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2022年度改定の短冊で気になったところを備忘録的に書く

2022年度改定の短冊公表

2022年1月26日の中医協総会で2022年度診療報酬改定の個別改定項目(いわゆる「短冊」)が公表されました。まだ点数や基準の一部が確定してませんが、全体をざっと確認して、特に影響ありそうなところをチェックしたので備忘録的に記録します。
なお、弊社はICU等の治療ユニットがないため、ICU関係の改定はほとんどチェックしてませんので、悪しからずご了承ください。

1.感染対策向上加算

・加算1の抗菌薬適正使用加算が本体の施設基準に編入。感覚的には、加算1の病院で適正使用チーム組成してないところはほとんどないので、実務的な影響はほとんどなさそう。その分だけ加算1の点数に上乗せがあるのか、そのままなのかがポイント。
・加算2に新興感染症患者(又は疑似症患者)の受け入れが算定要件として加わっており、ハードルがかなり高い。少なくとも今次コロナ禍の状況では、今まで加算2を算定していた医療機関でそのまま維持できるところはあまりないのでは。点数は90点のままではコスト・リスクとリターンが釣り合わなくなるので、今、加算2算定している医療機関のほとんどは継続しないと思います。
・加算3は90日に1回算定できることになったので、慢性期病院にとってはかなりのインセンティブになる。今までコストパフォーマンスわるくてICTつくれなかった小規模病院にとっては取り組みやすくなりそう。前述の理由から、これまで加算2だった病院も多くが加算3へ流れるのでは。

2.急性期充実体制加算

・中医協の議論の流れを踏まえると、施設基準には①ICU等の治療室の届出、②時間外手術件数、③救急搬送受入件数が盛り込まれそう。①、③はさておき、②は今次働き方改革のこともあり、中小規模の急性期病院ではなかなかハードルが高い気がしますが、実際のところは告示通達待ちです。
・急性期充実体制加算は、別に新設された周術期栄養管理実施加算の施設基準にもなっているので、外科系症例が多い病院は、届出できるようになっておきたいところですが、ハードルの高さは告示通達次第、というところ。

3.地域包括ケア病棟入院料/入院医療管理料

・自宅からの入院割合・件数の厳格化は想定通り。
・一般病棟の地ケア病棟で救急医療の提供が義務になるのは意外でしたが、どの程度まで現実の実績が求められるのかが次のポイントでしょう。極論すれば、救急告示は設備さえ整ってればどんな病院でも取れるので、そこに実効的な歯止めがどこまでかけられるのか。「なんちゃって救急告示病院」ばかりが増えることになったら本末転倒ではないでしょうか。
・療養病棟ではサブアキュートの実績又は救急医療の提供のいずれかがあればよくなっていて、これは現実的な対応だなと思いました。ただ、一般病棟と療養病棟で線引く必要があるのかは疑問。

4.紹介受診重点医療機関入院診療加算

・これまで紹介患者メインにすることに関する診療報酬上のメリットは、地域医療支援病院にしかありませんでしたが、この加算の多寡によっては紹介メインでない基幹病院も紹介受診重点医療機関に手を上げるかもしれません。点数に注目。
・これに関連して、診療情報提供料IIIが連携強化診療情報提供料に変更され、紹介状・返書のキャッチボールに複数回点数がつくことになったので、基幹病院の紹介状・返書管理の負担に少しは報いられるようになるのでは。(複数回算定できるようになるのは紹介受診重点医療機関に限らない。)

5.地域包括診療料/加算

・対象疾患に慢性心不全と慢性腎臓病(維持透析をしていない場合に限る)が追加され、対象が大きく広がった。
・生活指導は看護師や管理栄養士、薬剤師にタスクシフティングしてもよいとされました。医師の負担が軽減されて診察の回転もよくなり、取り組みやすくなった印象。点数がかなり高いので、今まで取り組めていなかった医療機関は、今回の改定をきっかけに検討してもよいのではないでしょうか。
・生活習慣病管理料も同様にタスクシフティングが認められましたので、1疾患しかない患者についてはこちらでフォローできるといいかもしれません。こちらは薬剤が包括対象外になったので、点数次第ですが、積極的に取り組む余地が出てきました。

6.機能強化型在宅療養支援病院

・緊急往診の実績10件が、在宅サブアキュート入院受入実績又は地ケア入院料1/3で代替できるように変更。
・確かに病院で緊急往診の体制を組むのは、当直との関係もあってなかなかハードルが高かったので、実績要件満たせなくて機能強化型になれなかった病院にとってはありがたい改定。ただし、看取り実績の要件は緩和されてないので、これだけでどこまで機能強化型在宅療養支援病院が増えるだろうか・・・という印象も。夜間輪番つくってる在宅療養支援診療所のグループと連携して連携強化型を目指す方が現実的かも。

7.業務継続計画(BCP)の策定

・DPCの機能評価係数IIと訪問看護ステーションの24時間対応体制加算の両方でBCPの策定が評価されるようになったのは意外な展開。
・水防行政からの要請で要配慮者利用施設の避難確保計画を作成しなければならないこともあり、防災の取り組みが診療報酬で側面的に評価されるのはいいことだと思います。
・この流れが定着していけば、そのうち入院料の総則にBCPが入ってくるかも。実効的なBCPをつくるのはかなり大変なので、今のうちから少しずつ準備していく必要あり。

8.在宅分野での特定行為研修修了者の評価

・これまで認定看護師だけが評価されていた訪問看護での専門的なケアについて、特定行為研修修了者の場合も評価されるように。
・訪問看護について医師が特定行為のプロトコルを決めた場合も、訪問看護指示料の手順書加算として評価されることになったので、特定行為研修修了者の在宅分野での活躍のプラットフォームが整備されてきた印象。
・ただ、特定行為研修は今のところ、指定研修機関に紐づいた病院の看護師が受講者の中心になっている感あり、この改定が実効的に生きてくるのはしばらく先かも。

9.リフィル処方箋の制度化

・今回の改定で処方箋のフォーマットに「リフィル可」が追加。リフィル処方箋そのものには、医療機関側に特に点数はつかないようです。
・今まで3ヶ月処方で残薬管理ができていないような患者に対して、リフィル処方箋を出して調剤薬局に毎月服薬管理してもらう、という流れを想定しているんでしょうが、思惑通りにいくかどうか。在宅療養で訪問薬剤指導を受けてる人には親和性高いと思います。
・生活自立していて自力で通院しているような患者の場合は毎月薬局に行ってもらうことを納得してもらうのがそもそも大変な気がします。今後の展開に注目。

10.医師事務作業補助体制加算1の勤務場所要件の撤廃

・加算1の要件であって外来・病棟・診断書作成を8割以上の要件が「当該医療機関での3年以上の勤務経験」に変更。
・特に公的病院では医師事務作業補助者は任期付き職員が担ってる場合が多く、ノウハウが蓄積されにくいので、正職員化を後押しする意図があるのかもしれません。
・「3年以上の勤務経験」については、同一法人内で人事異動があった場合はどう取り扱われるのか気になるところです。政策的にはスペシャリストを育成したいのかもしれませんが、法人の人事政策とコンフリクトがあると管理的にはなかなか難しい問題になりそうです。

11.オンライン資格確認システムに対する加算

・オンライン資格確認システム(いわゆるマイナンバーカードによる保険証確認。資格確認そのものは、マイナンバーカードを使わなくても患者同意があればできるようですが。)を通じて薬剤情報・特定健診情報等を取得して診療を行った場合に電子的保健医療情報活用加算が算定できるようになります。
・「いや~、そうきたかー」って感じですが、医療機関がオンライン資格確認システムを活用するインセンティブにはなりそうです。でも点数はどうなんでしょう。1桁点ぐらいがいいところでしょうか。。。

今後のスケジュール

2月上旬に点数が入った短冊が公表、3月1週目ぐらいにようやく告示通達が出てきた詳細な基準が判明する、というのがいつもの流れです。
正式な基準は3月までわかりませんが、3月から検討を始めると4月からの改定にキャッチアップできない可能性もありますので、今わかっている情報から、これまでの診療実績と照らし合わせて改定の影響を検証しておくことが重要ではないでしょうか。

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