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サーカスの象

「これでいい」
これは私の母が何かを選ぶ時によく口にする言葉です。
 
外食に行って料理を注文する時
服を買う時
 
何かを選ぶ時はたいてい
「これ ”で” いい」
と言って選びます。
 
値段が大して変わらないなら
「これ “が” いい」
と思うものを選べばいいのに…
 
とにかく一番欲しいもの “ではないもの” を選べば間違いがない
とでも言うように
「これでいい」
と無意識に口にする母を見ると
自分で自分の欲しいものを選ぶことを放棄しているように見え
悲しいような、憤りを感じるような複雑な気持ちになります。
 
 
 
そんな母の姿を見ると私は《サーカスの象》の話を思い出します。
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《サーカスの象》
サーカスの象は、逃げ出せないよう
小さいころから鎖と杭でつながれて過ごします。
まだ小さく力が弱い子象には鎖を引きちぎることも
杭を引き抜くことも出来ません。
そんなことが続くと、子象は
「僕には鎖を引きちぎる力も杭を引き抜く力もないんだ
だから僕はここから逃げられないんだ」
と信じ込み、自由になることを諦めていきます。
やがて大人になり、杭を引き抜くだけの力を得ても
自分にそんな力が備わっているとは思いもせず
象は大人しく鎖につながれて生きていくのです。
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 《サーカスの象》の話は、その人が何を信じ込み
その信じ込みが行動にどのような影響を与えるかという潜在意識の話です。

母も目に見えない鎖や杭につながれているのだなと思いました。


 
「一番欲しいものを選ばなければ間違いがない」
つまり、
「一番欲しいもの選ぶことは間違っている
だから一番欲しいものを選んではいけないんだ」
と、いつからか信じ込んでしまったのではないでしょうか。
 
「望んでも欲しいものが手に入らないなら最初から望まないほうがいい」
「欲しいものを『欲しい』ということで誰かに嫌な思いをさせてしまう」
 
私の想像でしかありませんが、
母の性格や、育ってきた時代、環境から想像すると
このような信じ込みがあるのではないかと思います。
 
年老いてきて、自分ひとりでは出来ないことが増え
誰かの助けなしには生活出来なくなってきたという遠慮も
「これでいい」に拍車をかけているように思います。


 
自分がこんな口癖を持っているということを
母自身は気付いていないと思いますし
私が指摘したとしても、きっと
「そんなことないよ
ちゃんと欲しいものを言ってるよ」
と言うと思います。
それでも、私には母が何かを抑え込んでいるように見えてしまい
悲しい気持ちになります。
 


そんな母を見ていて、鎖や杭につながれているのは
私も同じだと思いました。
 
「自分には鎖を引きちぎる力も杭を引き抜く力もある」
なんて到底思えない。
「そんな力を持っているかも知れない」
という考えることすら思いつかない。
それ以前に、鎖や杭につながれていることにも気付いていない。


母の本当の望みを聞き、叶えてあげたいというのは、
完全に余計なお世話であり、私の自己満足です。
 
だから私はまず自分のために
自分をつないでいる鎖や杭を外せるよう、
潜在意識の勉強を始めることにしました。
 
そして、自分の信じ込みを外しながら
そっと母の鎖や杭も外していけたらいいなと思っています。

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