古代ローマ滅亡のはじまりと難民の話

 まずローマ帝国があり、そしてフン族が現れる。
 フン族に圧迫されて、帝国の周縁にいたゴート族をはじめとした蛮族と呼ばれる人々が難民化する。
 ゴートは最初、武装難民として国境を突破するのだが、それはまあ重要ではない。

 このころ、古来からのローマ市民はすっかり平和ボケしていた。
 建国の精神を忘れ、怠惰とぜいたくにふけり、戦う能力と覚悟をうしなっていた(みたいなことをギボンは書いている)。
 
 ローマ辺境に入り込んだ難民集団は、「農地と耕作の権利をあたえてくれるなら、辺境の防衛に尽くす」として、辺境に住む権利を求めた。
 ローマの官僚たちは、むしろこれを喜んだという。
 ローマ帝国衰亡史から引用すると、こうだ。

「民生総督や将軍など、これら隷臣どもは(中略)危険なものであると知りながらこれを無視、あるいはこれに気づかないふりをしそれより、武名高い異邦人の大軍がはるばるやってきたことを、幸運の女神の配慮としてたたえた。それは、新たな属州民から、毎年兵役の代償として、莫大な黄金が帝室財産に入るとの思惑からであった」

 さて、これまでの話で何かを連想しないだろうか。
 歴史は特定のパターンを繰り返している。
 我々はびっくりするほどそれを学んでいない。科学や技術は進歩しても、人間自体は200万年かわらぬホモ・サピエンスのままで、進歩などしていない。
 
 このとき辺境に入植したゴート族の中からアラリック王があらわれ、ローマ市を劫略する。
 同じことがまた起こるだろう。
 
 
 

 

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