見出し画像

アラフィフ育児 ケース5「捨てられない」 〜育児と断捨離は、受験生にとっての勉強と恋愛と同じぐらい両立できないものなのだと痛感した話〜

引越した。
五十を超えての引っ越しって、命削られます。
もうヘトヘト。いや、ヘットヘトヘトなの、私。

引っ越し理由は手狭になったから。

前の家に越した当時は「なんて広いんだぁ!」と喜んでいたマンションの部屋も、下の娘が大きくなって、ぐいぐいと手狭になっていった。

まだ三歳児なのに、なんでこんなにスペースがいるの!? 俺なんて三十代後半まで四畳半に住んでいたのよ!? 『医龍』の2まで住んでいたのよ!? 食う、寝る、遊ぶ、仕事する、すべてがその『四畳半ユニバース』で間に合っていたのよ!? 事足りていたのよ!? なのになに? たかだか三歳と五歳の姉妹によって、2LDKが手狭になるだと!? 

ま、そーよね。
思い当たる節はある。

ほら、一回目の緊急事態宣言下で、公園の遊具がテープで封鎖されて、使用禁止になったことがあったじゃないですか(区による)。ステイホームで、散歩することすらはばかられた時があったじゃないですか。
あの時、ムスメ達の溢れる体力とフラストレーションをどうすればいいのかと途方に暮れた私たち夫婦は、室内用トランポリンや、ジャングルジムやらを勢いでポチりまくったのです。

結果、うちの狭いリビングは、遊具でギッチギチ。いや、ギッチギチギチ(もういいよ)。

そして緊急事態宣言が終わって、公園で遊ぶ事が出来たムスメ達に、
「これ、もう、しまっていい?」
と聞くと、
「ダメ」
と言うのだ。しかも、
「ぜったいにダメ」
と念を押してくるのだ。

このムスメの「ぜったいにダメ」はもう、絶対で、なぜなら彼女たちの記憶力と直感は侮れないから。

二ヶ月間遊んでいなかったトイレットペーパーで作った双眼鏡を、そっと捨てる。すると次の日に「あのそうがんきょうはどこ? さがして」と言うのである。

なにそれ怖い。虫の知らせ?

捨てると思い出す。これ、本当に育児あるある。

指に装着する変な目玉のおもちゃなんかを、「さすがにこれ、存在すら覚えていないだろう」と、そっとゴミ箱に捨てたりすると、今までYouTubeに夢中になっていたくせに、スックと立ち上がり、ゴミ箱の蓋をあけて、おもちゃを見つけ、「なんでこれ、すてるの? たからものなのに!」
と救い出したりするのである。

いや、ぜったいに宝物ではない。遊んでるとこ、見た事ない。

あの頃のリビングはカオスだった……。

極彩色のジャングルジム、テント、ボールプール、ピンクのトランポリン。そんな、キッズプレイパークのようなリビングで食事をしていると、デパートのフードコートで食事をしているようで、なんだかとっても落ち着かない。

しかもほら、いかんせん子どもだから、目に付いた遊具に気を取られ、
ひとくち食べては立ち上がり、トランポリンで飛び跳ねる。
またひとくち食べてはジャングルジムのてっぺんで仁王立ちになり、
「パパママみて!」と命令する。

当然怒る。すると泣く。
食事の時間が楽しくなくなる。イライラする。

しかもほら、いかんせん子どもだから、反省なんてしていない。だからまた目に付いた遊具で遊び出す。

怒る、泣く、イラつく、飛ぶ、転ぶ、泣く、なだめる、こぼす、拾う……ああ! 
もう、イヤだ!!! 

シンプルなリビングで食事がしたい! CasaBRUTUSに掲載されているような家に住みたい!
今は仕方ない。狭いから。次こそはっ! 次の家こそはっ! 
シンプルなリビングで食事がしたいっ!
誰にも邪魔されずにリモート会議がしてみたい!

そもそも、物が多すぎるのだ。
そうして私は、引っ越しに向けて、しっかりと念入りに断捨離を始めた。

よし、まずは子ども部屋からだ。
大きなおもちゃ箱をひっくり返し、全てのおもちゃを床に広げて、
捨てて良いかをムスメに聞く。
しかし……。
「それはだいじ」「それはたからもの」「それはぜったいにいる」

結果、大きなおもちゃ箱から、断捨離できたものはたったふたつの小さなおもちゃだけだったのだ……。(ま、そもそも聞いちゃいけないのだけど、ほら、聞かずに捨てると「あのおもちゃは?」と思い出すから、聞かずにはいられないのさ)

そう言えば、捨てても捨てても、おもちゃ箱に帰ってくる謎のおもちゃってあるよね。
「それってきっと、捨てられたくないおもちゃが、ムスメに助けを求めているのよね。さながら、リアルトイストーリー? あらやだ、ステキ!」
って、まったくステキじゃない。むしろ怖い。

ほら、これとか↓

画像1

これとか ↓

画像2

一度ムスメが踏んで壊れたので捨てたら、拾ってきて「なおして」と言われ、精密ドライバーで修理した。しかし、その後遊んでるところを見た事はない。叩くためのスティックは見当たらない。

なんども生還している、コイツとか↓ 

画像3

もはや、つくもがみ化しているよね、なんか。

前から気になっていた、土が付いた木の根っこも、なにこれ? と聞くと、
「まじょのステッキだよ!」
と捨てさせてくれない。

そっと捨てたら、きっと、末代までムスメにたたられる。(いや自分の家系だろ!)

こんまりさん、育児中の断捨離に、こんまりメソッドは無力です。
ムスメたちにとって、全ての物がときめくものなのだから。

ほぼゴミでも、油断は出来ないっ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?