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記憶の紙魚

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雨森が集めた怪談。 こっそり怪談イベントの感想も。 ※朗読や語り利用されたい方はご連絡ください。 内容の肉付け含め相談OK。勉強中のため無償です。
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2022年3月の記事一覧

盗み蜘蛛

立石さんが中学生の時に、登山学習というものがあった。 その時泊まったのが、とある山小屋。 二階建ての雰囲気のある外観。 一階には広い食堂と薪ストーブがある談話室。 階段をあがると、寝るための大部屋があった。 天井は鉄骨がむき出しで、まるで秘密基地にいるような気分になったという。 立石さんは枕投げをする同級生達を尻目に、夜も早い時間からうつらうつらとしていた。 いつもとは違う寝具に寝にくさを感じ、完全に寝入れずにいた。  天井を薄目で眺めていると、違和感を覚えた。 鉄骨のあた

もういいかい

林田真理子さんは旦那さんとまだ幼いお子さんの三人暮らし。 ある日曜日。子供が昼寝の時間になり、これから夫婦で何をしようかと考えていた。 非常ベルが鳴り響く。 真理子さんの家はマンションの3階。 何かあれば逃げやすい階だが、まずは現状把握しなければいけない。 まずはご主人が外に出た。 少し時間を置いて帰ってくるが、どこにも煙が上がっていないと話す。 外には周りの部屋の人たちも出てきていたが、誰もが火の手が見えないと言っていたという。 マンション管理組合の役員である真理子さん、