Collapse 02
いま、東京ではにょきにょきと高層ビルが建ちあがっている。
まるで雨上がりの森で生えるキノコのようだ。
どのビルもガラスのカーテンウォールが艶艶としていて、空の様相を映し込んでいる。
ガラスの摩天楼は、20世紀の初頭にミースファンデルローエが描いた。1921年のことだ。
その有名なスケッチは、展覧会で刷られたポスターとしてウチにもある。
紙に鉛筆で書かれたスケッチは退色している。そこがいい。好きなビジュアルだ。
鉄は錆びる。
同じように、紙は汚れ、鉛筆の炭は霞む。
ミースは100年後を描き、鉄と硝子の精神を立ち上げた。
彼は200年後を思い描いていただろうか。
思い描いていたと思う。
シカゴで彼のレイクショアドライブアパートメントに触れた。
美しかった。
彼の精神と手を感じた。
ベルリンの美術館でバウハウスのオリジナル家具に感じた手の感覚だった。
鉄には加工した人間が宿る。
時間は造形物から人間を濾過してゆく。
レイクショアドライブアパートメントには人間が宿り続けるだろう。ミースはそれを意図していたと思う。
いま東京に生えているキノコたちに、人間は宿っているだろうか。
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