![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/42916534/rectangle_large_type_2_319357e7f1bad97ab9a4d5322aa95674.jpg?width=800)
千葉ロッテの若き4番 安田尚憲はなぜ伸び悩んでいるのか〜データとフォームから考察〜
はじめまして、てつやと申します。現在は病院勤務の理学療法士です。
スポーツ、特に野球のフォーム分析を中心に記事を書いていこうと思います。
一人でも多くの人に読み、理解してもらえるような文章を心がけますので宜しくおねがいします。
本日はロッテの若き4番、安田選手についてです。
今年3年目で本格的なデビューを飾り、苦しみながらも4番で出場を続けCSではホームランも放ちました。ロッテファンに留まらず日本球界の宝と認識されていますが、同世代にはヤクルト村上選手もおり若手としては上々ですが、正直期待値からすると成績は物足りなく映ることは否定できません。
そんな安田選手のバッティングについてデータとフォームから考察していこうと思います。
なおデータについては「データで楽しむプロ野球」様を参考にさせていただいてきます。
また写真は球場で撮った自分の写真を使用しています。
打撃成績
まずは本年の主要な打撃成績から
打率: .221 本塁打:6 打点:54 出塁率: .326 長打率: .321
さていかがでしょうか。
私の印象としては、履正社高校での印象があるので打率はともかく本塁打を含めた長打率が物足りなく映ってしまいます。
一方で出塁率は打率からすると大したもので選球眼は長所と言っていいのではないかと思います。実際、ボール球見極め率は82.9%(打率の最も近い西武山川選手は76.83%、最優秀出塁率の日ハム近藤選手が89.19%)となっており、安田選手のストロングポイントと思われます。
ここから考えられる安田選手の伸びしろは
・ストライクゾーンのコンタクト率
・長打力
この2点の成長で成績はグッと向上すると思われます。
今年より成長するためにはどうすればよいかバッティングフォームから考察して生きたと思います。
バッティングフォーム考察
考察していこうと思いますが、解剖学的な専門用語は(カッコ内)に書いていますので、そんなのどうでも良いよという方は飛ばしながらお読み下さい。
①構え
元々高校時代よりオープンで構える選手でしたが、最近は右あしは左あしと並行〜ややオープンで体の開かないよう意識が感じられます。
気になる点は左肩です。脇を開いて懐を大きく使うイメージだと思いますが、右肩と比べ左肩が少し上がっています。
この肩に力が入っている状態(肩甲帯を肩甲挙筋や僧帽筋で挙上・三角筋で外転)は肩甲帯の動きを制限してしてしまい、ダウンスイングの誘発や最後のヘッドを立てる動作を阻害してしまうなど後の動作に影響を及ぼしてしまいます。この点は後ほどスイングのところで解説します。
改善点
・バットの重みを利用してこの原理で脇を開く(上腕内旋で肩甲帯を外転させる)
・ヒッチで肩甲帯を柔らかく使う(前腕回内外)
②テイクバック
構えでは足の親指側で地面を踏み(リスフラン関節回内)、左あしの方は脱力し良い状態でしたがタメを作る際に体を軸足にスライドさせ膝で踏ん張る形となってしまっています。
このタメでは地面からの力が後方に逃げてしまいスイングに伝わりにくくなります。また、膝で踏ん張る(大腿四頭筋の遠心性収縮)ことで骨盤が開きやすいです。
このフェーズで力のロスがあるとパワーを出すためにもも〜骨盤の急激なひねり動作(大腿内旋・骨盤回旋)が必要となり筋損傷(恥骨筋、内転筋etc...)のリスクも大きくなります。
改善点
・タメの際に軸足より体を後方にスライドさせない
・膝で踏ん張らず、内ももで踏ん張りながら前方へ体スライドさせる(大内転筋の遠心性収縮)
③踏み込み
`割り`と言われるフェーズですが安田選手は体が開きやすい癖を自覚しているためか、親指から接地し右足首で開きを抑えている印象です。しかしこの着き方をすることで、本来突っ張り棒の様な役割をするべきの右あしですが膝が曲がる運動が働いてしまいます。(足関節回内での接地により運動連鎖で下腿内旋≒膝屈曲)膝関節は不安定な状態となるため、抑えるために股関節や体幹部の筋に大きな負担がかかり、不安定な右あしでは力の伝達もロスが生まれます。また、筋損傷や関節周囲の組織故障のリスクになり兼ねません。
改善点
・まずは大前提としてテイクバックまでの改善による左骨盤が開くのを抑制する
その後、小指側かつややつま先は投手よりに接地する(足関節回外で接地し足関節は締まりの肢位とする)
④スイング
ここでは2点気になる点があります。
まず1点目は左脇の閉じ方です。一般的にスイングは「バットは脇を締めてボールは上から叩く」と言われていますがこの安田選手の打ち方はこの昔からの言葉が間違った意味で伝わった典型の形だと思います。
スイング開始時点で脇を閉めるのは間違っていないのですがここでトップが落ちてしまっているのが問題です。これではヘッドが下がりダウンスイングとなりやすいです。
安田選手の場合は、構えの際に肩甲帯の動きを制限してしまっていることでスイング時に脇が開きやすいのでしょうか。その癖を抑えるためにスイング開始時にこのような脇の締め方となっていると考えられます。
意識しすぎたがゆえの結果だと思われます。
またダウンスイングになるのを防ぐため、結果的にアッパースイングに近いスイングになっています。スイングがアッパーになってしまうとミートポイントがレベルスイングに比べ小さくなりミートがしづらく、ボールへのスピンもかからないため打球が上がりにくくなってしまいます。長打率や本塁打が向上しないのはこの点が大きいと思われます。
2点目は左骨盤が開いてしまっていることです。これはテイクバックの時点でのタメ方で骨盤が開きやすくなってしまった結果だと思います。左骨盤=体が開くと体が投手寄りに突っ込み変化球への対応がしにくいことや、スイング軌道は投手よりにシフトするため結果として奥行きのミートポイントが狭くなってしまうことが問題となります。
改善点
・構え=肩甲帯の使い方の改善
・テイクバックでは膝ではなく内腿(大内転筋)でのタメをつくる
まとめ
ここまで欠点ばかり指摘しこいつアンチだろと思った方もいらっしゃると思うので、訂正させていただきたいのですが、大前提ポテンシャルは申し分なく将来日本の4番候補になれると筆者自身は思っております。
理由としてはらエース級に強いこと(日ハム有原投手からは6割、楽天則本選手からは5割、更にSB千賀投手よりCSでは値千金の本塁打)が挙げられます。データ上では速球を苦手としていますが球界を代表する速球派の投手が多く、私としてはおそらく変化球の苦手意識からこのデータにつながっていると考えられます。速い球が打てるというのはプロにとって1番の才能です。
また、フォームの意識しているであろうポイントからみても非常に真面目で勤勉な選手であると思うからです。だからこそもどかしいのです。
まとめとして、タイトルはなぜ伸び悩んでいるのかとさせていただいたので、その私なりの答えとしては・・・
改善点
・構えでの脱力
肩甲帯から動かす意識ではなくコックなどを使い手首や前腕を意識し肩甲骨は柔軟性を保つ。(手関節・前腕からの運動連鎖で肩甲帯の内外転を誘導する)
・タメの作り方
体を構えの位置よりも捕手寄りにシフトさせない。膝ではなく内ももを意識。(大内転筋の遠心性収縮で骨盤回旋と大腿外旋を制動)
・トップの位置
絶対に脇を閉める瞬間に閉めない!
かなり体が開いてしまう癖を抑えようと四苦八苦している印象ですが、体が開いてしまうのは結果で、それよりも前の動作の改善が必要だと思います。
上記の改善ができれば
・レベルスイング
コンタクト率の改善
・左手・肩甲骨での押し込み
長打力=打球角度・ボールへのスピン向上
・地面〜体〜バットへの力の伝わり方改善
長打力向上
・筋や関節、靭帯等への怪我の予防
が図れると思います。
来シーズンは名実ともにまずはロッテの4番となることを期待しております。
以上となります。長々となってしまい申し訳ありません。お読みいただきありがとうございました。今後も野球の動作解析等中心に書いていきたいと思いますので宜しくおねがいします。ご不明な点や、間違いなどありましたらご指摘の方お願いいたします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?