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資本主義はどのように崩壊するのか

          通貨価値の喪失論
          農業を棄てた民の罰
          産業革命以降の大失策
マルクスが活動した19世紀のイギリスは資本主義が最盛期でありとてもその限界を迎えるとは一般人は考えなかっただろう。
 イギリスで始まったとされる産業革命の18~19世紀は人類史の秩序に異常事態をもたらした時代であった。そして次の20世紀を戦争の時代にした。
 またこの産業革命は農業軽視、農業放棄の歴史的大失敗だった。
 マルクスは資本主義が発達しすぎれば剰余価値が減少するからやがて生産効率が限界に至ると予測した。するどい読みだ。実際19世紀の後半はイギリス国内での労働搾取によっては利益に限界が生じたのか、アジア、アフリカ諸国に植民地を拡げ、低賃金労働市場を拡大した。これを資本主義の発達とみる人も多いだろうけれど、見方を変えれば資本主義がイギリス国内ではすぐに限界に突き当たってしまったことを証明したようなものである。
 そして植民地や奴隷制度を設けたのは、結果として資本主義的生産は労働市場の問題を国内解決できないことを示したことになる。つまりイギリスの資本主義は19世紀時点ですでに行き詰まっていたことがわかる。イギリスに続いて大量生産を始めたドイツ、フランス、アメリカ、日本などはやはり海外に安価な労働市場を求めて植民地を拡大しようとした。結局人類は二度の世界大戦を経験してしまった。資本主義的生産体制には(労働において)限界があることがわかっていたのでそれとは異なる社会主義生産体制を模索する動きが20世紀に始まった。
 ロシア、中国の社会主義革命は西側資本によって国内資産を買い占められないようにするための防衛的要請に答える手段で始まったのかもしれない。社会主義を標榜する国では土地など生産手段は国有化された。国有化=社会主義のように捉えられるかもしれないが、これは英米など独占資本を動かす勢力から国内の資本(労働者、土地、財産)を守るためという強い必然的な動機があったのだろう。
 話を本題に戻す。

 マルクスは労働者と資本家が対立図式を構成してそれぞれの階級(Class)間に闘争が起きるとした。
 しかしながら、階級というのは漠然とした概念であり、具体的にはどういった闘争が起こりうるのかは抽象的にしか捉えることができなかった。
 労働組合と会社の経営者が対立したところで資本主義全体が崩壊するものではない。仮に一つの企業がつぶれても資本主義が壊れるわけでもない。
 第一、二次大戦では英国が後発資本主義国を打ちのめす形になった。しかしこれとて資本主義は潜在化した帝国主義(広義のシオニズム)を利用して生き残っていた。
 さて、本稿を書いている2024年、欧米日の資本主義はまさに崩壊しようとしている。
 では階級闘争は起きたのか?
 問題はマルクスが使用したclass(階級)ということばは労働者や資本家を集合的に漠然と捉えた用語であって概念でもあった。
 実際には国家間闘争という形でこの21世紀に資本主義終末闘争が起きたのだ。(大雑把に言えば、中露(BRICS)を主とする”途上国”群と英米の西側”先進国”との闘争という図式である。)
 だから階級ということばを国家と読み替えればよいということだ。
 欧米日(広義のシオニスト)は資本家国家、BRICSなど途上国は資源、生産、製造の労働者国家というような大まかな捉え方ではある。
 これらの国家間闘争だと概観すればマルクスの読みは正しいといえる。

 ここで広義のシオニズムとは:私の定義を述べる
欧米諸国は汗をかいて働かねばならない農工生産を棄てて、途上国に低賃金労働を永年にわたって強いるような国際金融システムを造り上げる。途上国は国際的債務に縛られて万年途上国化される。そしていつまでたっても貧しいまま固定される。詳細は省くが資源は格安で買いたたかれて利益は途上国労働者にはもたらされない。欧米はドル基軸体制のもと低価格の資源をふんだんに得られるので、農工生産をせずとも第三次産業をやって消費生活を楽しめる。老後は社会保障付きだ。カネ稼ぎしたいならば、証券市場にでも投資して利ザヤを稼げばよい。欧米の社会保障制度はアジア、アフリカの低賃金労働の上に成り立っていたのだが、そんな構造は忘れられて(あるいは意識も報道もされず)、欧米では重労働を否定的に扱い、企業に社会保障支出を求めて貴族のような市民社会を形成することを夢見る社会民主主義が興隆していた。これを豊かな国、幸福度の高い国、発達した資本主義、福祉、民主国家などともてはやされていた。
 実際には途上国に”民主化”という名の傀儡支配を行い、植民地を潜在維持して剰余労働価値を搾取していただけなのだった。”遅れた国”とされたアジア、アフリカ諸国は神経質な分断線、国境線を引かれ(海上にまでも)、”民族主義”なる対立構造を仕込まれた。地域的に宗教、宗派の違いがあればそこに目を付けられ対立の材料にされた。民族の違い意識など19世紀までにはたいしてなかった地域でも、わざわざ民族帰属意識を強調されて近隣どうしが憎悪敵対するように工作された。
 アジア、アフリカ諸国に欧米資本支配から自立しようという英雄が現れれば、それを”独裁者””共産主義者”呼ばわりして民主主義の敵という烙印を押して徹底的に排除した。欧米が途上国に為してきたことはカネと暴力と嘘プロパガンダによるヤクザの支配だった。これが覇権の内容である。
「自ら汗を流さず(農工の労働をせず)、他民族を分断、対立、差別、憎悪させて武器市場まで造り、楽して利益だけ吸い取って、自分たちだけは選ばれた優良な民などという神話を捏造して遊んで暮らそうという身勝手な思考」を私は広義のシオニズムと呼ぶ。(狭義のユダヤ人を始祖とするシオニズム運動に関してはすでに多くの研究があるので省略する。広義のシオニズムにはドイツなどのナチズムもそれに属する。ある意味、20世紀以降の戦争はシオニズム同士のシマ争いの対決でもあった。)
 私見ではあるが、いわゆる”民主主義”、社民主義、保守主義、民族主義、自国民族優越思考など近代に勃興した虚妄は全てシオニズムの亜型である。
 シオニストにはヒエラルキー(階層構造)があるらしい。頂点にはイスラエル(英米多国籍)のシオニスト独占資本家が君臨するという。日本にもその階層の末端の組織が無数にあるようだ。カルト、ヤクザも一種の崩れた広義のシオニストだろう。共通点は、生産者でない、労働者でない、階層構造の中にいる、カネと嘘と暴力で支配を試みる、自己の所属、帰属以外の集団を蔑視したり敵視する、対立の中に市場を求める、金融など賭博を好む、農作業を嫌って貴族になりたがるなど。

 2022年2月24日ロシアは特別軍事作戦をウクライナで発動した。この闘争はいずれロシアの完勝で終わる。この戦いは一見ロシアとウクライナの戦争のように見えるかもしれない。細かいことはここでは省くが、これはロシアと欧米日との戦いであり、シオニストと非シオニストとの闘争にもなっている。
 これにより西側の敗北は確定した。そして独占資本主義は壊滅する。その構造は複雑で巨大だ。それがガタガタと崩れだした。
 西側報道は統制されているから、テレビや新聞を読んでいても何が世界規模で起きているかはわからない。報道は歪曲、誇張、捏造または制限され、事実は伝わらない。西側ではカネの能力、ことばの信用度、商品の質、学問のレベルなどはすでに形骸化している。
 その全体の崩壊規模は莫大なものであり短文では表現しきれない。
 本稿でもどこから資本主義の大崩壊を論じればよいか迷ってしまう。
 まず、なぜこのような資本主義大崩壊時代に至ったのか、産業構造から述べる。

産業三角図

 上の図は産業構造の三角図である。第一、二、三次産業のそれぞれのGDP(Gross Domestic Product)に占める比率をプロットしたものだ。もしある国の産業構造が農業のみであればその国は頂点Aに位置する。現代では途上国でもこの三角形の中央付近にプロットされる。
 特徴的なのはいわゆる先進国は頂点Cに近づいていることだ。イスラエル、アメリカ、イギリスは最もCに近い。日本、ドイツ、フランスも頂点Cに接近している。これは農業、工業生産が減ってほぼ第三次産業によるGDPのみに近づいているということだ。第三次産業は実際には生産物を出さない。
むしろ消費とでもいうべきでありなぜ生産(product)に集計するのか疑問ではある。
 生活に必要な生産物はこれらの国では輸入に頼ることになるだろう。金融業やっても生産はできない。だから先進国は生産を請け負っている途上国と友好でなければならないと考えるのが普通の思考だ。しかしシオニストはそうは考えないようだ。かれらは途上国よりも常に上の立場でなければ気が済まないらしい。生産物や資源を出しているのは途上国の方だ。途上国に現物市場を握られて逆に牛耳られるのはがまんならないらしい。幼稚な思考だ。
 これまで資本主義を看板に掲げてきた先進国はどんどん頂点Cに接近している。現物を生産する能力が乏しくなっているから結局滅亡にいたる。
 このことは日本の地方のありさまを見れば誰でもわかるだろう。
 農業者は高齢化し、その人数も減少している。耕地面積も減って放棄地が拡がっている。若者は農村を出てしまい過疎化が進む。国土を面で産業利用できなくなり、先進国といわれたものの衰退国となっている。
 かつては農村から若者が大都市周辺に拡大していた工業地域に労働者として供給されていた。都市住民も元はと言えば農村住民だった。農村を廃れさせれば、都市や工業地域へ労働力を供給できなくなってしまう。
 都市では子育てに費用がかかるし、居住面積も拡張性がない。少子化の根本原因は農業を棄てたことにあるのだが、そういった意見を述べる者すらない。
 少子化の原因分析が正しくないのだから少子化対策などあれこれ言っても解決しない。カネの問題ではなくて産業構造の問題と現代人の異常な価値観の問題なのだ。
 別の項でも述べるが農業を一旦放棄すると再建は非常に難しい。ウクライナでも農地を多国籍資本が買い漁っているらしいが結局はうまくはいかないだろう。農業は第一次産業というように最も重要な第一の産業であり、その生産が通貨価値を担保するといってもよい。三角図で点Cに至る国では通貨価値を維持できなくなり、物価高に民は悩まされる。結局金融市場はさんざんバブル状態に拡張したあげく破滅するのだ。
          先進国の罠
 私の分析ではGDPに占める農業比率が5%を切ると危険になり1%以下では国家が成り立たなくなり滅亡に至る。
 つまり通貨価値を維持できないために金融をどのように操作しても解決できなくなるのだ。金利を上げれば債務を抱えている人や法人は困るし、金利を下げて通貨を増刷すれば物価が上がり続ける。商品市場と労働市場を軽視すれば実体経済の流動性という最も重要な中身を失い、金融市場操作ばかりを徒に繰り返す愚策しかできなくなる。実際には生産を増やすことしか経済問題を解決する方法はないのだが、農業を放棄すればそれができなくなるのだ。
 現在のドルのレートでいえば人口ひとりあたりGDPは2~3万ドル/年が至適値のようである。先進国は人口ひとり当たりGDPが高すぎる。これは豊か?という数字上の錯覚に陥るが、出費が多くなるだけのことで、豊かになっているのではない。人口当たりGDPが年3万ドルを超えると国民の生活上の支出が増えすぎてしまい、所得が多いと言っても、かえって生活苦に陥っていく。(この現象を私は先進国の罠と呼ぶ)
 人口一人当たりGDPは3万ドル以上の国では第三次産業の占める比率が過剰になっている。しかしこの状態を是正することは非常に困難なのだ。別に論じているが、労働者は一→二→三次産業へと移動しやすいが、この逆には流れにくいものだ。だから国策としては農業人口をある程度以上、減らしてはならないということが言える。私は農業従事人口は就労人口の3割くらいはあった方がよいと考えている。
 19世紀に欧州で急に勃興した資本主義は短期間に行き詰まり、帝国主義によって延命し、戦争によってシオニズム(自称民主主義)に移行して延命してきた。これがどのように滅びるのか、関心をもっていたが、結局通貨価値を維持できなくなり自暴自棄自滅に陥り、金融と軍事とプロパガンダで最後のあがきを見せているのが現時点の状況だ。
 通貨価値を維持できないというのがどういうことかといえば、その結果モノ不足、人材不足となり、物価高、人件費高、金利高となり債権放棄、債務不履行の連鎖を起こし、ごく短期間で混乱に陥る。
 株式の市場は企業への投資という機能を喪失し、上下動の激しい賭博場となりやがて崩壊する。生産が増えていないのに通貨を増刷すればその単位価値は刷った分だけ下落している。そのことに気づかずに甘言に乗せられて投資詐欺にひっかかってしまうと個人資産は結果として没収されてしまう。
 この原稿を書いている時点では、私は日本の資本主義的生産体制は解体期に入っていると判断している。2022年の統計では農業生産者の平均年齢が69歳くらいだった。若い後継ぎはいない。この国の食料生産能力はあと何年もつのだろうか。5年後どうなっているのだろうか。
 製造業分野では日本が得意だった先端半導体ナノテクノロジーは中国に対してアメリカからの加圧で輸出できなくなってしまった。ならば中国としてはそれを独自開発すればよいだけだ。実際、中国は先端半導体をどんどん進化させており、かつての先進国には依存しなくなっている。中国は欧米からそういった制裁を受けようともびくともせずに一層技術進化を続けていくだろう。日本の役割はますます失せている。
 日本の産業はその全般が衰退している。これが具体的にどう解体されていくのか?冷静に観察するしかない。
 農村はすでに過疎化という形で無人地帯に近づいている。かつての農地は草むらである。工業地帯は錆びついていくのだろう。金融機関は統合、合併されて支店数は減っている。サービス業も随分店舗が減った。金融市場は急速に崩壊に向かっている。地方に残った我々は、自分の庭や畑で食いつないでいけるだろうけれど、都会の人はどうするのだろうか。
 政府は全く無機能に見える。地震や水害の被災地の救援も放置、貧困層は実際には増えているが無策だ。日本は途上国から比べれば所得が高いが、出費が多いため、生活必需品購買の余裕がない。実際には所得といっても、通貨価値が公表為替レートよりもはるかに低いので価値のない単位でのドル換算になっている。このことを指摘する論文はほとんどない。
 都市住民は人口が多く、かつ生活必需品を自家調達できないから今後、混乱、争乱に陥ることは想像に難くない。一方、地方はすでに高齢化しており、仮に都市住民が逃げてきても受け入れる能力はない。
 アメリカ、イスラエル、イギリスの農業人口は1%に満たない。実際にこれらの国の都市は騒乱に陥っている。原因は「農業を棄てたから」なのだが、そのポイントを押さえずに外敵を設けて他国から資産を横領しようとするから余計に始末が悪い。メディアも自称専門家、評論家も原因分析が間違ったままだ。だから適切な話にはならず日に日に破滅に近づいている。
 日本も残念ながらこれらシオニズムの国に追従するように奈落の底へ落ちてゆく。
 労働力不足を移民で解決しようとするのは失敗する。これは新手の奴隷制度復活のようなものだ。欧州社民主義者は(日本でも)人権を絡めて移民受け入れを推進してきたようだが、実際の本音は労働力不足の低賃金補充だ。  しかし労働環境条件設定が適切にされていないため、労働市場は荒れて混乱の原因にしかならない。差別主義者のシオニストがいくら人権などと善人ぶっても、内心はアジア、アフリカからの労働者を蔑視しているので、うまくいくはずなどないことは最初から自明である。
 かくして日本を含む西側先進国の資本主義は崩壊し、解体または混乱、争乱、分裂期に入る。シオニストの暴力、カネ、虚妄(自称自由民主主義、新保守主義、社会民主主義など自称は様々)で世界を独占支配しようとする歴史は終わる。そのヒエラルキー構造はあちこち瓦解し始めている。
 一方、ロシア、中国をはじめとする途上国群は英米中心の独占資本から自立して、それぞれの国の実情なりの社会主義的生産体制を構築してゆくものと考えられる。社会主義的生産の形態にも様々な計画がありうるので、これについては別に論じよう。


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