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陸上養殖サーモン「おかそだち」をコープ/Oisixで販売開始するまでの道のり

やっと皆さんにご案内できる日がやってきました。僕らのサーモン「おかそだち」が、2/20(土)から、首都圏のコープ8店舗で販売開始になります。少し長いですがこれまでの道のりを紹介させてください。


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FRDジャパンは2013年に創業した陸上養殖のベンチャー企業です。元々は水処理業界で活用されていた生物ろ過システムを養殖システムに応用し、水替えなしで、どこでも魚が養殖できるシステムを持っています(閉鎖循環式陸上養殖システム)。

2017年4月、FRDジャパンは三井物産から出資を頂き、2018年8月から千葉県木更津市にサーモントラウトの養殖プラントを新設しました。サーモントラウトの養殖は2015年より小規模にはじめていましたが、非常にうまくいっていたのでそれが木更津の新プラントでも再現できると思ってのスタートでした。

ですが、ふたを開けてみれば魚の成長が全く目標値に及ばず、1年半で3.0kgに育てようと思っていたところが1.5kgまでしか育ちませんでした。小規模では実現できていたことが、大規模化したことにより様々な問題が起き、結果として魚が育たなかったわけです。


1.5kgの魚でも地元のスーパーや飲食店では地物として販売して頂いていましたが、首都圏の大手スーパーに販売するほどの数量には達していませんでした。大手スーパーの皆さんには操業開始してすぐに販売する前提でお話していたので、期待を裏切ってしまう結果になりました。


魚が育たない、魚が死ぬのにその理由が分からない。相当こたえました。「水替えなしの陸上養殖は絶対に失敗する」多くの人に言われた言葉が、頭の中をめぐっていました。

陸上養殖場では死んだ魚が水槽の脇に集まるようになっていて、集まった死魚を回収するのが毎朝のルーティーンでした。毎朝、想定以上の死魚を回収するのが精神的にこたえるので、弱った魚を見つけては死ぬ前に回収していました。まとめて弱った魚を回収してしまえば、死魚も出なくなるのではと思ってそうしてみましたが、根本的な理由を改善しない限り、死魚は続くし魚の成長も伸び悩みました。

なんとか乗り越えようと、世の中のあらゆる論文を読み、国内外で陸上養殖に挑戦する友人たちと悩みを共有しあい、自分たちで100項目を超える水分析を行って、原因をひとつひとつ特定してきました。ひとつ原因をみつけた時には「これですべて解決だ!もう大丈夫だ!」と舞い上がって、設備を改修。でも、一つ原因を取り除いただけでは結果が変わらない日々が続きました。

本当に出口はあるのだろうかと思う日々でしたが、光は突然差してきました。チームメンバーそれぞれの強みをフル回転させて一つ一つ原因を特定し、取り除いた問題の数が8つになった頃、7世代目の魚が突然、目標サイズまで育ったんです。自分はこの結果を見たとき、嬉しいというより「やっと寝られる、、」という安心の方が大きかったのですが、ふと目の前で涙する仲間を見て、自分ももらい泣きしそうなりながらそれを隠していたのを覚えています。今年の頭に導入した卵は14世代目になりますが、やっと、安心して養殖場を見ていられるようになりました。


そして2021年2月、いよいよコープ/Oisixでの販売を始めるところまできました。正直まだ自分たちの評価は100点には及んでいませんが、バイヤーさんからは一度も冷凍せず、しめたての鮮度感を一年中安定してお客さんに届けられるところを評価頂いています。


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海を汚さない陸上養殖は、水産におけるSDGsアイテムとしてはど真ん中の存在です。小売り業界では「持続可能な調達体制の構築」が急務とされており、上述の鮮度感に加えてSDGsアイテムとしての期待もいただいています。一方で、持続可能性を謳ったからと言って日本の消費者さんが買ってくれるわけでもありません。持続可能な陸上養殖だから出せる「機能面のメリット」を明確に示す必要があります。


今回の販売では「〆たてて鮮度が高いこと」のみを謳っていますが、今後は地産地消ゆえのロングライフ化や、これまで養殖できなかった魚の養殖等、陸上養殖だから出せるメリットを追求することで、「持続可能」というワードを消費者メリットに再定義していこうと思っています。


コープの皆さんのお力もお借りして、荒波を楽しみながらこの取り組みをコツコツ続けてゆきたいと思います。


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事業の話になりますが、今の生産能力はまだ年間20-30トンしかありません。2022年には、2,000トン/年の商業プラントの資金調達/着工を目指しています。このプラントが収益化すれば、閉鎖循環式の陸上養殖では初の収益化事例になることができます。そうなれば、日本をはじめ、アジアの大都市圏にプラントを広げていくことが現実味を帯びてきます。


他にも次世代型飼料の開発や、他魚種の展開、養殖のIT化、ろ過システムの横展開等、様々な取り組みも生まれてきています。表面的にはFRDジャパンはサーモン陸上養殖の部分のみが注目されがちですが、僕らの「閉鎖循環式陸上養殖技術」は魚が持つポテンシャルをあらゆる角度から引き出せる技術です。


自身に残されたキャリアの全てを捧げて魚が持つポテンシャルを全開に引き出していこうと思いますので、引き続き応援頂けましたら幸いです。


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コープの販売店舗はこちら(土日限定)
千葉:鎌ケ谷店、薬円台店
埼玉:春日部店、浦和東店、南浦和店、武蔵浦和店
東京:青梅新町店、葛飾白鳥店
twitterアカウント@TetsuroSogo
Instagramアカウント@frd_okasodachi
で日々の様子を発信していますので是非見てみてください!

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