Collapse 01
家の近くの商業施設が取り壊されている。
噂によると集合住宅に建て替えられるらしい。
まだ建って20年も経っていない、コンクリート打ち放し造のいかにもなコマーシャリズムを我が町に振りまいていた建物だった。
慌ただしい建て替えは昨今の住宅バブルによるものだろう。
現場にはクレーンが二本、延びている。
この日は工事は休みのようで、瓦解したコンクリートのアウトラインが放置されている。
コンクリートの造形物から感じるのは人々の金銭欲の塗り重ねによる慌ただしさだ。
美しさはない。
20年前に初めて目の当たりにした端島、通称軍艦島のコンクリート塊に落ちる一条の光の美はそこにはない。
寂の概念は見るもののうちに自発的に現れると思っていた。
正確には違う。
人間が作り出したものも含めた自然の中での人の営為がシナリオとなり、物質化する。
物質の崩壊過程はそのシナリオのエピローグだ。
時間が行為者の感情と美を物質に刻み込む。
そこに寂が生まれる。
商業主義の渦中に飲み込まれたコンクリートには、当然だが時は金なりと言わん焦燥と欲望がシナリオの刳みとなり、そのまま表現されている。
最近の資金回収型エンターテインメントコンテンツのようだ。
端島の炭坑労働者の抱いた経済的夢の果ての廃墟と、アブストラクトな金融操作の果ての廃墟は違う。
寂びたる瓦解の集積が文化の痕跡になり、美は精神に宿る。
美しい国は、きっと廃墟が美しい。
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