天界に住んでいた私は満ち足りた生活に飽き飽きしていた


全てが愛と善で包まれた世界、欲しい物は何でも手に入るし痛みも苦しみも不快もない。
ただ安穏があるだけ。
絶対的な安心があるだけ。
それが永遠に続く。
そのことに段々と堪え切れなくなった。

そこで私は再び人間界に行くことにした。
あれほど嫌で大変だった人間界へ。
人間界へは記憶を持っていけないから人間であることに没頭し、人間であることに苦しみ、人間であることに絶望することもある。
あの不快が充満する人間界に再び挑もうと思っている。
また今回も人間であることに翻弄されるのだろうか。
けれど悪いことばかりじゃない。
あのヒリヒリとした人間界に今度はどういう姿で赴いてやろうか。
ちっぽけで無力な人間であることを疑わないあの場所へ。

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