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医療機関に完成はない。成長し続けないと死ぬ。という話。

医療機関に完成はない、という話をツイッターでしたらわりと反響あったので、備忘録的にまとめます。

医療機関が組織的に”死ぬ”段階について

1.経営の踊り場からの停滞

医療機関が立ち上げ期を乗り越えて運営が安定してくると、収益的な伸びはないものの、人員配置も充足し、離職率も下がってくる【経営の踊り場】みたいな状況になるときがあります。

離職率が下がると追加採用しなくてもよくなり、人間関係が成熟して仕事が円滑に進むようになります。こういうときは管理コストがめちゃくちゃ下がるので、経営者や管理職的にはこれを定常状態にしたくなる。もう【これでいい】よね、という思考になる。採用活動はストップし、背伸びして新しい事業をすることもなくなる。

2.定常状態はじり貧の道

一方で、こういう【これでいい】という段階になっても、毎年毎年スタッフの年齢は上がっていきます。仕事は同じでも定期昇給等でコストは上がっていく。また、建物も老朽化していくし、医療機器も相対的に能力不足になる。製造業なら経験曲線効果でコストが下がることもありますが、医療機関のように人員配置が法令で規定されている業態ではそういうことも起きにくい。経営側は定常状態だと思っていても、実際には少しずつマイナス側に動いているわけです。

ヒトもモノも、高齢化が進んでいくと、組織のアクティビティが徐々に下がってくる。新しい知識が入ってこないから業務内容も陳腐化し、気づかないうちにレベルが下がってきます。ここら辺から収入が少しずつ減り始めるんですが、管理コストが下がってるからまあいいかとなりがち。でも実際はじり貧の道を進んでいる。

3.負のスパイラルに突入

それでも医療政策はどんどん変わっていくので、ある日突然、診療報酬改定等で構造改革の必要性が顕在化するときがくるわけですね。ところが定常状態が長かった既存スタッフは行動様式が今の業務に最適化されてしまい、構造改革に対応できない。

こうなると内部からなんとかするのは至難の業なので、外部から人を追加採用して対応したくなります。ところが、定常状態が長く続きすぎると、既存スタッフの人間関係が濃密過ぎて、また、その間にできてしまった暗黙知が多すぎて新規採用スタッフが職場に適合できないという事態が発生しがちです。コストかけて採用しても全然定着しない。

こういう状況下で何かのきっかけでベテランが退職すると、シフトの穴が埋まらなくなって勤務環境が悪化し、ドミノ式に退職者が出ます。そうなると、あとは悪いスパイラルに入っていき、残ったスタッフで出来る限界のところまで診療レベルが落ち、そこから抜け出せなくなります

踊り場こそ積極投資の時期

こういう展開に陥らないようにするには、【これでいい】という安定期の段階にいる時こそ人への投資を行い、事業を先に進めることが大事です。若手の採用や研修を積極的にやって新しい活力を取り入れる。一旦下り坂に入ったら、坂の途中で外から人を入れるのは難しい。経営の踊り場は投資の時期

もちろん単に人を増やすだけだとコスト増で本業が破綻してしまうので、収入を増やすための新規事業を並行して開発していく必要があります。必ずしもまったく新しいビジネスでなくてもよく、例えば新たな加算や管理料の算定の取り組みでもいいと思います。要は、今まで人的な制約で「できるわけがない」としていたことに前向きにチャレンジするということです。

これは一見、主従が逆転しているように見えます。事業があり、そのために人がいる、というのがビジネスのあるべき姿です。

ところが、医療は公定価格で売り上げに事実上のキャップがあり、かつ利益率が低い。これがもし利益率の高い業界であれば、定常状態から多少マイナス側に振れたとしても利益の範囲内で安定的にやっていくことは難しくないと思いますが、医療のような業界では、既存事業で雇用の余剰を吸収し続けることは難しい

そうなると、医療機関が組織のアクティビティを維持し続けるには、常に新しい事業にチャレンジし、売り上げを拡大し続けるしかない。マグロと同じで泳ぎ続けないと死んでしまう。

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