宇宙飛行士の夢

男性「こちらヒューストン宇宙センター。美鈴、聞こえてるか?」
美鈴「宇宙ステーションより美鈴です、感度良好よ、マイケル」
マイケル「そいつは良かった。宇宙からの眺めはどうだい?」
美鈴「そうね、クリスマスイブだからいつもより明るい気がするわ」
マイケル「夜更かしでもしてサンタを待ってる子達がいるんだろうね。そろそろ美鈴の国の上空を通るんじゃないか?」
美鈴「ええ、日本が見えてきたわ。あっ!」
マイケル「どうした美鈴!トラブルか?」
美鈴「いいえ、大きな流星が見えたものだから」
マイケル「おいおい、驚かすなよ。コーヒーをこぼすところだったぜ」
美鈴「ごめんなさい。…でも変ね。この流星は急に現れたの。まるで地上から飛んできた様に」
マイケル「それならミサイルかロケットになるけど、レーダーには何も写ってないぜ。気のせいだろう」
美鈴「ああっ!」
マイケル「どうした美鈴!うん…?こんな時に通信障害か?なんてこった!」
宇宙ステーションと連絡が取れなくなり、地上が混乱している頃、私は信じられない物を見ていた。
先程の流星はまだ続いていた、というより、下に降りていったと思ったらまた上がって来る。要するに流星は上昇と下降を繰り返して、下降の際に小さな流星群をばら撒いていた。まるでプレゼントでも配る様に…。
美鈴「まさか、こんな事ってあるの…」
その流星は今度は私のいる宇宙ステーションまで迫ってきた。
美鈴「サンタ…クロース…?」
目の前にトナカイの群れとソリを引いた赤い服のサンタが見える。私は白昼夢でも見ているのか…。
その時、ヘッドホンにノイズが入り、はっきりした老人の声でこう聞こえた。
サンタ「メリークリスマス、美鈴。良い夢を」
たしかにそう聞こえた。サンタはまた元の流星に戻り、地上へ向かっていった。
マイケル「美鈴!大丈夫か美鈴ー!」
美鈴「あ、ああ、大丈夫よ。うん、大丈夫」
流星はいつの間にか消えていた。地上の宇宙センターではサンタの記録は音声すら無く、通信障害のみで終わったが、私は確かにサンタを見た。幻かもしれないが、それは私の胸に深く刻まれた。
私は地球を見ながら呟いた。
美鈴「メリークリスマス、サンタクロース。全ての人に、良い夢を」

終わり

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