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記憶の紙魚

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雨森が集めた怪談。 こっそり怪談イベントの感想も。 ※朗読や語り利用されたい方はご連絡ください。 内容の肉付け含め相談OK。勉強中のため無償です。
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#母親

子守り禿

立花友紀さんには5歳になる息子さんがいる。 ひとり遊びをする年頃。 息子さんが架空の友人と遊ぶようになった。 母親に相談すると、友紀さんもそうだったと言われたそうだ。「もし、おかっぱ頭の男の子と遊んでいるようなら『あれはあなたの兄弟よ』と教えてやりなさい。それが最善策だから」 そのように言われた。 何が最善なのか。 理由を聞こうとしたが、息子が泣き始めために聞けずじまいだった。 息子の普段の様子を見るに、毎回同じパターンで架空の友人と遊んでいる。 まず部屋の隅を見て笑い、大

さるそば

物置といえば、庭にあり、大体幅2メートルほどの大きさを想像するのではないだろうか。 翔太さんの家の物置も、そのぐらいの大きさだという。 たまにしか使わない道具等が入っており、その中には石臼もあった。 この石臼は未だ現役。 年越し蕎麦用のそば粉を挽く。 何も年末だけに限定しなくても、夏などは蕎麦を啜りたいもの。 その夏、翔太さんは母親に手打ち蕎麦を食べないかと提案した。 しかし、母親は石臼を使わずに市販の蕎麦粉で拵えたそうだ。 「石臼って使いにくいの?」 「あれは年の瀬しか使

おいしいね

田城さんの知り合いに子供用フォークを愛用する男性がいる。 何でも上野の骨董市に行った際に、衝動的に購入したそうだ。 物は試しと使ってみたところ、非常に使い勝手がよく、手に馴染む。 5歳ぐらいの子供が使うような小さいフォークは、ガタイのいい、この男性を虜にした。 田城さんが食事に誘った時も、必ずこのフォークを持参している。 丸みを帯びた形状の金属。持ち手はこっくりとした飴色の木。 中年男性には非常に不似合いだった。 「ごめんな。こんなの使って」 「なかなか面白いから構わないよ