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この街は小道が多い。小道、といっても屏と屏との間を縫うような細道だ。 この話を教えてくれた妙齢の婦人。 彼女はお寺へのお参りを欠かすことがない。 ある日、お寺さんへの近道にと小道を使った。 なかなかの傾斜があったので息が上がるのを感じつつ、道なりに進む。 右への曲がり道、その先は寺の敷地だ。 曲がる瞬間、鐘の音がひとつ。 時刻を知らせる鐘の音がいつもより響き、空気が波立つ様にさえ感じた。 2時間ごとに聞いていて、慣れているはずなのに。 肌の表面を撫で付けて、鳥肌を立たせ