子どものころに見た夢の話

子どものころに見た夢を覚えている。

不思議な夢で、抽象的な夢だった。

熱が出ると必ず見るのだが、モノのスケール感がバラバラになり、自分が原子の世界に迷い込むほど小さくなったかと思うと、逆に、今度は自分の体が肥大化し、無限の彼方に飛んでいくようなミクロとマクロを行き来するようなイメージの夢だった。

 初期のコンピュータグラフィクスのような質感の球体が巨大化し圧迫してくる。かと思えば、グリッドのラインで挟まれた空間で、重力が逆転し、天井に向かって引っ張られることもあった。

その時は、「いやだ、天井で寝たくない」と泣きわめいて目が覚めたことを覚えている。

4歳か5歳の頃だったと思う。

誰の声か分からない声も聞こえた。「よかったね」だとか、「ね、うん。そうよ」という言葉をよく聞いた。複数の声が重なることもあった。

たまにまた見たくなるが、不思議なことに大人になってからは、一度も見ていない。

子どもの頃にしか見ることのできない夢。あの夢の仕組みは未だによく分からないが、今考えると、魅力的だったことは覚えている。


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