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企業は従業員の【家庭マネジメント】をもっと支援していく必要がある

「仕事のパフォーマンスを最大化する 戦略としての家庭マネジメント」(藏本雄一著)を読んだ。

本書は、家庭(主に妻)との関係を円満に保つ意義やそのためのノウハウを紹介するもの。バリバリ家事も育児もやってる今時のインテリ男性というよりは、どちらかというと『家事・育児参画に前向きでなかった夫』に向けた啓発書というポジショニングになる。

家庭マネジメントという考え方は、私も最近注目しており、これから重要なテーマになってくると予想している。

この10年ぐらいの労働供給量は女性の就労者の増加、つまり専業主婦から共働きへという流れによって実現されてきた。1980年と2020年を比較すると、専業主婦世帯と共働き世帯は完全にポジョンが入れ替わっている。これからの人口減少を考えると、社会経済を動かしていくには、今まで以上に女性に労働市場に出てきてもらうことが必要になる。家事や育児で家庭に縛りつけてしまうことは、もはや社会的な損失であると言っていいかもしれない。

このような社会の要請を踏まえると、かつては『専業主婦に任せるもの』と当然視されていた家事・育児分野への男性の関わり方も変化していかなければならない。
かつては【非戦力】あるいは【補助戦力】でしかなかった女性は、今や多くの企業にとって【主戦力】になっている。せっかく育成してきた主戦力が家庭の制約によって戦線離脱することなっては、企業としての損失は計り知れない。人口減少社会にあって社会経済活動を維持していくためには、男性にも家事・育児にコミットしてもらい、分担を適正化することによって男女ともが主戦力であり続けられるようにしていかなければならない。家庭での夫婦の家事・育児の分担分業や家庭マネジメントは、もはや単なる夫婦の問題ではなく、社会の問題になっている。

特に、医療や介護など、休日勤務や夜勤のある業種は、核家族での育児との相性が最悪なので、配偶者によくよく協力してもらえる体制を築いておかないと主戦力として働き続けてもらうのは難しい。弊社でも、なかなか配偶者の理解が得られず休日勤務や夜勤ができなくなり、パート勤務に転向したり退職せざるを得なくなる、という事例は少なくない。事業の特性上、変則勤務が避けられない会社は職員本人の支援だけではなく、家族も含めた家庭支援を考えないと人材確保がこれからますます難しくなるだろう。

これまでは「従業員の家庭のことにまで企業は関わるべきではない」という考え方の方が一般的だったと思うが、これからはむしろ「従業員が働きやすい環境をつくるために、家庭マネジメントを企業が支援する」という方向に進めていく時代になるかもしれない。

本の話に戻ると、本書は各論では踏み込み不足感あるものの、ライトで読みやすいので、社会の変化に鈍感な配偶者の横面を引っ叩いてマインドチェンジを促すにはちょうどいいかもしれない。

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