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10/13 17:21 記憶を譲り受ける

鶏ハムを仕込んでいる。
昨夜のうちに塩麹と砂糖を揉みこみ、昼に保温にした炊飯器に沈めたわけだ。
さっき様子見に行ったら、生肉がハムになっていた。
炊飯器っていう容れ物に入れれば、生米がご飯になるし、粉がケーキになる。
だから生肉がハムになってるぐらいは何ともない。
そのはずなのに、なんだか違和感。
お前、本当にあの時助けた鶏ムネ肉か?
安売りシールを貼られてた、あの鶏ムネ肉なのか?
何度も蓋を開けて考える。

きっとあの鶏ムネ肉は私に会う前に何人もの人間に触られてた。
更に言えば、生まれたのは穀物臭い藁の中だろうし、育ったのはコンクリートや鉄で囲われた飼育小屋だろう。人間に世話され、息絶えるその時まで人間を見ていたのかもしれない。

私は全く鶏の飼育には興味がないが、鶏の生きてきた歴史には興味がある。
たとえば物語かなんかでよくある、食べた人間の記憶が自分に備わるとか。
家畜でも起こって不思議じゃない。

鶏よ。私の鶏ムネ肉。私の鶏ハム。
あなたの最後はどうだった?

明日人間を見たら、憎んでしまっていたりして。

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