「ペットが調子崩したから、動物病院連れて行っといて!」代理で連れて行く時、ここは押さえておこう。

動物病院に連れて行っておいて!

家族コミュニティーの形が多様化している中、時間は有限であり、イレギュラーな出来事に対しては、総動員での対応が迫られます。ペットも家族の一員になっているとはいえ、主にお世話をしている人は決まっていたり、ある程度の距離を取りつつ”同棲”している人もいます。

動物病院に連れて行ってと頼まれたら連れていかれると思いますが、行った先で困る出来事が生じることがあります。

獣医「今日はどうされましたか」
飼主「ご飯を食べないと聞いています」
獣医「いつからですか、嘔吐や下痢はありますか」
飼主「多分、今朝からかと。嘔吐下痢はわかりません」
獣医「異物を摂取する可能性はありますか」
飼主「どうでしょうか、普段見ていないもので」
獣医「了解しました(情報ないから検査しないとわからないな)」

獣医師の仕事は、人の医療で例えるならば小児科に近いと考えています。
患者ではない第三者が情報を持っており、医師と患者と第3者で協力して治療に向かっていきます。小学生の頃、実家の犬を動物病院に連れて行ったら「普段世話をしている人が連れてこないと診察しないよ」と言われ、なんと横柄なと思った事がありました。時は過ぎ、医療技術の進歩により、飼い主さんからの情報がなくても、ちゃんとした診断や治療につなげる事は多くの場合できます。ただし、その過程は、お話を聞く事で省略できる事もありますし、優先順位は変わってきます。稀な病気の場合は家庭での様子にのみ、診断のキーワードがある場合もあります。

普段お世話をされていない方が動物病院にペットを連れて行く場合の最低限持参していただきたい情報をまとめておきます。先に追記しておきますが、情報がない場合必要な事は検査であり、そこには費用が発生します。より効率的に治療に進むためにも情報は大切です。

初めての動物病院に行く場合の準備

・生年月日 
・ワクチン接種歴 
・駆虫歴 
・既往歴 
・現在治療中の病名、薬種類、投与方法

 年齢により病気の優先順位が変わります。1歳まで、1歳から5−6歳くらいまで、それ以降でかかりやすい病気の種類が変わってきます。
 ワクチン接種に関しても同様、接種しているしていない。間がすごく空いているという状況であると考えないといけない病気が増えます。
 駆虫も同様。
 既往歴に関しては、その子その子で傾向がある事もあり、押さえておきたいところです。お腹壊しやすい子が、お腹壊すのと、めったにお腹壊さない子が発症するのとはアプローチが変わります。
 投薬に関しては、必須事項です。朝飲ませた薬と、診察時投与する薬との相性で体調を崩す事もあります。治療が治療になっていない残念なパターンです。

病気の治療のために必要な準備

・飼い主さん的にどうなったら解決だと思うか
・誰が投薬するか、できる回数、方法
・いつから始まっている症状か
・思い当たるきっかけは
・症状は、軽くなってきているのか、変わらないのか、悪化しているのか
・現在の症状に対する、家庭で行った対処について

 飼い主さんにとってのゴールはとても重要です。医学的なゴールと飼い主さんにとってのゴールが必ずしも一致しないのが動物医療の業界。そこには、想いがあったり、費用的な面だったり、環境的な面であったり。それぞれに合わせた、より良い解決策を一緒に見つける事が大切ですので、飼い主さん的なゴールははっきりと提示していただきたい。
 いざ治療となった際に、投薬の方法を考えます。錠剤をそのまま飲ませられるのか、ご飯に乗せたら一緒に食べるのか、液剤にしたら飲ませやすいのか、そもそも投薬が困難なのか。そのまま口に入れたらパクッと食べます、チュールの混ぜたら食べます、ご飯に混ぜたら食べます、これはお世話している人にしかわからないです。治療の方法に選択肢はあるので、家庭にあった治療計画を立てるにあたり必要な情報です。
 いつから始まっている症状かも大切。今日なのか1週間前なのか1ヶ月前なのか。急性疾患と慢性疾患で完全にアプローチが変わります。急性疾患は、治療先行でOK。慢性疾患は診断先行です。慢性疾患で治療ありきで進むと、うまく行っている間は良いのですが、悪化して行く場合に、診断もつかない治療もうまくいかない、お互いの信頼関係もうまく築けないと泥沼化していきます。だれも得しない世界かもしれません。
 発症のきっかけに関しては、外出したか、他の動物と接したか、変なもの食べたか、食事の変更をしたか、環境の変化があったかをお伺いします。特に異物摂取の可能性は、飼い主さんからのお話が大切です。針飲み込んだ、種丸呑みした、靴下食べました、ひも飲み込みました、おもちゃ見当たりません、油飲みました、中毒起こす可能性のあるもの食べてます、薬の誤飲しましたなど。確実でなくても、可能性として思い当たるなら提示した方が良いです。
 症状の程度、経過に関しても大事です。軽くなってきているのであれば、対症療法で良いかもしれない、変わらずあるいは悪化しているなら、大きな問題が隠れいている可能性があるし、たとえ胃腸炎でも積極的な治療が必要となるかもしれません。
 家庭で行った対処も共有しておきたい情報です。下痢して整腸剤飲ませたのによくならないから病院きたのに整腸剤出されて帰宅。治りません。自宅での日ごろのケアーに力を入れられているなら、そこからの話し合いにしていきたいところです。一度やった事は繰り返す必要はないと考えます。

まとめ

たとえ代理であっても持って行った方がお互いに情報があります。
【飼い主さんからの情報不足で治療したら体調崩しても、怒られるの獣医さん】
獣医師あるあるですが、情報次第でより良くなりますので、ご協力お願いします!

追記

獣医師として、調子が悪いという情報のみで連れてこられた動物の診断や治療の流れを書いておきます。実際の現場での流れにそくして専門的に書いています。あまり好まれない表現も含まれるかと思いますので、見たくない方の目に入らないように、ここから先は有料にしています。ご希望の方はどうぞ。

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