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記憶の紙魚

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雨森が集めた怪談。 こっそり怪談イベントの感想も。 ※朗読や語り利用されたい方はご連絡ください。 内容の肉付け含め相談OK。勉強中のため無償です。
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2022年2月の記事一覧

退屈紛れの神舞

麻美さんの小学校は城址跡にほど近く、いつもそこで友人と遊んでいたそうだ。 天守閣や日本庭園がしっかりと残るこの城、敷地の中には神社があった。 とても古く、ささくれや白く乾いた木材が目立ち、賽銭箱さえボロボロだったという。 この日はかくれんぼをしていた。 麻美さんは真っ先に神社を目指した。 ここは拝殿と舞殿がひとつになっており、その床下は子供が忍び込む程度の隙間がある。 常駐する人間もおらず、隠れるにはもってこいの場所だった。 神社に到着すると、背の小さい男性が舞殿で舞って

降る髪

美容師を務める倫子さんは実家暮らし。 家は古く大きく、地下にも部屋があるという。 この部屋については「ミグシ様がおるでな。行ったら顔をあげちゃいけないよ」と教えられて育ったそうだ。 地下室の清掃は月に一度。 父親が担っていたが高齢の為、倫子さんが引き継ぐ事になった。 説明を受けるために父親と共に地下へと向かう。 部屋に入る前に「必ずこれを履くように」と足袋を渡された。 見ると父親はすでに足袋を履いていた。 扉に手をかけ、顔をあげないように首を下に向けた体勢で入る。 狭い視界