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グリーンラベルと、思い込みからの解放。

すごく小さなことなんだけど、最近ハッとしたことがあった。

おれは自炊が趣味だ。
いつも漫画を描くのもそっちのけで、せっせと料理を作っては、せっせと写真と撮ってそれを加工し、せっせとSNSにあげている。

ちょっと前に、フォロワーの森さん(仮名)がチヂミを作ってTwitterに上げていて、これがめちゃくちゃ美味しそうだった。

「どうやって作るんですか?」とコメントしてみたら、森さんは親切に作り方を教えてくれた。

しばらく経ったある日、その森さん直伝のチヂミを作って、いつも通りSNSにアップした。
この日のメニューはチヂミの他に適当なサラダとキムチと、そしてグリーンラベルだった。

昔、志村けんがCMをやってた「イインダヨ!グリーンダヨ!」のビールだ。
おれはグリーンラベルを良く飲む。

次の日の朝、森さんがコメントをくれた。
「グリーンラベル飲んでる望月さんのことは信用してる。おいしい。」

ちょっと、これがピンとこなかったのだ。
いやむしろ、それなりに小さくない違和感があった。

なぜならおれがグリーンラベルをよく飲むのは、糖質が70%オフなのと、値段が安いという理由からだったからだ。

カロリーを抑えたい時か、お金がない時。
つまりおれにとってグリーンラベルは「何かを我慢する時」に飲むものだった。

おれは森さんに返信した。
「ホントは黒ラベルが飲みたい…」

正直、グリーンラベルはコクとか香りが弱くて、ちょっと物足りない。

それに比べ黒ラベルのあの、どっしりくる麦の旨味と、幸せを感じるくらいクリーミーな泡の喉越し。
でもフリーターのおれにはどちらかというと高級品だし、カロリーも気になる。

さらに森さんはコメントを返してきてくれた。
「ええ!あのシンハーみたいなあっさり味がいいんじゃん〜!!!」

頭をガーンと打たれたような衝撃が走った。
完全に、自分の小さくツルツルの脳みそ(見たことはないがおそらく)の発想の外にある発想だった。

シンハーは、タイでよく飲まれるビールで、軽くて爽やかな味わいのやつだ。

森さんは何の気無しに、「グリーンラベルが美味しくて、飲みたいから飲んでいた」のだ。
衝撃を受けつつ、ちょっと感動してしまった。

確かにおれも東南アジアの方の軽いビールはすっきりしていてとても好きだ。
言われてみたら、たしかにグリーンラベルもそんな味わいかもしれない。

ニンニクとスパイスの効いたタイ料理に、軽やかなグリーンラベル。
想像してみるとかなり、うまそうじゃないか。

グリーンラベルも悪くない。
そんな気がしてきた。




森さんの何気ない言葉で、小さな世界がぐるんとひっくり返った。

世の中は、思い込みとか常識でいっぱいだ。
小さいことから大きなことまで。

特に大人になってからの思い込みはタチが悪い。
思い込みが進むと思考停止になる。

思考停止になると、今度は外の意見を無いものだと扱ってしまう。
それはせっかくの美味しいビールを我慢して飲むことになったり、大切な人を傷つけてしまったり、もっと大きな規模の争いの原因になるかもしれない。

でもそれをひっくり返す時に、案外強い言葉なんて必要ないのかもしれない。
いつでも受け手の問題だ。

世界をひっくり返す小さな言葉はたぶんいつでも自分の近くにある。
こういう言葉を受け取る心の余裕はなるべくいつでも持っておきたいなと思った。

黒ラベルもやっぱり美味しいけど、今夜はグリーンラベルにしてみよう。


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