緑色のソフラン

実らなかった恋ほど
美化されたまま忘れられない。






22歳のとき
とても好きだった人がいた。

同じ職場の人で
よく同期と3人でその人の部屋で
お酒を飲んだ。

部屋は広くはなかったので
いつも3人で川の字で寝ていたのだが
そのうちその人は
必ず私の横で寝るようになり
寝る時に私にだけ
腕枕をしてくれるようになった。




私はその人に惹かれている事に気付いたので
当時付き合っていた人と別れた。






同期を誘わず
2人で飲む事が増えた。

私から誘うことはなく
その人から連絡がくるのをひたすら待つ。
誘われたら必ず行く。

いつでも暇なやつ
呼んだらすぐ来るやつを
徹底的に演じた。





集合して2人でスーパーに行き
お酒とおつまみを買う。

その人が好きだったJリーグチップスも買って
その人はカードの袋を開けて一喜一憂し
カードが開封され価値がなくなった
安い味のポテトチップスを私が食べる。




その人のことはタイプではなかったけれど
話している感じと
あと、なによりにおいが好きだった。

その人の家に泊まって自宅に帰ると
自分からも同じにおいがして
それが凄く幸せで

たぶん緑色のソフランと
その人の体臭が混ざったにおいなんだけれど
今も私はそれと似たにおいの人とすれ違うと
振り返ってしまうほど
あのにおいが大好きだ。





少しでも可愛いと思われたかったので
私はいつも化粧をしたまま
その人の隣で眠った。



それだけ近くで眠っていたのに
半年間なにもなかった。

いや、なにもではない。
時々ほっぺにキスをしてくれたし
抱きしめてくれる時もあった。

あとは腕枕。
それぐらい。



可愛いとは言ってくれたが
好きと言われたことはなかった。

だから私も言わなかった。


関係性を言葉にするならば
「ソフレ」
だったと思う。

添い寝友達




私はその関係を気に入っていた。

決して草食系ではないその人が
手を出してこないことが
なんだか大切にされている気がして
嬉しかった。

けれど、その事を友人に話すと
そういう相手にすら
思われてないんじゃないかと
違った角度の意見が返ってきて

私はこんなにも幸せなのにと
なんでそんなこと言うんだろうと
友人に対してムッとした。

だって私は誰よりもこの人と一緒にいる。
職場だって同じだし
多い時は週3回彼の隣で眠っている。

この人にとってこういう相手は
私一人ではないかもしれないけれど
たくさんいる中の一番なら
それでいいかと思っていた。





しかし当然だが
こんな関係は長くは続かない。






半年ほど経つと
次第に連絡が来る頻度が減った。

2人で会うのが月に数回になり
私がメールを待つ日が増えた。





ある時、久しぶりに連絡が来て
いつものように2人で飲んで
ほろ酔いで腕枕で寝ようとしていると
彼がいつもより私に引っ付いてきた。


なんだかそういう雰囲気を感じた。

私はその人が好きだったので
そうなってもいいかなと思いつつ

「私のこと好き?」

と聞いてみた。






帰ってきた言葉は

「好きだけど2番目」だった。

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