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龍神・出会い

 何十年前だろう。息子を生んだ元嫁がとても疲れたと言いい。温泉に行きたいと言ってきた。私は勿論、OKした。子供を連れて行ける旅館や行きやすい場所を探すと伝えると、元嫁は二人で行きたいと。

 義理の妹が宿を予約したからと、、、、とても高いが子供を産んで疲れているのだから仕方がない。

 山深い田舎の温泉町、由緒ある旅館だそうだ。山道を走り、どうにか宿に着いた。(ただの落人伝説に便乗しバブルで繁盛した、成り上がり宿なのですけどね)さすがバブル期に繁盛した風格ある佇まいと、普通なら思うのかな?

 車を止め、受付で予約をした○○ですが。。。。

 予約は入っていないのですけれど?「え、、おかしいですね」「予約無いですか?」元嫁には義理の妹に電話で確認してもらう。義理妹、私は予約したの一点張り。

 宿の若い受付さんが、今日はあいにく満室で。若い私たちを見て「あの~、一泊いくらで予約したかわかりますか?」(格式高いのよ、と言いたげで頭にくる)

 「ええ、一泊一人〇万円です」

 受付の人はびっくりして「少々お待ちください」と。番頭さんが出てきて、お部屋空いております。こちらへどうぞ・・・・

 何だこの部屋、ふざけるな!!!!部屋は20畳もある大部屋。そこに二人。私は「離れ」「特別料理」「温泉は部屋」だと聞いていたからこの値段でOKしたのに。

 今から家に戻っても夜が明けてしまう。

 ただの大部屋。料理も団体旅行の格安料理。まったくこんな旅館二度と来るもんか?ふざけんなと思ったが、元嫁の疲れをいやす温泉だから何も言わず、顔色を変えずに過ごした。

 前置きですが長いですね。ごめんなさい。

 龍神との出会い

 帰りの山道、対面走行の細い道路。数分前から右側がとても気になる(気配がする)そのまま走行していると前方から光が見えたような気がした。

 横を通る時、何かに呼ばれた。すぐそこに車を止める(道が狭くて対向車が来た時に通過待ちする(一時停止、避難する)場所があり、そこに車を止めた。

 元嫁に、何かあるよ絶対に。一緒に見に行こうよ。

 山肌を湧き水が流れ、とても小さな川の元になるような小さな水の道があり、小さな瀧もある。とても古い立て札に、龍神ノ瀧。「瀧で目を洗えば先を見通せる力を持つ」と書かれていた。

 ご利益があるように目を洗いました。

 元嫁にも目を洗った方が良いと勧めたのだが、冷たすぎるし寒いよ。仕方なく車に乗り込み帰宅。

十数年後

 約十年前、目を洗った龍神の瀧の夢をみた。

 悲しそうに、その場から龍が飛び立つ夢。

 遠い所に立っている私と目を合わせた瞬間、広大な空に舞い上がり天に上る。

 「元気にしているか?」と言われた気がした。

 何気に夢が気になり元嫁に夢の話をしたが、龍神の瀧の事は覚えていない。(仕方ないね、目を洗っていないのだから)

 呼ばれたと思った。

 大きい車に乗り換えたばかりだった私は、慣らし運転を理由にして、子供達にも龍神に会ってくると伝え、龍神の瀧を目指した。

 途中から記憶にある過去の道とは違う。何かがおかしい?カーナビも途中から道の無い所を指している。温泉街の近くに来ると片田舎に似合わない真新しい道路が続く。

 走り続けると昔見た旧道に入り懐かしさを思い出しながら、過去に泊った温泉宿に着く。

 そこには老舗旅館も廃墟となっていて、むなしい時間の経過が私の過去の記憶と現在を結びつける。道中に龍神の瀧は見つけられなかった。

 間違いかな?片田舎の温泉地だ、私が道を間違ったに違いない。もっと先に進むが、寂れた温泉地はすぐに終わってしまう。

 Uターンして小さな民宿の前に地元の初老の男性が居た。車を降りて、龍神の瀧はどこにあるかを聞いた。

 「そんなもん、ね~????何言ってんだ??」だったが、十数年前に○○旅館に泊まり山道に小さな瀧があったと思うのですが、と説明すると。

 「お~、あの路を通った事があるのか?」十年前からダムの工事で通行止め。新しい橋が架かるまでは通行止めと言っても地元の人は通っていたけどな。

 そして○○日に完全封鎖したよ。その道はもう完全通行止め。川沿いをまっすぐに行って左の橋に続くだろ?その橋が新しいダムのために作った道だ。

 橋の少し手前が元の道の入り口だけと壁を作って封鎖したから入れないし山肌削ったから道は削られて無いよ。

 「ありがとうございました」

 龍神の瀧が見つからなかった。道が無いのだから仕方がない。車を走らせながら、完全通行止めになった日が「私の夢に龍神が現れた日だった」と気が付く。

 新しい橋を渡り、すぐに新設ダムで整備された駐車場やお土産屋、吊り橋などが設置されている公共の場所が出来ていた。

 ナビを見ると旧道が示されており、川の向こう岸あたりが龍神の瀧があった場所だと直感的に思った。公共の駐車場に車を止めて、川の対岸に立つ。

 川の側面は山肌を削り、碁盤工事の跡がある。そこに旧道は見当たらない。

 手を合わせ、挨拶をして帰宅することに。施設には、地元農家の野菜が売っていたので大根や葉物野菜を少し多めに買い物をして帰宅した。

 家に戻り、元嫁に龍神の瀧がダムで沈んでいたことを伝えたが、ピンと来ていないらしい。長男と長女はその話を聞いていて、龍神と会えなくてパパ、大丈夫?キャッキャとはしゃぎ、龍神は傍にいるよって言われた。

 大丈夫だよ、挨拶して来たから。美味しそうな大根と野菜が手に入ったから、貴方達が食べたら龍神が見守ってくれると思うよ、「うん、明日からいっぱい食べる」「美味しそうだね」と息子と娘。

 長距離の運転で疲れた。明日の朝が早いため、就寝。

 夜中に地震を感じ起きた、ニュース速報で震源地がダムの近くだったので本当にびっくり。東京で震度は観測されていない、揺れは無かったのになぜか私だけが地震を感じた。

 あの時感じた地震は「地から龍神が飛び立った」ものだと思いたい。

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