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簡易的で安価な土壌汚染調査について

「大丈夫だとは思うが、一応土壌汚染調査をやっておきたい」
「業者に頼むと費用が高くなるので、自分たちで簡単に汚染状況を確認したい」

近年、そんな要望が多くあると聞きます。確かに、指定調査機関に調査を依頼すると概ね50万円程度の費用がかかります。費用は土地の面積にもよりますが。

事業所ならまだしも一般家庭はなかなかそんな費用を出すことなど出来ません。

とはいえ、所有する土地の価値を図る上で土壌汚染調査は極めて重要、汚染原因に心当たりがあるならばなおさらです。

もちろん心配ならば、ちゃんとした土壌汚染調査を実施することが理想です。しかし、費用等の面で現実的ではないのです。

ではどうすればいいのか。

実は、指定調査機関に依頼せずとも、簡易的ではあるにせよ土壌汚染調査を実施する手法があります。

今回はそんな簡易土壌汚染調査についてお話いたします。

セルフ的簡易土壌汚染調査

以前にもお話したと思いますが、土壌汚染調査はフェーズ1からフェーズ3までの3段階からなります。

フェーズ1は土地に関する資料調査であり、フェーズ2からは実際の土壌試料を採取する調査、そしてフェーズ3は専用の重機を使用しての簡易ボーリング調査の3フェーズです。

では、指定調査機関を頼らずにできる調査はどの調査か。

フェーズ1では、住宅地図や登記簿謄本のような公的資料から土地の汚染状況について調査するものであり、指定調査機関でなくとも資料の収集は可能です。

ただし、資料からの情報に基づいた考察が必要であり、これを自分たちだけで実施するのはほぼ不可能でしょう。

では、フェーズ2はどうか。実は自分たちでできる簡易土壌汚染調査は、このフェーズ2に該当します。

フェーズ2は表層土壌汚染調査であり、土壌汚染対策法で規定される表層とは、地上から50cmまでの深さを示します。その範囲の土壌を均等に採取することが、法で規定されています。

地上から50cmまでの掘削は容易ではありません。ただし、そこまで掘らずとも土壌汚染の有無を確認する程度ならば、地上から20cmほど掘削できれば十分です。

あとフェーズ3ですが、これは地上から10m下まで掘削する調査であり、当然専門業者でないと不可能です。

簡易調査の種類について

簡易土壌汚染調査の現実

さて簡易土壌汚染調査、最初から最後まで全て自分たちだけで出来ますが、残念ながらある一部の工程については、どうしても業者に依頼する必要があります。

土壌試料の採取は園芸用のスコップだけでも出来ないことはありません。しかし、採取した土壌が汚染されているか否かを調べなくてならないのです。つまり、化学薬品や分析機器を用いた土壌分析ですね。

いくら土壌を採取したところで分析しなくてはなんの意味もありません。

こればっかりは自分で実施することは不可能で、化学分析を行なう業者にお任せするしかないのです。当然、それなりの費用は発生します。

簡易土壌汚染調査の種類

もし、極力費用をかけずに実施したいならば、最小限に抑える方法はあります。

土壌汚染対策法で規定される特定有害物質は26種類であり、これらの物質が土壌から検出されなければ、もしくは検出されたとしても基準値以下であればいいのです。

では26種類全てについて調べなくてはならないのか、というと決してそんなことはありません。

いくら土壌汚染の可能性があるとはいえ、26種類全てが基準値を上回るほどの土壌汚染は極めて稀です。

つまり、疑わしい物質に絞って土壌分析を行えばいいのです。それならば分析にかかる費用はかなり抑えることができます。

土壌汚染対策法で規定される特26種類の特定有害物質は、第一種、第二種、第三種に分けられます。

第一種は12種類の揮発性有機化合物であり、これに該当する物質を使用する事業所はある程度限定されます。まして一般家庭で使用されることはほとんどありません。つまり、26種類中12種類を除くことができるのです。

また、第三種は5種類の農薬等の物質であり、これらの物質を使用する業種も限定されます。これで17種類を除くことができます。

さて、残りは第二種のみであり、第二種は9種類からなる重金属類の特定有害物質です。

9種類とは、カドミウム、六価クロム、水銀、鉛、ヒ素、セレン、フッ素、ホウ素、シアン化合物であり、この中から特に疑わしい物質について分析依頼すればいいのです。

自分でできる土壌分析とは

先ほど私は、土壌分析は業者に依頼するしかない、と言いました。しかし、ある分析キットを使用すれば、簡易ながらも自分で汚染の有無を調べることが出来るのです。

最近では、土壌分析にかかる時間を短縮しようとすべく各社が様々な土壌分析の簡易検査方法を開発しています。今回はそんな中の1つである「パックテスト」をご紹介します。

「パックテスト」とは、長さ5cmほどの透明プラスチックの容器の中に試料溶液を注入し、容器の中に仕込まれた特殊な試薬と混ぜることで溶液の色の変化を見る試験です。

溶液に特定有害物質が含まれていれば、溶液の色が変化するわけです。

通常は河川水や地下水の簡易検査として使用されますが、土壌にも応用できます。

土壌の場合、土壌試料と水を混ぜて試料溶液を作ることでパックテストが可能です。

費用

簡易土壌汚染調査の場合、試料採取にかかる費用は考慮に入れません。もちろん費用が発生する場合も考えられますが、ここでは業者に委託せず自分で土壌試料採取を実施することとし、試料採取に費用は発生しないと仮定します。

となると、簡易土壌汚染調査で発生する費用は、土壌分析にかかる費用のみということになります。以下に、土壌分析費の例を紹介いたします。

1項目のみの分析・・・・・・・・・・・・2500円〜1万円/1検体
第二種特定有害物質・・・・・・・・・・・5万円〜8万円/1検体
第一種、第二種特定有害物質・・・・・・・10万円〜12万円/1検体
第一種、第二種、第三種特定有害物質・・・12万円〜15万円/1検体
パックテスト・・・・・・・・・・・・・・約3000円/10検体

土壌汚染調査一式を指定調査機関に依頼すると、50万円〜100万円の費用が発生することを考えると非常にリーズナブルと言えます。特にパックテストは非常に安価です。うまく使いこなせば、より手軽に調査が可能です。

通常調査との違いについて

簡易土壌汚染調査と通常調査との違い、これこそ簡易土壌汚染調査の最大の欠点と言えるでしょう。

以前もお話したことがあるように、土壌汚染調査の手法は土壌汚染対策法で規定されています。その手法に従って実施することが義務付けられているのです。

通常調査の手法については、他の記事でもお話した通り。土木、測量、化学、法律等の知己が必要であり、そもそも指定調査機関の指定を受けている業者、そして土壌汚染調査技術管理者が実施する必要があります。

簡易土壌汚染調査は、そういった原則の外にある手法なのです。簡易土壌汚染調査で汚染が確認されなかったとしても、そしてそれを報告書にまとめて行政に提出しても、土壌汚染調査を実施したことの証明にはなりません。

では、簡易土壌汚染調査がなぜ実施されるのか。

簡易土壌汚染調査が実施される状況は主に2つです。

●汚染されていないはずだが、簡単に調査し安心材料としたい。
●汚染土壌の浄化工事現場で、浄化されたことをその場ですぐに確認したい。

豊洲問題やモリカケ問題を皮切りに、土壌汚染という新たな土地の不安材料が叫ばれて、事業所はもちろんのこと一般家庭からも不安の声が聞かれ始めています。

かといって、いちいち業者を呼ぶと時間もお金もかかってしまう・・・そんな状況において簡易土壌汚染調査のニーズが徐々に高まりつつあります。

先ほども言ったように、法の規定を無視した調査になるので、仮に汚染なしという結果が出ても公に認められるわけではありません。

ただ、ひとまずは安心できるというわけですね。

また、汚染土壌の浄化工事現場では、実はこの簡易土壌汚染調査は頻繁に利用されています。工事期間の短縮という効果が期待できるためです。

通常、土壌分析を業者に依頼した場合、分析結果が出るまで1週間から2週間かかります。工事現場では、浄化の確認のために1地点だけでも数十回もの分析を要することがあり、そのたびに分析結果を待っていては工事に遅れが生じてしまいます。

その問題を解決するために、現場ですぐに結果が判明する簡易土壌汚染調査が必要になるのです。先ほどご紹介した「パックテスト」が多用されることもあります。

簡易土壌汚染調査は、調査結果が公に認められないという欠点はあるものの、使い方次第では非常に有効に働くものと言っていいでしょう。

まとめ

「調査にあまり費用をかけたくはない。できれば、より手軽に調査したい」

ごもっともです。誰だって調査に多額な費用をかけたくはありません。しかし、土壌汚染対策法という法律がある以上は、土壌汚染という現実から逃れることも不可能なのです。

本来ならば法の規定に従った調査を実施すべきなのはいうまでもありません。

しかし、なかなか調査に多額の費用をかけることはできない。そこで登場したのが、簡易土壌汚染調査なのです。

通常調査と違って調査結果が公に認められないという欠点はあるものの、要するに使い方次第です。

法で認められた調査ではないものの、決していい加減な調査でもありません。欠点を承知した上で、上手に利用すれば非常に有効な手段とすることができます。

現に多くの企業が、簡易土壌汚染調査の新たな手法について日夜研究を続けているのですから。

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