魚の学校では良い教材になっていたことでしょう

ダム釣りに誘われました。この村には似つかわしくない、直線で出来た白く高い堤防。似つかわしい、蝉の声、緑の水、スピーカーの割れ。

浮いている折れた枝やゴミが水面をゆっくりと移動しています。ダムの河岸にはそれらが集まり泡を吹き、時間を遅くさせます。ダムは死を抱いています。

ダム釣りは1、2年やることになります。グランダー武蔵の影響は間違いなくありますが、何かを遠くに飛ばす行為が面白かったことは覚えています。池の主みたいな存在を釣り上げてみたかったです。なかなか才能がないようで、ブラックバスは1回もフィッシュできなかったです(釣れるとフィーッシュ!と叫ぶのが掟です)。

外来種が在来種を駆逐してしまうので、リリースしないで!といった旨の看板がそこかしこにありました。ブルーギルはよく釣れたので、釣り友だちに食べれるのかと聞いたところ、「食べない」と言われました。諦めきれず、家に持って帰ると母が料理してくれました。蛋白な味でなかなかイケたような記憶です。あれ以来ブルーギルは食べていません。

ミニ四駆のクリアボックスにきらきら光るルアーたちを敷き詰め、眺めているだけで嬉しかったです。まるまると太ったやつや、顎が飛び出ているやつ、ちびのやつ、骸骨のやつ、透明のやつ。今思うと、ダムの魚たちには刺激的すぎた気がします。ワームというぐにゃぐにゃしているやつも使っていました。

アメリカのグミの袋のようなものに数個ずつ入っていて、青、紫、黄、黒、赤、追加のラメ。芸術は爆発です。

ワームのほうがルアーよりは釣れていました。ワームは通常ミミズ等の形を模しているのですが、私たちが使うのはドラゴンやスカイフィッシュ、コブラといった、本来の欲望にソリッドなものでした。

警戒すべき得体のしれない生物が漂い、泳いでいるのですから、魚の学校では良い教材になっていたことでしょう。

グランダー武蔵の流行りも過ぎ、たくさんの早朝とルアーを失い、少しだけ大人になった私は、庭からミミズを掘り出す日々へと足を踏み出すのでした。

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