして、それらを「ふせん」に書き出して、ペタペタとホワイトボードに貼り付けたこともあるだろう。筆者も同様である。ただし、基本的には「最後の発表役」にはあたりたくないと思っている。 … さて、地域、とくに日本の地方部のエリアの「魅力」に目を向けてみると、多くの場合「豊かな自然、美味しい食」というものが登場する。よく考えてみると、日

#79 『のどぐろ』

2024年11月某日 どの地方都市を訪問しても、「のどぐろ」が大注目されている。先日、鳥取県を訪問したが、ぐるなび高得点の海鮮居酒屋の推しは「のどぐろ」だった。また、富山県に訪問した際も、居酒屋・割烹・土産物屋など、どのチャネルでもセンターは「のどぐろ」だった。日本海沿岸の海産物ブランド界は、「のどぐろの時代」といっても過言ではないだろう。 … さて、「のどぐろ」が水産品界のインフルエンサーとして、その知名度を確かなものにしたのは、一体いつからだろうか。インターネットで

#78 管理職という『翻訳者』

2024年11月某日 最近、令和時代の管理職の負担感や絶望感が、キャリア的な社会問題として取り扱われている論説を見かける機会が増えた気がする。当事者として大変興味深い話題である。さて、管理職はかつて(主には昭和時代)のソレと比較して「地獄化」しているのだろうか。 … 人的資源管理の領域で、大変話題になっている一冊に、小林(2024)がある。同書では、管理職の負担が増加し、イノベーションや人材育成が停滞する中、経営者や現場での認識のズレが問題を深刻化させていると述べ、具体

#77 『旅』という装置

2024年11月某日 最近、ふとしたことで、以前感銘を受けた小文を思い出した。たしか、著名なファンドマージャーの方による手記か何かだったと思う。その内容は、「地方の人ほど地方を知らない。そのため、自分の地域のことを相対化できず、本当の地元の良さに気づいたり、その強みを上手に伸ばしたりすることができていない。だから、地方の人ほど、いろんな地方を知らないといけない。そのために、旅をしよう。」みたいなものだった(と筆者は記憶している)。 … さて、若かりし頃の筆者は、前述の小

#76 『巨人』と『虚人』

2024年10月某日 最近、地方ビジネスコミュニティの中で、どうにも「焦っている人」を見かけることが増えた。どういうことかというと、自身の成果や能力を「必要以上に大きく見せようとする人」が増えたと感じる。どうしてだろうか。 … 先日、とあるセミナーに参加していたら、講師の先生がこのような感じで話していた。「みなさん、[権威のある学術機関]の[著名な研究者]知ってるでしょ。あの人(ときどき"アイツ"となる)、[知らん会社名]の顧問やってんすよ。あ、ちなみに僕も[知らん会社

#75 『グッド』な『フッド』の『ブック』

2024年10月某日 最近、面白いと思う「本」のジャンルが変わってきた。20代前半の頃は、いわゆる自己啓発本というジャンルに大変お世話になった。その後、30歳前後では、大学院で研究していたこともあり、社会科学系の小難しい本と格闘していた。その後、文学に被れようと三島由紀夫はじめ、色々乱読しながら、ここ数年は、外山滋比古・小山薫堂・糸井重里・中島らもといった、すこし「肩の力が抜けた」タイプの本を嗜んでいたりする。そんな感じで、大人になってからは、割と「本」と接する機会が増えて

#74 『バカヤロー、コノヤロー。』

2024年10月某日 とある地方中核都市で、施設の再整備に関するプロジェクトに関わることになった。そのため、最近は、人口30万人ほどの都市を定期的に訪問している。駅前から広がる商店街・繁華街は世の地方都市らしく、ほどほどに盛り上がっており、昼から夜にかけて賑わいを増す。「酒と肴」の暖簾に惹かれて道草を食いたくなることもしばしばである。嗚呼、仕事をしなければ。 … さて、先日、目的の施設の周辺環境を把握しようと、少し街の中を歩いていたときに、不思議な出来事に直面した。とあ

#73 『トレンドワード・ビジネス』

2024年10月某日 最近、地域政策の文脈で、SDGsをあまり聞かなくなった。電車の中で、バッジをつけているビジネスパーソンを見かける頻度も下がったように感じている。SDGsのヤツ、元気にしているのだろうか。2030年まであと6年ほどある訳だが、その頃、SDGsは私たちの記憶にあるだろうか。少し心配になる。一方、最近、「ウェルビーイング」をよく耳にするようになった。また、「グリーン」も根強い。さらに、「パーパス」もある。世(地方)はまさに、トレンドワードによる群雄割拠の時代