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「本気」は気持ちのことじゃない。

1年前。
社会人2年目、24歳だったおれは勤め先の会社をやめて、漫画を持ち込みに行った。
「本気」で漫画家になろうと思った。

漫画を描きあげたのはそれがはじめてだったし、まだ持ち込みに一度も行ったこともない状態だった。
お母さんにはめちゃめちゃ止められ、帰省したときには久しぶりに大ゲンカした。

今考えると、そりゃそうだと思うが、自分はそれをふり切って会社を辞めた。
その時の自分はそうするしかなかった。

学生を卒業して社会人になったが、何もない自分に相当焦っていた。

おれも一応社会人になってはいたが、周りの友達に置いてかれて、どんどん独りになって行くような気分だった。
みんなは自分と違ってまっすぐに社会人の道をぐんぐん進んでいるように見えた。

仕事をやめたことは自分にとって覚悟のつもりだった。
仕事を辞めて、後が無くなれば自分は奮い立って「本気」になると思った。

1年後にはデビューこそ出来なかったとしても大きな成長をしていると自分に期待していた。
でも、それは半分正解で、半分間違っていた。

1年前、仕事をしながら初めて描いた原稿は、コルクの佐渡島さんに持ち込みに行った。

コルクは出版社ではなく、作家のエージェント会社である。
そんで、佐渡島さんは、「ドラゴン桜」、「働きマン」、「宇宙兄弟」などなど、ヒット作品を手掛けて来た凄腕の編集者である。

当時プライベートアカウントで(マンガ用アカウントなんて持ってなかった。)ダメ元でTwitterのDMで連絡すると、奇跡的に返事が返って来た。
スケジュールを調整していただき2週間後くらいに実際に持ち込みに行いった。

当日。
佐渡島さんは、原稿をリズムカルにめくっていったが、瞳は「じ〜」と漫画の奥の方を見つめていた。
そしてそれを読み終え、一言、「いいね。」と言ってくれた。

「漫画を通して、一応、こういう話って言える。」と褒めて貰い、その後はいくつかのダメ出しをされた。
はじめての経験に興奮したり、逆に「へ〜、持ち込みってこんな感じなのか〜。」と他人ごとのように思ったり。

そんなこんなで初持ち込みは無事に終わった。
佐渡島さんはコルクの玄関口まで身送ってくれて「今日はありがとう。また来てね。」と言った。

コルクを出た時は、エレベーターではなく階段を使って下まで降りた。
頭も足も感覚がフワフワしていて転びそうになるのをなんとかバランスを取りながら降りた。

おれは家に帰り、余韻に浸るのも束の間、漫画用のTwitterアカウントをすぐに作った。
佐渡島さんに「これからは漫画家もSNSNの時代!すぐアカウント作って漫画上げよう!目指せフォロワー2000人!」と言われたからだ。

「おれなんかに2000人なんて無理だよ。」と思いながらも言われた通りにアカウントを作って、漫画を上げた。
「初めて漫画を持ち込みに行ったその日のこと」をエッセイ漫画にした。

Twitterをはじめたてにしては、ビックリするほど反応して貰えたので、嬉しくなったおれはそのまま12話まで書き上げた。

ちなみにその当時、おれはiPadもスキャナーも持っていなかったので、原稿用紙にマンガを描き、写真を撮って上げていた。
(そんなやつおれ以外に見たことがないぞ。)

そこからは、漫画家さんや編集者の知り合いが増えたり、漫画を勉強する「コルクラボ漫画専科」という講座を受けたり。。。
環境は一応ガラリと変わった。これが半分の正解。

そしてその「コルクラボ漫画専科」も半年間の講座が終わりひと段落した。

仕事を辞めて、漫画を持ち込みに行ってから1年。
仕事を辞めれば全て変わる。仕事を辞めれば漫画家になれる。

そう思っていた。
確かに、環境は変わったし、成長も少しはしたと思う。

でも「自分が期待したような大きな変化」はハッキリ言って出来なかった。
もっと成長すると思っていた。
もっとたくさん描くと思っていた。

仕事を辞めたのに、本気にはなれなかった。
これがとても大きな半分の間違いだった。

周りの漫画家志望の人たちの方が成長もはやいし、やる気も根性もあった。
「本気」の人がたくさんいた。
おれはなかなかうまくは行かなかった。

仕事を辞めることが覚悟だと思っていたが、それは大きな間違いだった。
今なら分かるが、「未来のがんばであろう自分」に全部責任を押し付けていて、「今現在の自分」のことはないがしろだった。

この1年漫画はそれなりに描いたが、やっぱり「それなりに」だった。
当たり前だけど、漫画を描くことが出来るのは未来の自分ではなくて、今の自分だけだ。

佐渡島さんはいろいろなところで「本気になるのが一番難しい。」と言っている。
これは身に染みて思う。自分にとってもそうだった。

ある時佐渡島さんと、コルクの新人漫画家さんたちがインスタで公開打ち合わせをしていた。
つのだふむさんという新人漫画家が会話の流れで「本気かどうかは行動でしか伝わらないんだよ。」と言っていた。

その時おれは「はっ」とし、何となく視界がひらけた気がした。

なんだ。本気になるのは簡単だったのか思った。
本気と言うのは気持ちのことじゃないんだとその時分かった。

本気というのは「気持ち」ではなく、「行動」のことだった。
それに気づくとちょっと気が楽になる。

気持ちのことだと思っているといつまでも本気にはなれないんだと気付いた。
さらに言えば「おれは本気になるぞ〜!」と「本気」を意識しているうちは「本気」にはなれないということにも気がついた。

だから本当は、覚悟とか気持ちとかはどうでも良いのかもしれない。

でも、おれは覚悟とか気持ちとかがどうしても好きだ。
「がんばる」という言葉も好きだし。周りの人にも「がんばれ」といつも思う。

だからそれは持ち続けたいと思う。
行動を変えるのだ。

1年後の自分にではなく、今の自分に期待しよう。
がんばるぞ今の自分!



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198
26歳です。エッセイと漫画あげます。札幌出身でアイスホッケーをずっとやっていました。オードリーのANN毎週聴いてます。腰痛が痛い。Twitterもやってます👉🏻 http://u0u0.net/6REW
コメント (2)
はじめまして。お母さんの話が心を打たれまして、本気の話も読みました。

脱字が気になったのでお伝えしとこうかと。

「未来のがんばであろう自分」に全部責任を押し付けていて、・・・
(どこと言ったらわかりやすいか分かりませんでした)

未来のがんばるであろう自分、ですかね。

元道産子の共通点もあり、とっても応援したくなりました。
これからも頑張ってくださいね(^^)
やっぱり哲門さんは、BLUE GIANTの登場人物みたいに熱い男ですね!!
最高です。
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