今さらデス・ストランディングの感想

  PS4で発売日に購入後、ちびちびプレイしてようやく先日クリアできた「デス・ストランディング」の感想文です。ネタバレあるのでご注意あれ。

どんなゲーム?

 検索したら星の数ほど記事とか感想とかツイートがヒットすると思いますが「アメリカ公認の宅配業者になって、荒廃して地上に住めなくなった北米大陸を渡り歩き、依頼された荷物をひたすら配達するゲーム」です。完全なるお使いゲー。

それ楽しかった?

 それはもう抜群に楽しかったです。「荷物の配達」というシンプルなミッションを繰り返すだけなので、派手なアクションや銃撃戦や殺し合いでないとダメという方には向きませんが、時には襲ってくる敵から逃げながら、時には敵の基地から荷物を奪い、雨に触れると瞬く間に劣化してしまう荷物を庇いながら時間や温度や重量や地形と戦う配達業務は、意外とスリリングで中毒性がありました。

 スタート時点では装備や設備が限られているので、どこに行くにも徒歩です。舗装された道路もない荒れ地で、川に梯子を横たえて渡ったり、崖の下にある施設に行くためにロープを設置したり、化け物からも逃げるしかない無力な主人公ですが、無力であるが故に「どうやってアレを回避するか」「どんな装備なら持てる範囲の重量で進行できるか」「どれだけの依頼を効率よくこなすか」といった工夫がとても楽しいのです。

 それがバイクに乗れるようになり、トラックに乗れるようになると、行動範囲や積載重量が格段に向上するものの、力技で移動できるようにもなるので、ついつい工夫せず突っ込んでしまいがちになります。中盤くらいから作れるようになる「ジップライン」という移動設備が登場すると、さらに力技度が増して完全に効率厨。うまいことラインを作っていくと、60分以内の依頼を5分かからず配達できる爽快感を得られるものの、もう行程を考えることもなくなり、便利さと楽しさのトレードオフみたいな葛藤が生まれました。まあ、便利さを採ってしまいましたが。

 戦闘についても、簡単に敵を拘束できる銃が手に入る序盤からもうヌルゲーに。難易度HARDであっても、誘き出して拘束して気絶させるの繰り返しでだいたいの基地は殲滅できます。化け物も血液グレネードや血液弾の銃が手に入るとほぼ無敵。たまにボス戦で苦労する程度で、序盤より中盤以降に強くなってからの方がモチベーション保ちづらくなる面がありました。

 一番モチベーションに響くのは、無駄に長いムービーだったりします。少し操作したらムービー、また少し操作してはムービーの繰り返しになる場面が最序盤と終盤に用意されていて、そこはもう我慢するしかないっていう。

 このように、ともすればモチベーションを吸い取られて飽きてしまうような要素もあるのですが、不思議と配達したくなる、それがデス・ストランディングです。

その1:B.B.の不思議な魅力

 後半は名前が付きますが、主人公はカプセルに格納された「B.B.」と呼ばれる乳児ほどの子供を胸部に設置して活動します。B.Bは地形や敵を把握するセンサーの源で、道具としての役割が主になっています。無毛でカプセルの中にいて瞳の大きな赤ちゃん、これがちょっと不気味なんです。なんですが、徐々に可愛く思えてくるのが不思議。必要に応じてあやしたり声をかけたり気遣ったりしているうちに、どうにも愛しくなってくるんです。

 最終盤には「え、じゃあ君は一体誰なん?」というツッコミに至るものと思いますが、ラストシーンに至るムービーでは、誰しもB.B.の事を想ったはずです。間違いない。あの没入感というか、感情移入の凄さがB.B.の魅力なんだろうと思いますよ。

その2:遊びの演出の程度が丁度いい

 この手のオープンワールド的なゲームには、いわゆるイースターエッグという遊びの演出が隠されていることが多いのですが、デス・ストランディングも例に漏れません。温泉に浸かると、ドリフのあの歌(ババンババンバンバン♪)を合いの手付きで歌えたり、山中に鳥居があったり、自室内の各部で特殊な演出があったり、果てはユーザーの誕生日にプレーすると、祝ってくれるらしいですよ!(誕生日演出は残念ながら未見)

 キャラクターでも、ミュージシャン役にミュージシャンの三浦大知、エンジニア役に漫画家の伊藤潤二、コレクター役にファミ通の浜村さん(壁にネッキーが彫られている)などなど、隠されてない要素でもカメオ出演の遊びが施されています。また、配達をこなしていくと独居老人が亡くなったり、(実は過去に因縁がある)男女が同棲したり別れたり復縁したりといった、ゲーム内の人間関係が少し動いたりします。基本的に地上は暮らせる環境にない、という条件下にあるため、その少しの動きに大きなドラマや感動があったりして、それらに自分の行動が関わってる、というあたりがまた没入感を増してくれました。

 てか「同棲したいから男の家に運んで!」と、だいぶ危険なルートを進む依頼を受けていたのに、その後の同棲解消、再同棲に関する移動は勝手にやってるんだけど!自力で移動できるんだったらそうして頂きたい!

その3:マルチプレイ未満、シングルプレイ以上の"ゆるいつながり体験"の絶妙さ

 これもレビュー記事なんかで散々言われていることですが、ソロ専ゲーマーにとっては、とても新鮮で良い機能だなと思いました。主人公は「サム」ひとりだけです。ですが、世界中にそのサムがいて、それぞれの世界で配達しているのです。(デスストの世界観で言うと、それぞれのサムのビーチが存在している、ということになります)

 カイラル通信という超絶ブロードバンドに接続されると、他の世界のプレイヤーが作った設備などが共有されます。世界中全ての、というわけではなく、ある程度の人数に絞られてはいますが、他のプレイヤーとのつながりができるのです。

 で、他のプレイヤーの設備を利用したり、他のプレイヤーの落とし物(フィールドに放置したもの)を代わりに配達することで「イイね!」がもらえます。直接他のプレイヤーと会話することはできませんが、システム上は褒めてもらえるのです。ちょうどいい場所にジップラインや基地や充電スポットがあったりすると、投げられるだけの「イイね!」を投げたくなるのです。感謝の気持ちを伝えるだけの機能。素晴らしい。

 自分の設備にイイねが集まるのも嬉しいし、自分の現状だと総量制限で作れない設備が置いてあるのも助かります。嫌がらせされることもなければ殺されることもない、個人を特定されることもない。まさに"ゆるいつながり"というこの機能、とても良いです。もちろん、プレイヤーへの助力過剰にならないように、現時点で作れない設備は表示されませんし、初めて行くような場所(通信が繋がっていない場所)には自力だけで行く必要があります。このバランス感覚がとても素晴らしいな、と唸りました。

そろそろまとめて!

 あ、はい。前述の3点の魅力の他に、ウォーキング・デッドのダリル役でおなじみのノーマン・リーダスや、007などでおなじみのマッツ・ミケルセンという名優が本当に素晴らしい演技をしています。特にマッツ・ミケルセンはムービー出演が多いので、その素晴らしさに心を打たれました。シナリオはまあ、その、ありきt…悪くない感じですしね。

 もちろんダレるポイントもあるし、手放しで史上最高のゲーム体験とは言えませんが、シンプルなミッションの繰り返しを積み重ねることでゲーム内外の人々がつながっていき、謎が謎を呼ぶ展開に感情を揺さぶられることは請け合いです。PS4でもSteamでも、プレイできる環境をお持ちの方には、ぜひプレイして頂きたい、そんな作品でした。

 さあ、トロコンしたらアサクリやるぞー!

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