構造用語「応力」とは?1分でわかる意味を解説

構造力学を学ぶ上で最初に学ぶ言葉として「応力」という言葉があります。この言葉はいろいろなところで出てきます。建築では物体に力が働く力を「外力」、物体内部に働く力を「内力」と定義し、「内力」=「応力」と表します。

言葉の意味としては非常にシンプルですが、理解に苦しむ学生が多いです。

応力についてどのくらい知っているのか学生に聞いたことがあります。するとその学生が構造力学の本を片手に説明してくれました。

応力度

学生A「外力Pで引っ張られている棒があります、この棒はちぎれていない(静止している)ので力はつり合っているといえます、つまり外力Pの反対の力として内力Q=応力が棒の内部に存在しています。」

私「いいですね、正解です。」

学生B「ちょっと待ってください、こっちの構造力学の本では下の絵で説明しています。」

内力

学生B「外力Pで引っ張られているんだから、Pの方向に内力=応力が発生して、のびようとするはずです。例えばゴムだったら力の方向にのびるはずです。それは内部に外力Pと同じ方向の引張応力が発生している証拠です。」

学生A「なんで同じ構造力学なのに著者によって違う説明がのっているんだろう、わかりにくいなあ」

私「上の絵と下の絵を足してみてください。」

つりあい

学生B「あっ!!」

私「わかりましたか、実はこの二つの絵は同じ意味をあらわしているんです。つり合っている棒には赤も青の力も作用しています。上の絵も下の絵も正しいのです。ただ、上の絵は中間の赤い矢印を無視していて、下の絵は青い矢印を無視しているだけです。作用する力があれば反作用の力が存在するのです。」

学生B「でも赤色の引張力しか働いていないのに、青色も作用しているなんてイメージつきにくいなあ」

私「見方を変えてみましょう、今度は引張ではなく、圧縮で考えてみましょう。例えば橋に一人の男性がいました。男性は橋に比べて軽いので橋はまっすぐのままです。」

学生AB「はい。」

小人

私「今度は巨人を立たせてみましょう。」

学生AB「えっ巨人!?」

巨人

私「すると、橋は巨人の重さに耐えられず、ゆがんでしまいました。」

学生AB「巨人だ・・・」

私「この橋にはどのような力が働いたでしょう」

学生A「巨人の自重により、巨人側の足元には圧縮力がかかり、反対側は引張力がかかります。」

引っ張り圧縮

私「そのとおりです。縮まる側に圧縮応力が働き、反対の伸びる側は引張応力が働くことになります。先ほどの絵は棒はまがっていませんでしたが、このように曲げてみると、力は働く方向に対して必ず反対の力が作用することがわかると思います。」

学生A「でも、どうして片方の力をみて、片方の力を無視するような絵になるんですか?どっちも正しいのなら両方書くべきだと思います。」

私「そのとおりですね、両方書くべきです、ではなぜ書かないのか。それは物体の役割によって考える力が変わるからなのです。」

学生AB「役割??」

私「そうです。土木構造物は橋やダムなど大きいものが多いです。そうなると全部を強固に作ろうとするととてもお金がかかります。また、家をつくるときなど、なるべく安く作りたいですよね。安く早くつくるためにはどこにどんな力が発生して、どのように力を流せばよいのか知る必要があるのです。その第一歩としてこの考えは非常に重要になるのです。」


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