汚れた土をどうやって調べればいい?
「私の所有するあの土地は汚染されていないだろうか・・・大丈夫かな?」
かつてはごく限られた業界でのみ知られていましたが、東京の豊洲問題や大阪の森友学園問題で一気に知名度を上げた感のある土壌汚染問題。
土壌汚染は、土地を所有する者や土地を使用していた者にとっては頭の痛い問題です。例えば・・
毎月賃借料と引き換えに、事業所に貸した土地の土壌が汚染されていたら・・・
先祖代々から所有している土地が知らぬ間に汚染されていたら・・・
土地の所有者はきっと考えたくもないでしょう。しかし、現実として土地に汚染の可能性は存在し、そしてその土地の汚染状況が判明する調査こそが土壌汚染調査です。
土壌汚染対策法という法律で定められた調査手法であるにも関わらず様々な問題を孕んでいる土壌汚染調査、しかし歴とした法律で認められた調査手法であり、この調査の結果如何で、まさに天国と地獄に分かれることになる極めて重要な調査です。
今回は、そんな土壌汚染調査についてお話いたします。
土壌汚染調査とは
土壌汚染への認知不足が生み出す悲劇
土壌汚染調査とは、読んで字のごとくですが、その土地の土壌が汚染されているか否かの調査のことです。
実はこの土壌汚染調査は、河川水や大気の公害のように長い歴史を持っているわけではありません。
歴史は極めて浅く、土壌汚染調査は土壌汚染対策法の制定から始まると言われています。土壌汚染対策法は平成15年に制定、つまり、約20年の歴史しかないのです。
先ほども言ったように、土壌汚染対策法自体も多くの問題を孕んでおり、日本の国土を土壌汚染から守るにはあまりにも役不足と言わざるを得ません。
しかしそれ以上の問題が、土壌汚染調査が浅い歴史しか持たないゆえの認知の遅れです。土壌汚染という重大問題に対する意識の低下は、極めて大きな悲劇を生み出すことがあるのです。
土壌汚染調査の重要性
さて、土壌汚染の認識不足がどのような悲劇を招くか。その事例を以下に紹介しましょう。
大阪アメニティーパークの土壌・地下水汚染問題
上記事件は、土壌汚染対策法の制定前であるため、土壌汚染対策法の適用はされず、宅建業法での書類送検がされました。
現在は、同地に地下水検査のための観測井戸が設置され、定期的に地下水の観測が実施されています。
仮に当時土壌汚染対策法が制定されていたならばどうなっていたか。
着工前に法に基づいた土壌汚染調査が実施されていたはずであり、法に基づいた土壌汚染対策によりこのような事態は避けることができたはずです。
土壌汚染調査手法
では、土壌汚染調査とはどんな調査か。土壌汚染対策法に基づく調査の考え方をお話いたします。
まず、基本的に土壌汚染調査は、土地履歴調査という資料調査からスタートします。登記簿謄本や住宅地図、空中写真、ヒアリングから調査対象地がどのような使われ方をしたか、それによる土壌汚染の可能性を調べます。
調査の結果、土壌汚染の可能性が少しでも疑われるようならば、実際に土の採取を行なう調査へと移り、そうでなければその土地の調査はそこで終了、晴れて土壌汚染の可能性がない土地として認定されます。
土地履歴調査の結果、土壌汚染が疑われた場合、実際にその土地の土壌を採取することになりますが、もちろんやみくもにその土地の土壌を採取すれば良いわけではありません。
まず、調査対象地全体を10m×10mの格子に分け、それぞれを単位区画として設定します。この単位区画が基本的に土壌汚染調査を行なう上での最小区画となり、単位区画内で土壌汚染が確認されれば、その単位区画内の土壌全体が汚染されているとみなされます。
・・とここまでは調査対象地の表層土壌での話。表層での汚染範囲が決定すれば、次は単位区画ごとにどの深度まで汚染が浸透しているかを確認するための深度調査を実施することになります。
単位区画内の1箇所で地下10mまでのボーリング調査を実施、1mごとに土壌試料を採取し、その土壌を採取、汚染の浸透している深さを確認します。
さて、ここで地質学を少しでも学んだことがある人ならば、この調査の考え方に疑問を持つはずです。
「汚染って地面から垂直に浸透していくの?」
実は、この考え方こそが現行の土壌汚染対策法の最大の問題点であり、全国各地で発生している土壌汚染問題の元凶であると言ってもいいでしょう。
土壌汚染調査を実施するきっかけ
どのような公害でも、普段の生活の中で何らかの形で危険信号が発せられることはあります。
例えば、大気汚染ならば普段は感じることがない異様な臭気を感じることで察知し、水質汚濁ならば河川水の色や臭気、魚の死骸などで察知することができます。
早期発見で、公害の拡散は最小限で食い止めることができ、人への健康被害も未然に防ぐことができるはずです。
ところが、土壌汚染は普段目にすることも臭うことも感じることもない地面の下の公害であり、私たちの普段の生活の中で土壌汚染の危険信号を察知することはほぼ不可能と言わざるを得ません。
先ほどのOAPの事例の中で、地下駐車場の脇の地下水から重金属汚染が確認されたと紹介しました。
これも危険信号といえば危険信号ですが、汚染された地下水が地面に湧き出てくるという事態は、もはや土壌汚染を未然に防ぐといったものではありません。
ここまでの事態はもはや危険信号ではなく手遅れ。土壌汚染としては末期状態を示しているのです。
土壌汚染が地面にまで影響を及ぼす前に危険信号を察知する必要があり、それによって調査対象地の土壌汚染状態を知り、その後の最善策を考えるしかないのです。
それにはどうすれば良いのか。
もし、自分の所有する土地を販売する予定があるならば、まずはその土地について土地履歴調査を実施すべきだと考えます。
仮に土地履歴調査で汚染なしと判断されたならば、めでたく汚染なしとのお墨付きを得ることができ、汚染の可能性があると判断されたとしてもその後の対応策を練ることができます。
土壌汚染調査は義務か
基本的に土壌汚染対策法で規定された手法で調査を行なう必要があります。また、調査は誰が実施しても良いわけではありません。土壌汚染調査の専門業者として認定された指定調査機関が行ない、またそこに所属する土壌汚染調査技術管理者がその調査内容について責任を持つ必要があります。
そして、法により土壌汚染調査が義務付けられている土地も存在します。以下にその条件を記します。
第三条による調査 : 有害物質使用特定施設の使用履歴がある土地
第四条による調査 : 調査対象地の敷地面積が3000㎡以上の土地
第五条による調査 : 特定有害物質による健康被害の恐れがある土地
上記に該当しない土地であっても自主調査という形での調査が推奨されています。無論、調査結果は法的効力を持つことになります。
土壌汚染調査にかかる費用
調査費用については一概には言えません。調査対象地の土地履歴調査結果次第で、大きく変動するためです。
調査対象地の敷地面積が100m×100mであったと仮定し、土地履歴調査の結果ごとの調査費用を算出してみましょう。
土地履歴調査の結果・・・
土壌汚染なし : 50万円〜100万円(土地履歴調査費用のみ)土壌汚染あり(表層のみ) : 400万円〜1000万円(表層土壌調査含む)土壌汚染あり(表層、深度): 1000万円以上(表層土壌調査、深度調査含む)
上記はあくまでも概算であり、場合によっては上記以上の費用がかかる場合もあります。土地履歴調査結果から行政の意見を参考にし、慎重に算出する必要があるでしょう。
まとめ
典型7公害の1つに数えられる土壌汚染。今から15年前に施行された土壌汚染対策法は、日本の国土そのものを汚す土壌汚染という極めて重大な公害の認知に大きな役割を果たしました。
しかし、同時に多くの問題も孕んでいる同法はまだまだ発展途上、特に土壌汚染調査手法の根本的な考え方に大きな問題があります。
敷地境界や単位区画を基準とした土壌汚染範囲の確定がその最大の問題点であり、一刻も早くそういった考え方を改め、地層や地下水の流れという地質学に基づいた土壌汚染調査手法を採用すべきであると考えます。
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